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どんな環境でも正確な再生音を。ジェネレックの「GLM」は“デジタル音響補正“の決定打
■GLMを使うと、“大袈裟に思われる”ほどに音が変わる
それでは実際にGLMの効果を確認してみよう。今回は筆者自宅の1F視聴室と2Fのデスクトップ環境の2箇所でクオリティチェックを実施した。
1F環境では8330 GLM Studioを使用した。スピーカー「8330」は、5インチ・ウーファーと3/4インチ・トゥイーターを搭載した2ウェイ型で、50WのクラスDアンプ2基でバイアンプ駆動するモデルだ。背面を見ると、入力端子はXLRのアナログに加え、XLRのAES/EBUによるデジタル入力、さらにGLMネットワーク用のRJ45有線LAN端子を2つ搭載する。
先進的な仕様を誇るSAMシステムだが、接続は至ってシンプルだ。まずは一般的なアクティブスピーカーのようにオーディオインターフェイスやDAC、プリアンプなどとXLRケーブルで接続。コントロールにはPCを使うが、再生ソースそのものはPCやCDプレーヤー、アナログプレーヤーなどなんでも大丈夫。もちろんこの段階で音の再生は可能で、分解能が高く、センターにヴォーカルがきちんと定位する安定した再生音を楽しむことができる。
GLMを使う場合は、まずGLM Kitのネットワークアダプターと、GLMソフトをインストールしたPCをUSBで接続。いずれか片chのスピーカーとネットワークアダプターをLANケーブルで接続し、さらに左右のスピーカー同士をLANケーブルで繋げばセッティング完了だ。
本スピーカーを含むジェネレックの多くのモデルは、フロントバッフルからサイド面にかけて丸みを帯びたエッジを持ち回折を防止するMDE(Minimum Diffraction Enclosure)や、スピーカーの指向性制御を高める「DCWウェーブガイド」を装着することで高度な位相特性を実現しており、“素”の状態でも音像やステージング表現に優れている。また、エンクロージャーは強度の高いアルミで構成されており、8330の比較的コンパクトなサイズ感からは想像できないような強力な低域表現も印象的である。
ここで問題となるのは、筆者のリスニングルームだ。実は現在試聴に用いている16畳の部屋は、定在波がかなり発生している。そのため試聴ポイントによって低域の量感が極端に大きくなったり、反対に小さくなったりしてしまうなど、ルームチューニングに難儀しているのだ。
実際、普段の試聴でもパッと決めた試聴位置では、一聴して低域の量感が多すぎるためブーミーで、それによって中高域の明瞭度も良くないケースが多々ある。機材テストやカーオーディオコンテストの審査員を行っている関係上、帯域バランスについてはかなり気を使っている方なのだが、それでも理想的な再生環境の実現はなかなか難しいものだ。
そこで、GLMの出番である。まずはGLMソフトウェアを起動し、どのような条件でキャリブレーションするかを設定していく。1箇所でのマイク設置で測定する「シングルポイント」モードと、複数箇所で測定する「マルチポイント」モードが選択可能だが、リスニング位置が明確に決まっているのであればシングルポイントが推奨されるとのことなので、今回は1カ所でのキャリブレーションを行うことにした。
余談だが、GLMは今回のような2チャンネル環境からマルチチャンネル環境、さらにDolby Atmosなど複数のスピーカーを用いたイマーシブルフォーマット環境にも対応し、スピーカー上限数はなんと80台以上にも及ぶ。さすがはプロフェッショナル向けのソフトということだろうが、それにしても隔世の感がある。
測定そのものはほんの数分で終了。ここでGLMのオン/オフでの比較を含めた試聴を開始した。まずはGLMがオフの状態で試聴開始。再生ソフトウェアにroonを用い、男性Jazz/R&Bアーティスト、サム・スミスの「Diamonds」(44.1kHz/24bit)を聴取する。一聴した感じは分解能が高く、センターにヴォーカルが定位、安定した再生音だ。
次にGLMをオンにした状態で改めて同曲を再生したのだが、音が出た瞬間、あまりの変化に目を見開いてしまった。
正直、大袈裟に書きたくないのだが、「ここまで変わるのか」と言いたくなるほど、音の見え方が変わるのだ。その内容は大きく4点。まず1点目は帯域バランスがほぼ完璧に整うこと。存在感がありすぎた低域がシェイプされソースに忠実になる。
2点目は音の輪郭が明瞭になること。3点目はセンター定位するヴォーカルのリアリティが増し、前後の定位(前後の飛び出し方)の提示がよりわかりやすくなること。これにより、バックミュージックに対してボーカルが明瞭に提示される。そして4点目は、結果として高域から低域までのレンジも広がって聴こえることだ。