[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第248回】
現代DAPの基準は中華にあり!5万-10万円の“ド真ん中クラス” 中国DAP 3機種の実力チェック!
R6ProALは、筐体の素材変更でコストダウンを狙ったモデルであることは確かだ。しかしステンレス筐体とアルミ筐体での音の違いは絶対的な優劣というほどではない。また日本ディックス製4.4mm「Pentaconn」端子やパナソニック製POSCAPコンデンサ、ELNA製SILMICコンデンサーといった、R6Proで用いられるコストアップ要因でもある高品質パーツは、R6ProALにもそのまま採用。お買い得感の強いモデルだ。
サウンドは、ダイナミック型ハイエンドAstell&Kern「AKT9iE」、BA型ハイエンドShure「SE846」との組み合わせにて、シングルエンドとバランスの両駆動方式を確認。加えて、アンプパワーを要求するタイプのイヤホンとしてfinal「A8000」でのチェックも行なった。
R6ProALは総じて、明るめの音調、かっちりしすぎずおおらかさも残した表現といった印象だ。
例えば早見沙織さん「yoso」やMahaliaさん「Karma」では、リズムセクションのベースやバスドラム、そして主役のボーカルをやや大柄に描き出す。ドラムス全体のアタックとリリースもビシッと決めすぎず、すっと自然な立ち上がりで、リズムのニュアンス硬くせずにしなやかに表現。グルーヴ表現としてはキレよりも弾みや揺れといった要素の表現が得意そうだ。
といっても、低域の制動が甘いわけではない。そこが甘いとベースやバスドラムが破綻しがちなRobert Glasper Experiment「Human」を聴いても、音像をやや膨らませる傾向にはなるが、ボワンと膨らみすぎることはない。音楽を崩さない範疇で「やや緩める」方へ振ってあるわけだ。
ただし上記の印象は主にバランス駆動時のもの。シングルエンド駆動だと、音像やアタックの抜けの緩みがもう少し目立ってくる。このモデルはバランス駆動メインでの運用をおすすめしたい。
▼Fiio「M11 Pro」
続いてはFiiO「M11 Pro」(実売目安8万2500円)。2.5mm/4.4mm問題に対して「当面はどっちも積んどけばいいじゃない」というまさに全部入り路線に向かう回答を示した「M11 」を土台に、さらなる強化が施されたモデルだ。
FiiOはポータブルオーディオの黎明期から活躍し続けており、高評価が確立されているブランド。加えて型番「M」世代に移行してから登場するDAPは、以前の世代から格段の進化を遂げており、改めて同社への評価を高めるものとなっている。