兄弟機「KH-M500」とともにチェック
片耳ヘッドセット、ノイズキャンセリング対応のメリットは? ケンウッド「KH-M700」を試す
■テレワークが当たり前になった社会で注目集まる「ワイヤレス片耳ヘッドセット」
長引くコロナ禍、テレワーク/テレスクールを是とする「新常態」が社会に定着しつつあるが、当事者の“耳もと”は案外不安定だ。いわく、PC内蔵スピーカーでは家人に会話内容を聞かれてしまう、ヘッドホンは圧迫感があるうえ周囲の音が聞こえず困る、耳孔に差し込むカナル型は聞き疲れする、etc…。本来イヤホン/ヘッドホンはステレオ・2chの音楽鑑賞用なのだから、モノラルで足りる業務や学習の音声のために両耳を塞ぐ必要があるのか、という話もある。
そこで注目を集めているデバイスが「ワイヤレス片耳ヘッドセット」。文字どおり片耳用で、反対側の耳は完全フリー。耳もとの違和感・圧迫感は、音楽鑑賞を兼ねるイヤホン/ヘッドホンの半分だ。会議や授業の音声をしっかり聞き取れるかどうか、こちらの声が相手に明瞭に聞こえているか、装着感はどうか、その点をクリアしていればステレオ・2chのイヤホン/ヘッドホンよりウェルカムということになる。
ここに取りあげるKENWOOD「KH-M700」は、“音”にターゲットした製品だ。音といっても人間の声を聞き取りやすく、伝えやすくすることが狙いであり、テレワーク/テレスクールの時間を快適に過ごすための工夫が盛り込まれている。
音については、3方向からのアプローチが見られる。ひとつは基本的な再生能力で、10.4mm径ネオジウムドライバーユニットを採用している点。もうひとつは、自分の声。ハウジング部分から4cmほど横に突き出た軸の中央と先端にMEMSマイクを各1基搭載、声の方向を捉える設計が確認できる。さらに発話側の環境ノイズを取り除くQualcommの技術「cVc(Clear Voice Capture)」を採用しているから、自分の声が相手に伝わりやすくなる。
そしてもうひとつが、相手の声。ヘッドセットとしては珍しくANC(アクティブノイズキャンセリング機能)が搭載されており、周囲の雑音を低減する。当然、反対側の耳はフルオープンだから周囲の話し声など集中力を削ぐ要素は耳に入ってきてしまうが、相手の声が環境ノイズに埋もれて聞き取りにくくなることを防ごうというものだ。
iPhone 12 Proとペアリングしてキャリアの音声通話で試したが、相手の声(スマートフォン内蔵マイクで集音)はクリアに聞こえる。正直なところ、ANCオン/オフの効果よりKH-M700を装着していないほうの耳から入ってくる環境ノイズに気を取られてしまうが、幹線道路沿いでも相手の声をはっきり聞き取ることができた。
効果がより鮮明だったのは、相手が感じる自分の声だ。iPhone 12 Pro内蔵マイクで音声通話したときとの違いを通話相手に訊ねたところ、(筆者の)声が大きく感じられるのだという。筆者がいる場所は幹線道路沿いであるだけに、声とともにロードノイズを拾ってしまう環境だが、KH-M700に切り替えると声が際立つような印象を受けるのだそうだ。この点、マイクの位置とcVcによる発話側の環境ノイズ低減が奏功しているのだろう。
装着感も上々だ。付属のイヤーピースはサポートありなしの2タイプ、それぞれにSとMの2サイズが用意されているほか、形状を自在に変えて耳に沿わせることができる「フレキシブルイヤーフック」が付属する。本体はシンメトリーなデザインで、イヤーピースは360度回転可能なため、左右両耳どちらでも違和感なく装着できる。
このイヤーピースが、なかなかよくできている。KH-M700はオープン/インイヤー型で、10.4mm径のドライバーはユニットからステムのように突き出ており、それをすっぽり覆う構造。そのノズルを耳穴に軽く差し込むように装着するのだが、感触はふんわりと軽く、“耳にちょんと載る”という表現が的確だ。3時間ほど装着したままでいても、カナル型のような疲労感はない。フレキシブルイヤーフックも、自在に曲げられるだけに自己主張がなく、あくまで“耳にちょんと載る”のを手助けするに過ぎない。
