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【特別企画】評論家・逆木一氏がチェック

黒い宝石が、美しさと高音質への欲求を満たす。マランツ「30シリーズ」新色“ブラック”を堪能

公開日 2021/05/28 06:30 逆木 一
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それを踏まえて30シリーズのデザインを見てみる。長らくマランツ製品の象徴となってきた「ポートポール」や「シンメトリー」といったデザイン上の要素を引き継ぎ、さらに丸みを帯びた形状が積極的に取り入れられたことが特徴で、重厚さや剛性感といった要素を強く感じさせる現行のデザインに対し、「柔和」という印象が強い。最新モデルでありながら、外観の全体的な印象はむしろPM6100SAをはじめとする2000年前後に登場したモデルに近く、特にMODEL 30に対して筆者は第一印象で「懐かしい」と思ったほどだ。

逆木氏が初めて購入したというアンプ「PM6100SA ver.2」(2003年発売)

もちろん、30シリーズのデザインは単なる先祖還りではない。特筆すべき新要素として、フロントパネルの左右に施された仕上げがある。微妙にラウンドした形状と波状の凹凸にライティングが組み合わさり、見る角度によって様々な表情が生まれる仕掛けだ。

オーディオ機器として優れた再生音によって「聴く楽しみ」を与えてくれるのは当然として、そこに「見る楽しみ」が加わる。現行のデザインでもフロントパネルをライトで彩る仕組みを持っているのだが、それが30シリーズではより上品かつ効果的な形に再構築されたといえる。全体としては回帰を思わせつつ、現行デザインの要素もしっかりと継承されているのだ。特にブラックモデルにおいてはこのデザインのおかげで機器の存在が立体的に浮かび上がり、「真っ黒な塊」という印象を和らげるという効果があるようだ。

ブラックモデルのフロント部

■もちろん音質面にも高レベルのこだわりを多数投入

様々なデザイン上の要素が印象に残る30シリーズの両機種だが、言うまでもなくそれは「オーディオ機器としての優れた筐体」と両立されたものだ。シャーシに用いられる鋼板の厚みは上位機である12シリーズと同等、アルミ製サイドパネルは12シリーズを上回る最厚部で5.7mmのものを使うなど、デザインの刷新に伴い構造面でも進化を遂げている。実際にハンドリングしてみると、SACD 30nとMODEL 30から感じられる堅牢さは柔和な外見からは想像できないほどに高い。

シャーシ厚/カバー厚を厚くして剛性を高めるなど音質面にも多数のこだわりを投入している

ブラックモデルはシルバーゴールドモデルに比べて精悍さが増しており、白い壁紙の部屋や明るい色調のオーディオラックとの組み合わせにおいてはコントラストの関係で、存在感は良くも悪くも強くなる。一方で、暗い色調のオーディオラックを使っている場合や、映像プレーヤーやAVアンプと組み合わせる場合には、ブラックモデルの方が馴染むということもあるだろう。30シリーズの「見せるデザイン」を活かして、ラックの中に収めるのではなくサイドボード等の天板に設置するという選択も考えられる。

あいにく筆者の環境/セットアップではブラックモデルの「見せるデザイン」を十全に発揮できているとは言い難いのだが、いずれにせよカラーの選択肢が増え、より多くの人に訴求できるようになったことは間違いない。

刷新されたデザインを身に纏ったSACD 30nとMODEL 30は、オーディオ機器としてはマランツの現行フラグシップモデル「SA-10」と「PM-10」の直系と言える内容となっている。

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