【特別企画】良好な操作性もポイント
ただでさえ高コスパなDAPがさらに進化! 使い方いろいろ、HiBy「R3Pro」レビュー
■イヤホンの持ち味をそのまま味わえるサウンド。駆動力も十分確保
それではまず、R3Pro単体の音質を実際に聴いていこう。バランス駆動での実力は、2.5mmバランスケーブル標準装備のハイエンドダイナミック型イヤホン、Astell&Kern「AK T9iE」との組み合わせで確認した。
なだらかにまとめられた帯域バランスに滑らかな音調で、イヤホン側の持ち味に沿った素直な音が再生される。例えばAK T9iEはシャープさに頼りすぎない、穏やかでいて豊かな解像感が美点のひとつ。R3Proとの組み合わせでは、その解像感が耳障りにならない、うるさくない程度にキープされる。
ローエンドも、特にバンドサウンドでのエレクトリックベースは、膨らまず、抑えも効いた力強い表現。クラブ系のさらに低い帯域のベースでも、膨らんだりぼやけたりということはない。
シングルエンドの実力は、RHA「CL750」で確認。メーカー自ら「ポータブルヘッドホンアンプの駆動力で鳴らすことが前提のハイインピーダンス設計」と公言するイヤホンだが、R3Proは余裕で音量を確保できる。CL750をここまで鳴らすことができるのであれば、一般的なイヤホン相手でも苦戦することはないだろう。
■コンパクトさと操作性を活かせば、ポタアンとも無理なくマッチ
単体でもそれぞれのイヤホンの特長を十分に活かして鳴らしてくれる、といった印象のR3Proだが、もっとパワフルにイヤホンを鳴らしたいと思ったとき、ポータブルヘッドホンアンプ(ポタアン)と実に組み合わせやすいプレーヤーでもある。
まず何よりコンパクトなので、ポタアンと重ねて携帯性が損なわれるという、ポータブルオーディオとして本末転倒な事態を回避しやすい。システムの巨大化を抑えつつ、ヘッドホンアンプならではの強力なパワーを得ることが可能だ。
それだけではなく、プレーヤーとスマホをBluetooth接続し、スマホアプリからリモート操作ができる「HiBy Link」機能の存在も大きい。プレーヤー+ポタアンの多段システムでは、よくシリコンバンドなどで互いをひとまとめに固定するが、これではタッチパネルを隠してしまったり、そもそも片手で取り出して操作するのが難しくなる。「だったらスマホで操作すればいいじゃない!」と提案してくれるのがHiBy Linkなのだ。
ポタアンとの接続にUSBケーブルを用いる場合、前述のように端子がUSB-Cなこともポイント。特に端子まわりがL字型のケーブルなら、表裏を気にせず自由に挿せるUSB-Cは取り回しの面で大きなアドバンテージになる。
今回は小型ポタアンの定番、CHORD「Mojo」との組み合わせを実際に試してみたのだが……R3 Proと縦横のサイズがほぼ一致してやたらとしっくりくる!そして、USB-CのおかげでMojoの表裏も自在。Mojoのゴム足をR3Proの方に向ければ排熱の隙間を確保でき、ひっくり返せばMojoの大きなボタンが内側に隠れ、誤操作の防止が狙える。
前述のRHA CL750も、パワー自慢のMojoと組み合わせれば一層余裕で鳴らしまくれる。高域のブライトさも中低域のバシッとしたキレも見事で、上質な輝きと荒々しい骨太さを併せ持つ、CL750らしい、RHAらしいサウンドを存分に叩き出してくれる。
Mojoの音質的メリットを受けつつ、選曲などをしたくなったらHiBy Linkでスマホからスマートに遠隔操作。もちろん、HiBy LinkはR3Pro単体で使うときにも便利で、本体はシャツや上着のポケットに入れっぱなしのまま、スマホから“ながら操作”ができる。
単体では現代的な性能と機能を備えたコンパクトプレーヤーとして活躍。特に、従来モデルからアップデートされた駆動時間と、バランス駆動時に発揮される力とのバランスはハイコストパフォーマンスだ。価格を含め、エントリーユーザー向けの製品としての完成度は極めて高い。一方、今回紹介したポタアンや、ネットワーク再生など他の機材と組み合わせていくスタイルへの適性も高く、マニアックな視点からも面白い製品でもあったりする。
とりあえずそのコスパとコンパクトさから入門機として、あるいはセカンド機として導入しておき、将来的に他のオーディオ機器と組み合わせてマニアックな楽しみ方を……と、長い目で見た活用も視野に入れておける。幅広いユーザー層にチェックしてみてほしいプレーヤーの登場だ。
(企画協力:飯田ピアノ)