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<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME

ドイツ気鋭のカートリッジブランド“TEDESKA”。楽器を思わせる美しさと緻密なテクノロジーに感激

公開日 2021/05/29 06:45 角田郁雄
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■振動対策のビーズを取り付けたオリジナルのシェルリード線

さらに途中から、常用のOFCシェルリード線から、同ブランドの最新のリード線「GUTS-S」(導体に高純度銀線)に変更してみました。振動低減のビーズも装着されています。これにより、倍音(響き)成分はさらに豊潤濃厚となり、腰の据わった落ち着きのある、やや暖色系の音質へと変化しました。銀線は伝送特性に優れているため、高域の伸びが向上し、音の立ち上がりも俊敏になった印象を受けます。

TEDESKAの銀線を使用したシェルリード線「GUTS-S」(42,900円/税込)。導体に銅を使用した「GUTS-C」もラインアップする

次に聴感上のレスポンス特性を探るためにダイレクトカッティングによるドラム・ソロ「THE SHEFFIELD DRUM RECORD」(Sheffield Lab14)を再生しました。ここで注目したことは、目の覚めるほどの高速レスポンス特性です。大小のドラムスが響きを失わず、高い音圧でリアルに迫ってきます。極めて解像度は高く、音の透明度も高いです。感激するのは、シンバルの響きですね。これだけ鮮烈な響きが体験できるとは予想していませんでした。

「THE SHEFFIELD DRUM RECORDS」(Sheffield Lab14)

それこそ、シンバルのエッジが研がれた鋭いナイフのようなイメージとなり、微細な響きは金粉を散りばめたかのような超美音です。ドラマーの息遣いもよりはっきりと聴こえます。まさしくワイドレンジ・高速レスポンスです。強力なネオジウム磁石を採用することで微細音と倍音成分を引き出し、生演奏のような臨場感を実現させたかったのではないかと推察されます。

TEDESKAの「DST201uc」にGUTS-Sを取り付けたところ。ビーズ形状の制振材が通してあることが特徴で、この色でケーブルの接続位置も決められている

この音に、私はすっかり惚れ込ました。熱狂的なマイルス・デイヴィス・ファンでもあるので、「キリマンジャロの娘」(Columbia CS 9750)を再生してみました。実際に再生すると、マイルスのトランペットは、ホーンが微細にビリビリと響いている印象を受け、高域は決して細身にならず、厚みがあり開放的です。時折、強い旋律により響きがフワッと広がるところがとても感動的です。

ウェイン・ショーターのテナーサックスの濃厚な響きには、クラリネットに酷似した木質感のある音色を感じさせ、エネルギッシュです。さらにハービー・ハンコックのエレクトリックピアノの一音一音にデリカシーに富んだ、まろやかで美しい響きが聴けますし、トニー・ウィリアムスのドラムスのシンバルに音の鮮度が極めて高い、繊細な響きが体験できます。そして、ロン・カーターのベースが演奏全体に深みを加えていることも良く理解できました。

ちなみに同社のカートリッジは、負荷インピーダンスに敏感に反応します。このマイルスのアルバムでは、100Ωが一番、低域から高域までのバランスが良い印象を受けました。こうなってくるとコレクションしてきたマイルスのLPをすべて聴きたくなってしまいます。特に私の好きなアグレッシブとも言えるエレクトリック・マイルスを……。

■演奏前の教会の空気感を鮮明に描き出し、生楽器の響きを再現する

最後に愛聴盤であり、リファレンスLPでもあるホフ・アンサンブルによる「クワイエット・ウィンター・ナイト」(2L 2L087LP)を再生しました。鈴のような金属パーカション、ギターやノルウェーの伝統的な弦楽器の繊細な音、力強いバスドラム、鮮やかなトランペット、響き豊かなピアノなどが歌い手の周りを囲むように加わり、立体空間が体験できます。

ホフ・アンサンブル「クワイエット・ウィンター・ナイト」(2L 2L087LP)

再生するなり感じたことは、演奏前の教会の空気感を鮮明にしたことです。そして、各楽器奏者が、歌い手を囲んで演奏していることもリアルに再現され、各楽器のデリカシーに富んだ微細な響きが、空間に美しく拡散されます。空間描写性も高く、残響豊かな教会の響きを鮮明にし、女性ヴォーカルではクリーミーな声質と声使いも解像度高く中央定位します。時折、体の向きを変えて歌唱する様子もよく再現されます。

このDST201ucを使用して総じて言えることは、TEDESKAが、生の楽器や声の響きをカートリッジで実現したかったことだと確信しています。その独創的で緻密なテクノロジーが、全製品に生かされていると言えます。

日数をかけハンドメイドしているので高価ではありますが、多くのカートリッジをコレクションしアナログ再生を極める愛好家には、ぜひ専門店で聴いて頂きたいと思うところです。きっと所有の喜びも感じることでしょう。

喜ばしくも導入された愛好家は、調整に敏感に反応する特性とその音質に驚愕し、プレイバック・システムの見直しをしてしまうかもしれません。私自身も、TEDESKAの音と音楽に驚愕しているところです。

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