収録5曲をさまざまなイヤホン+「秋月」で試聴
もはや運命の邂逅。聴くしかない…アイマス秋月律子さんの新譜を、リケーブル「秋月」で!
1曲目:「灯(あかし)」
まずは1曲目の「灯(あかし)」。秋月さんの純粋な新曲だ。
秋月さんはこれまで「魔法をかけて!」のような恋愛を歌ったアイドル・ポップ的楽曲が多かったが、本楽曲は一転して淑やかなバラード調となっており、秋月さんの今までに無い一面が表現されている。
やはりここはド真ん中で応えたい……ということで、秋月さんの担当カラーであるグリーンのイヤホンの代名詞的存在、Campfire Audio「ANDROMEDA 2020」を用意した。なお、本機はMMCX端子搭載のイヤホンなので、MMCX-2pin変換アダプタを装着しての接続となる(初っ端からトリッキーな取り合わせで申し訳ない)。
ANDROMEDAの魅力といえば、深みのある低域から粒立ちの良い高域まで優れた描写力と、それらをまとめ上げるシャープな音像表現だ。俗に「ANDROMEDAの音」と称されるほど印象的なサウンドで、個人的には疾走感のあるジャンルと相性が良いイメージだったが、思えば本腰を入れてバラードを聴き込む機会はあまり無かったかもしれないな、などと考えながら再生してみたら、そんな杞憂はどこへやら、というほどマッチしている。
前半はピアノの伴奏を中心に弦楽器やウィンドチャイムなどが折り重なる構成になっており、特にピアノとボーカルが際立つパートだ。ANDROMEDAの持つ低域のふくよかな重みと伸びの良さにより、温かな空気感がしっかりと表現されている。この辺りの柔らかな響きは秋月による恩恵も大きいだろう。
2番以降はドラムやベース、パーカッションなどが加わり、一気に音数が増え、ステージ上のスケールがグッと広がるような印象だ。これらを支える器量は流石のANDROMEDAで、秋月が持つ解像度の高さも相まって、各楽器の定位や質感が精細に描かれている。
わずか19歳の彼女が抱く想いと、そこに至るまでのルーツを見事に歌い上げた名曲。それを彩るにふさわしいセレクトとなった。
■2曲目:「POP STAR」
続く2曲目は「POP STAR」。
平井堅によるヒット曲のカバーで、一見すると意外な取り合わせにも思えるが、「君」を想うストレートな歌詞や、歌詞中のワードが秋月さんを連想させるなど、ファンも納得の選曲となっている。この曲には、Unique Melodyの「MACBETH Custom」をチョイスした。
MACBETHはスッキリとしていて、バランスが取れたオールラウンダーなサウンド。やや線が細めながら解像感が高く、聴き疲れしにくい音質だ。いわゆるJ-POPの王道的なアレンジがされている同曲とも相性が良く、軽快な歌を耳当たりよく鳴らしてくれた。
個人的な聴きどころは、2番のサビ終わりの間奏〜ラスサビまでの流れ。コーラスの秋月さんも可愛らしく、ラスサビにかけての盛り上がりに合わせて歌声がノッてきている感じも伝わってくる。
こういった打ち込み色強めのポップスは、フラットめでクセの少ない音質のイヤホンで聴くのが好みなのだが、今回のMACBETHは「まさに」といえよう。上記のような細かなポイントにもしっかりフォーカスできる見通しの良さもあり、音質傾向として特別個性が強いわけではないながら、なかなかにお気に入りの組み合わせだ。
余談だが、僕は平井堅さんのファンでもあり、「POP STAR」は今でもよく聴いている楽曲のひとつだ。彼が歌うオリジナルは染み渡るような柔らかな声質が印象的だが、秋月さんのカバーではハリのある元気いっぱいな声質となっており、どちらも楽しく歌い上げているだけに、その対比がまた面白い。同じ楽曲であっても、カバーやアレンジの違いでイヤホンを選び分けてみると、また違った発見があるかもしれない。
3曲目:「My Sweet Darlin’」
3曲目は「My Sweet Darlin’」。こちらは矢井田瞳の楽曲のカバーだ。
ポップなロックサウンドが懐かしく、「Darlin’, Darlin’〜」から始まる印象的なサビは誰もが口ずさんだことがあるのでは。ロックに合わせるということで、JH Audioの「JH11 PRO」を選択。
ゴリッとパワフルな低音とエッジの効いたサウンドが特徴のJH11 PROは、まさにうってつけの組み合わせだ。また、(この曲に限った話ではないが)秋月さんのボーカルの感情表現も見事。
技術的な部分とメンタル的な部分の両方に起因することだと思うが、秋月さんの歌声には表情が映る。たとえば先述の「灯」ではしっとりと歌い上げていたが、この曲ではニコニコと楽しそうに歌っている様がありありと浮かんでくる。そういった細かなニュアンスもしっかりと聴き取れるのは、イヤーモニターを代表するブランドのひとつであるJH Audioならではの再現性なのかもしれない。
それにしても、「アンパンマンのマーチ」の記事でも書いたが、過去の曲を改めて聴くというのは良いものだ。特にこういうラブソングは、幼い頃はあんまり歌詞の意味を理解していなかったりもして、こうして聴いてみると今更ながらにキュンキュンしてしまう。「私だって女の子な部分があるんだな……」などと思いながら、オリジナルを聴いた時には気付かなかったことを探してみるのもいいだろう。