あらゆる角度から真価に迫る
アップル「AirPods Max」レビュー。61800円は高くない、唯一無二のヘッドホン
■しっかりと効くANC。透明感あふれるヒアスルー
AirPods Maxは左右イヤーカップの外側に3基ずつ配置したマイクで周囲の環境音を拾い、内側にも1基ずつ配置したマイクではイヤーカップ内のアコースティック環境を測定しながら、合計8基のマイクでノイズキャンセリング処理を行う。
パッシブな遮音効果の高いイヤーパッドと相まって、ノイズキャンセリングモードに切り換えると環境ノイズがしっかりと消える。消音効果のバラツキがなく、低いノイズが継続的に鳴り響くような車のエンジン音・走行音から、すぐ隣で話す人の声、雑踏のざわめきに含まれる甲高い音までバランス良く消し込んでくれる。機能のオン・オフを切り換えても耳に圧迫感がなく、また音楽や映画のサウンドにもほとんど影響が感じられなかった。
さらに外部音取り込みとノイズキャンセリング「オフ」を切り換えた時にも、音楽のきこえ方が変わらない。AirPods Proを使ったことのある方なら、あのスムーズなモードシフトがそのまま本機にも引き継がれているとイメージしてもらえればいいと思う。
外部音取り込みは音楽と外の環境音をとてもナチュラルにミックスする。環境音も透明度が高く聞きやすいうえ、そのレイヤーに絶妙なバランスで音楽再生を重ねてくる。まるでヘッドホンを外し、スピーカー再生に切り換えて音楽を聴いているようなイメージだ。屋外で歩きながら音楽を聴く時には忘れずオンにして使いたい。
AirPods Maxの完成度の高いヒアスルー機能は、耳にかかる負担をかなり軽減できるので、在宅ワーク環境でのビデオ会議に使うヘッドホンとしても最適だ。家族から声をかけられたりドアベルが鳴っても、ヘッドホンを装着しながら、周囲の音に素早く気つける。ノイズコントロールボタンをクリックするだけでモードが素速く切り替わるので、外出中も駅のアナウンスを聞いたり、短く会話を交わしたい時などに使いやすい。
■通話音声も聴きやすい
AirPod Maxでハンズフリー通話を行う際には、本体に内蔵する1基のビームフォーミングマイクが活躍する。
話者のバックグラウンドノイズを減衰させるフィルターの出来映えもかなり良く、家族に身に着けてもらい、キッチンで水仕事をしながらFaceTimeオーディオ通話を試してみたところ、シンクを叩く水音がかなりのレベルまで下がり、話し音声だけが太く明瞭に聴き取れた。
通話相手に屋外に出てもらい、音声の聞き取りやすさを試してみた。やはり周囲を走る車のロードノイズや風切り音もキレイに消えて人の声が立体的に浮き彫りになる。AirPods Proの通話音声はワイヤレスイヤホンの中でもかなり聴きやすい方だと感じていたが、AirPods Maxの通話性能はいっそう安定感に磨きが掛かっていると思う。
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