【特別企画】自宅で1週間テスト可能
アンダンテラルゴの無料貸し出しサービス&レコードクリーニングを4人の評論家が体験
体験者4 鈴木 裕、Hannlのレコードクリーナーでレコードクリーニングを試す!
鈴木 裕が依頼したレコードクリーニング・サービス
Hannlのレコードクリーナー「Mera Professional」
(640,000円/税別)
※ローリングブラシ標準装備
■洗濯機には遠心脱水機能が不可欠なように、レコードクリーナーも吸引脱水機が不可欠(鈴木裕)
究極のレコード再生を追求したければ、バキューム式クリーナーで洗浄した盤でなければ事は始まらない。
アンダンテラルゴでは無料のレコードクリーニングサービスを行っている。宅急便などで送って、お試しクリーニングを依頼し、指定した片面を完璧に洗浄した上で返送してもらうシステムだが、今回はその洗浄工程を特別に見学させてもらった。
マシーンは最新の「メラ・プロフェッショナル」だ。専用の洗浄液をタンクに入れ、散布ブラシからレコード盤に自動散布する。ローリングブラシを使えばきわめて強力に音ミゾの奥まで洗える。その後バキュームの負圧で、汚れた成分を含む洗浄液を音ミゾからほぼ完全に吸い上げる(つまり洗浄液は再使用しない)。そしてレコードを乾燥させて聴くことになるが、乾燥は30分で大丈夫。動作音も驚くほどに静かだ。
その効果。まず拙宅から持っていった特に汚れたレコードで試した。ブーレーズ/クリーヴランドの1969年録音の《ハルサイ》のUK盤。おそらく前オーナーがスプレーのレコードクリーナー液を大量にかけたのだろう。ずっとジャリジャリとノイズが鳴り続ける。購入して一回だけ再生して以来聴いていなかった盤。
ローリングブラシの威力はさすがで圧倒的な洗浄力。レコードと逆方向に回転することで洗浄液を音ミゾ深くまで送り込んで、その奥から汚れを引っかき出してくるイメージ。洗浄後聴いてみると90%くらいのジャリジャリ音がなくなっている。予想以上の効果。
しかしハンルの真骨頂は良好な状態のレコードでこそ思い知るのかもしれない。カラヤン/ベルリンフィルの1967年の録音の『オペラ間奏曲集』。これのシュミット作曲《ノートル・ダム》間奏曲。壮麗とも言える演奏の生命力があり、その美しさに圧倒される。これのほぼオリジナル盤の、しかも新品に近いものを手に入れて愛聴しているがこれをクリーニングした。
今までも決定的な演奏だと思っていたが、マルチマイクによる位相ズレがあって録音的に混濁した成分と思ってきた。しかしそれは誤解だった。音ミゾにあった(おそらく離型剤などの)微細な汚れのせいだったのだ。
クリーニングすることによって、響きが交錯するテクスチャーが見事に立体的な音楽として立ち上がってくる。ちゃんと音像は分離しているし細部まで清澄だ。また力強いだけでなく、やさしさやまろやかさといった音楽的な要素も聴こえてくるのに感動した。
他にも数枚クリーニングしたがプチプチ、ジャジャリといういわゆる “ノイズ” を除去するだけでなく、その盤に刻まれた本来の “音楽” が聴こえてくる。有料によるレコードの洗浄サービスも行っているので是非ともまずはみなさんにもこの驚きを体験して頂きたい。
なお、使用済みの洗浄液は所定のタンクに溜められる。後で使用済みの廃液をきれいな瓶に入れてチェックしてみると、その汚れ方の説得力たるや!
アンダンテラルゴの製品を自宅システムで体験できる、無料貸し出しサービス実施中
本記事は季刊・analog vol.68 Summerからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから