【特別企画】コンパクトな筐体に驚愕のパワーを秘める
Benchmarkの名にふさわしい駆動力と表現力。プリ&パワーアンプ「LA4」「AHB2」を聴く
本体の側面にヒートシンクが固定されているコスメティックデザインは、パワーアンプの王道的なルックス。しかし、占有面積はA4サイズに満たないというミニマムデザインである。万力タイプのスピーカー端子の他に、ノイトリック製スピコン端子を装備する辺りは、いかにもプロ畑で定評のある同社らしい仕様といえよう。
LA4とAHB2を2つ横に並べても、50cmほどの設置スペースしかない。高さは10cmを切っている。デスクトップには少し大きいかもしれないが、サイドテーブルには充分収まる寸法である。
■大型フロアスピーカーを軽々とドライブ。繊細さから重厚さまで表現できる
試聴に組み合せたスピーカーは、B&Wの「803D3」。最低インピーダンスが3Ω程度まで下がることもあり、万が一この定番的なフロア型モニタースピーカーを充分ドライブできないことも想定し、国内メーカー製の標準的な小型ブックシェルフ型スピーカーも準備しておいた。ちなみに準備段階の判断にて、LA4の設定で出力レベルを10dB上げて試聴している。
しかし、その心配はまったくの杞憂に終わった。LA4+AHB2のペアは、気難しい一面もある803D3をがっちり駆動し、朗々と響かせたのである。
近年の私のヴォーカルのリファレンス・ソース、ジェニファー・ウォーンズのSACD「トゥモロウ・ナイト」では、2本のスピーカー間にややスレンダーなヴォーカル音像がくっきりと浮かび上がった。イントロのベースは引き締まった量感とスマートな質感で、音場の見晴らし/見通しがすこぶるクリアーな点がセールスポイント。
上原ひろみのSACD『カレイドスコープ』でも、彼女ならではのタッチの強弱を精巧に描きながら、スピード感を克明に捉えて曖昧にしない。感心させられたのは、メロディを紡ぐ右手と、リズムを刻む左手の対比が生み出すコントラストの明暗を極めてダイナミックに再現してくれたところ。この小さなボディにどれほど高いドライバビリティが潜んでいるのだろう。
デジタルファイル再生では、アンドリス・ネルソンス指揮/ボストン響の96kHz/24bit音源『ショスタコーヴィチ/歌劇リア王』を再生したが、どっしりとした重厚さを伴ったスケール感豊かな響きをたいそうスペクタキュラーに奏でた。ピアノとオーボエが繰り出す寂しげな主題も、明瞭さと自然な質感という点で申し分ない。
近年、ネットオーディオの勃興も相まって、小型・高性能なデスクトップ・コンポーネントが相次いで登場しているが、それら製品とBenchmarkのモデルを比べた時、同社はレコーディングスタジオ等のプロの現場で鍛えられてきたという事実が、確かなアドバンテージとなるに違いない。しかもそのプロ仕様と性能が、この価格で手に入るという驚きもある。
まさしくブランド名にふさわしい、コンパクトオーディオの確かな新基準と成り得る存在。そんな印象のBenchmarkであった。
(企画協力:株式会社エミライ)