【特別企画】ELACファンも納得の出来映え
ELACの伝統+新たな個性! あの240シリーズの現代版「CARINAシリーズ」を山之内 正が聴く
■歯切れ良い低音と鮮やかで活発なサウンドを鳴らす、フロア型「FS 247.4」
まずフロア型のFS 247.4から再生音を確認する。CD、SACDに加え、fidataのミュージックサーバーとラックスマンの「DA-06」を組み合わせてハイレゾ音源も再生し、アキュフェーズの「E-650」で駆動した。
JETトゥイーターとウーファーを近接配置した効果が大きいのだと思うが、声や楽器の音像がほぼピンポイントに収束し、不自然に広がらないことにまずは感心した。ジェーン・モンハイトのヴォーカルは発音がなめらかで、にじみやかすれがなく、低い音域は伴奏のチェロと自然に溶け合う。音域が上がると声の響きに明るさが加わり、クリアな子音の発音など、JETトゥイーターの長所が浮かび上がるが、刺激的な音にはならず、一番高い音域で線が細くなることもない。
アルネ・ドムネラスのセプテットはベースの切れが良く、短い付点音符も含めて一音一音がクリアに分離。その軽快な低音のリズムに支えられて曲のテンポ感が緩まず、自然に前に進んでいくのが心地よい。
ELACのミドルクラス以上のスピーカーは、JETトゥイーターの応答の良さを意識しながら中低域のレスポンスの改善を進めてきたが、FS 247.4もその要所を確実に押さえている。高域だけでなく低音から中低音にかけての音域も、スピーカーからの音離れが良く、各音域の速さが揃っているのだ。
アルトサックスは中低音に太い部分があるが、これはこの楽器に本来そなわる音色がそのまま出ているためで、音像が大きく広がるのとは明らかに違う。ドラムやピアノの中低音など、低い音はほとんど共通して歯切れ良さがあるが、これはキャビネットの共振が少ないことも効いていると思う。
室内楽版に編曲したモーツァルトのピアノ協奏曲(ピアノ独奏:ヴァリッシュ)をFS247.4で再生すると、弦楽器とピアノどちらも非常に鮮度の高い響きを再現し、リアリティの高いサウンドを楽しむことができた。
この演奏はオーケストラの各パートを弦楽四重奏に置き換えているので、響きのバランスが高域寄りになりがちなのだが、スコアの最低音を弾くピアノとチェロに芯があるためか、そこまで軽くはならず、時には原曲のオーケストラ演奏を連想させる深い響きも引き出してくる。念のためにスペック一覧で周波数特性を確認すると、34Hzまで伸びている。もちろんそこまでフラットに伸びているとは思えないが、モーツァルトのピアノ協奏曲の音域なら低音不足を感じることはないはずだ。
ルーセルの《バッカスとアリアーヌ》など、さらに大編成の管弦楽を再生すると、大太鼓の風圧までは無理としても、期待していたよりは重心の低いオーケストラ演奏を堪能することができた。
JETトゥイーターが受け持つ高域はエネルギー密度が高く応答が良いため、第一ヴァイオリンやトランペットの旋律が前に出る傾向が強いが、この曲ではそれが鮮度の高さにつながり、活発な鳴り方をする。楽器間のセパレーションや分解能では上位のVELAシリーズに譲る部分があるとはいえ、音数が多くダイナミックレンジの大きな作品も積極的に聴いてみたくなる余裕も垣間見せた。
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