ドライブメカとDACがK1から一新
セパレートの技術を1筺体に集約。エソテリックによる孤高の旗艦一体型CDプレーヤー“Grandioso”「K1X」の魅力を探る
■トータルの音圧感が強化され、瞬発力を一切の緩みなく再現
エソテリックの試聴室でK1と比較しながらK1Xの再生音を確認した。Grandiosoシリーズのセパレートアンプとタンノイの「Kingdom Royal mkII」をコアにした同社のリファレンスシステムと組み合わせ、CDとSACDを再生する。
ピアノ・トリオを2台のプレーヤーで聴き比べると、K1Xが完全な新規設計モデルとして誕生したことをすぐに思い知らされる。ベースは弦の張力と振幅がどちらも格段に強くなり、ピアノは和音を支える低音がオクターブ低いところから鳴っているような厚みを獲得。演奏のテンションが高まったように感じるのは、3つの楽器で一音一音の鮮度が上がり、その組み合わせでトータルの音圧感が強化されているからだろう。
ベルリン・フィルの『チャイコフスキー 交響曲第6番:悲愴』からは、演奏の大きなうねりやライヴならではの高揚感が余すところなく伝わってくる。
ベルリン・フィルは特にライヴでここぞという時に想定外の大音圧を繰り出すことがあるのだが、ペトレンコは演奏の骨格とディテールを保ちながらトゥッティで爆発的な音響を引き出すことにかけて、他の指揮者では真似できない能力の持ち主だ。この録音にもそんなフレーズがいくつかあるが、K1Xはその瞬発力を一切の緩みなく見事に引き出してくる。
フィルハーモニーに広がる余韻はスピーカー後方に向けて伸びやかに広がり、低弦と打楽器の最低音は空気をたっぷり含んでいる。この開放的な低音は、P1X/D1Xと同様のトップパネルを固定しない手法が功を奏しているに違いない。
ジェーン・モンハイトの「アイ・ウォント・ダンス」は、ベースとホーン楽器どちらもアタックが俊敏で、モンハイトのリズムの良さと発音の軽さをクリアな音でサポートする。声のイメージがにじまないだけでなく、音色がとても澄んでいて、余分な重さやエッジ感を一切加えないことにも感心させられた。
ハイメ・ラレードの『ヴィルトゥオーゾ! ヴァイオリン・アンコール名作集』は楽器のステレオイメージに手で触れられるほどのリアリティがあり、ピアノの柔らかい余韻との対比が鮮やかだ。音域が上がった時に響きが痩せず、芯のある音色をキープしている点も特筆に値する。
Grandiosoシリーズはブランドの方向性を決定づける重要な役割を担っている。K1Xの音はP1X/D1Xのそれと明確な共通点があり、次世代に向けてのコンセプトを明示してみせた。一体型フラッグシップの登場を心待ちにしていたファンには、ぜひとも自身の耳で音を確認することをお薦めする。
(山之内 正)
<Specification>
●再生可能ディスク:SACD、CD(CD-R/CD-RW対応)●アナログ出力:XLR×1(L/R)、RCA×1(L/R)●出力インピーダンス:【XLR】40Ω【RCA】15Ω●最大出力レベル:【XLR】5Vrms【RCA】2.5Vrms●周波数特性:5Hz-75kHz(-3dB)●SN比:113dB●歪み率:0.0007%(1kHz)●デジタル出力:XLR×1、RCA×1●デジタル入力:COAXIAL×1、OPTICAL×1、USB-B(USB2.0準拠)×1●クロック入力:BNC×1●入力インピーダンス:【デジタル入力】75Ω【クロック入力】50Ω●クロック入力可能周波数(±10ppm):10MHz●クロック入力レベル:0.5〜1.0Vrms(サイン波)●電源:AC100V、50/60Hz●消費電力:30W●外径寸法:445W×162H×447Dmm(突起部含む)●質量:35kg●付属品:電源コード×1、リモコン(RC-1315)×1、リモコン用乾電池(単4)×2、フェルト×4●取り扱い:エソテリック(株)
本記事は季刊・Audio Accessory vol.174 Autumnからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。