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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第248回】

現代DAPの基準は中華にあり!5万-10万円の“ド真ん中クラス” 中国DAP 3機種の実力チェック!

公開日 2020/06/08 06:00 高橋 敦
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機能面では「シングルDACモード」が面白い。このモデルはDAC回路にハイエンドDACチップ「AK4497EQ」をデュアル搭載しており、通常設定時には3.5mmシングルエンド駆動時でもその2基のDACチップをフル稼働させて最高の音質を得る。

しかしハイエンドチップ2基のフル稼働は電力消費が大きく、その連続再生時間はシングルエンド駆動時でも最大9時間。そこで用意されたのがシングルDACモードだ。

右側配置のダイヤル式ボリュームを採用

バッテリー駆動時間アップのシングルエンド シングルDACモード

DACチップ1基のみの利用となるこのモードを選択することで、連続再生を1.5倍弱の13時間にまで伸ばすことができる。例えば屋外利用時にはバッテリー重視のシングルDACモード/静かな屋内でじっくり聴き込むときにはフルスペック再生など、うまく使いこなしたい。

実際のサウンドの傾向は、今回の3モデルの中でいちばんのカッチリ&クリア系。早見沙織さん「yoso」ではまず、エレクトリックピアノを筆頭に効果的に重ねられた上物の感触がカチッとすることで、エレクトリック感が強まる印象。定位の見え方も含めて揺らぎよりも明瞭さが際立ち、サウンド全体としても「雰囲気がよい」みたいな情緒的な印象よりも、「構築が見事」といった理知的な印象の方が強まる。

Mahaliaさん「Karma」のリズムセクションもやはり、カチッとアタックの立った感触。ここ!と意図されたタイミングぴったりにアタックが来るような、遊びなく研ぎ澄まされたリズムニュアンスとなる。ボーカル等の湿度感も特には演出されないので、全体にややドライで、ヒップホップ的な印象が強まる。

イヤホンとの相性やシングルエンド駆動/バランス駆動での違いは、今回の3モデルの中で最も小さく感じられ、上記のような印象が常に安定して維持された。

特にアンプパワーにはかなりの余裕がありそう。ゲイン設定はLOWとHIGHに加えて「TurboMode」まで用意されているが、低感度イヤホンであるA8000との組み合わせでもLOWモードで十分。大型ヘッドホン等が相手でもパワー不足を感じることは滅多になさそうだ。



現代DAPのド真ん中!5万から10万円クラスの中国メーカーフルサイズ機最新主力モデルからピックアップした3モデルをチェックしてみたが、これらの中からどれを選んだらいいの?という問いへの答えとしては、「製品ごとの音の個性はそれぞれ。ユーザーごとの音の好みもそれぞれ。そこが合致するものを選びましょう」という例のいつもの答えになる。

だがその「音の好みで選びましょう」が通用するのは、これらのモデルの全てが機能もスペックも全部入りで「弱点なし」だから。「音はこのモデルが好みなんだけど、このモデルにはあの機能が足りないんだよな」的な悩ましさに見舞われることがないというのは実にありがたい。

また最終的にどの国のどのメーカーのどの製品を選ぶにしても、その選択の際には、現在のトレンドや基準はしっかり把握しておきたい。その意味でも中国DAPメーカーの動きからは今後も目が離せないところだ。

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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