[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第251回】
5千円台で買える!「普通に推したい」安心便利なエントリー完全ワイヤレスイヤホン3選
▼エントリーなのにプレミアム感! ag「TWS03R」
サウンドとルックスの仕上げにこだわり! な、プレミアムベーシック感のあるモデル。
agは、エントリーから超ハイエンドまで有線イヤホンで高い評価を確立している国内ブランド「final」を展開する、SNEXT株式会社による完全ワイヤレスイヤホン新ブランド。
同社は受託開発事業を通して、同じく大手ブランド向けの受託開発で活躍する、表舞台には出ない優秀企業とのコネクションを得ており、その彼らとの共同開発による製品を展開するのが「ag」とのこと。隠れた実力者的な企業と組み、その力をうまく引き出すとことで、コストパフォーマンスの高い製品を生み出しているわけだ。
序盤にて、今回ここで紹介するのは「完全ワイヤレスイヤホンの基本性能」の完成度を十分に高め、その上で「細かな作り込み」で使い心地をアップさせたモデルたちだと述べた。その説明に一番ぴたりと当てはまるのが、このTWS03Rと言えるだろう。
スペック的に特段に優れた部分があるわけではない。コンパクトさや再生時間ではX6.2Jに及ばず、HA-A10Tが備える急速充電機能もなく、防水仕様も特に謳われてはいない。
しかし明確に弱点と言える部分もない。ケースは最小クラスではなくともコンパクトな部類。再生時間も別に短いわけではない。防水仕様ではないからといって雨が少し当たったくらいでいきなり壊れるわけでもない。基本性能はぜんぜん普通に問題ないのだ。
その上で、実に細やかな仕上げが行われている。ケースは単純なラウンド形状ではなく、ちょっと自然石っぽくもあるころりとした印象なフォルム。落ち着いた色合いをマットな粉雪塗装がさらに際立たせる豊かなカラーバリエーション。耳の小さい方に向けてのSSサイズイヤーピース。どこを見ても一工夫やちょっとした配慮に溢れている。
実物を手にしたときのモノとしての満足感は、完全ワイヤレスに限らず、この価格帯のイヤホン全般の中でトップクラスなのではないだろうか。
特に「粉雪塗装」の質感は、一見、そして一触の価値ありだ。他2モデルのような一般的なマット仕上げよりは粗く、しかしザラザラや凸凹にはならない、絶妙の粒感。試聴実機のGREENなど和菓子の抹茶パウダーを思い起こさせる感じだ。
そして音楽を再生すると……信頼に応えるサウンドだ! agの製品の音作りは「final監修」となっており、その時点でならば真っ当なものであろうとの信頼を感じたイヤホンファンも多いことだろう。その信頼は裏切られない。
方向性としてはX6.2Jと同じく、ナチュラルで好ましいサウンド。なのでインパクトは強くはないが、聴いていて飽きないし疲れない。ここまでは共通しているが、X6.2Jとの違いとしては、こちらの方が音の響きや空間性がより開放的。またハイハットシンバルに顕著だが、しっとりとしたソフトさがありつつも、クリアさもよりしっかり確保されている。
実はag、このモデルでは非採用の防水仕様を最新機「TWS04K」においては採用。その際に「音質への影響がほとんどない防水機構の開発に成功したため採用が実現した」と説明している。
それって逆に言えば、このTWS03Rの時点では「音質への影響があるから防水仕様は非採用」だったわけだ。その判断もこのオープンな響きに貢献しているのかもしれない。