Bluetooth接続が「マルチポイント」に対応していることも、開発チームの研究熱心さを感じさせる部分といえる。2台の機器と同時に接続できるため、スマートフォンとPC、またはPC2台と同時に接続し、必要に応じて瞬時に切り替えることができるのだ。実際、PCでWEB会議中にスマートフォンに着信があり、KH-M700を外すことなく対応できたときには、ほほう、と思わず声が出てしまった。
ところで、KH-M700には「KH-M500」という弟分がある。ANCが省略されている点を除けば、イヤーピース・イヤーフックを含む形状やマイクの位置、ファンクションボタンなどハードウェア的な部分に差はほとんどなく(KH-M700がわずかに0.2g重い。また、イヤーフックもM700はフレキシブルに曲げられるがM500は位置が曲げられない)、cVcによる発話側の環境ノイズ低減やマルチポイント接続は共通だ。価格が安いうえにカラーバリエーションはブラック・ホワイトの2色、ANCがない点に納得できればこちらのほうがコスパはいい。
音楽用のワイヤレスイヤホンでは“聞き疲れ”を感じる、しかしPCの内蔵スピーカーを使うわけにはいかず、しっかりとしたマイク性能も欲しい…そんなデバイスを探していた向きには、KH-M700とKH-M500、ちょうどいい選択肢となるはずだ。
長引くコロナ禍、テレワーク/テレスクールを是とする「新常態」が社会に定着しつつあるが、当事者の“耳もと”は案外不安定だ。いわく、PC内蔵スピーカーでは家人に会話内容を聞かれてしまう、ヘッドホンは圧迫感があるうえ周囲の音が聞こえず困る、耳孔に差し込むカナル型は聞き疲れする、etc…。本来イヤホン/ヘッドホンはステレオ・2chの音楽鑑賞用なのだから、モノラルで足りる業務や学習の音声のために両耳を塞ぐ必要があるのか、という話もある。
そこで注目を集めているデバイスが「ワイヤレス片耳ヘッドセット」。文字どおり片耳用で、反対側の耳は完全フリー。耳もとの違和感・圧迫感は、音楽鑑賞を兼ねるイヤホン/ヘッドホンの半分だ。会議や授業の音声をしっかり聞き取れるかどうか、こちらの声が相手に明瞭に聞こえているか、装着感はどうか、その点をクリアしていればステレオ・2chのイヤホン/ヘッドホンよりウェルカムということになる。
ここに取りあげるKENWOOD「KH-M700」は、“音”にターゲットした製品だ。音といっても人間の声を聞き取りやすく、伝えやすくすることが狙いであり、テレワーク/テレスクールの時間を快適に過ごすための工夫が盛り込まれている。
音については、3方向からのアプローチが見られる。ひとつは基本的な再生能力で、10.4mm径ネオジウムドライバーユニットを採用している点。もうひとつは、自分の声。ハウジング部分から4cmほど横に突き出た軸の中央と先端にMEMSマイクを各1基搭載、声の方向を捉える設計が確認できる。さらに発話側の環境ノイズを取り除くQualcommの技術「cVc(Clear Voice Capture)」を採用しているから、自分の声が相手に伝わりやすくなる。
そしてもうひとつが、相手の声。ヘッドセットとしては珍しくANC(アクティブノイズキャンセリング機能)が搭載されており、周囲の雑音を低減する。当然、反対側の耳はフルオープンだから周囲の話し声など集中力を削ぐ要素は耳に入ってきてしまうが、相手の声が環境ノイズに埋もれて聞き取りにくくなることを防ごうというものだ。
iPhone 12 Proとペアリングしてキャリアの音声通話で試したが、相手の声(スマートフォン内蔵マイクで集音)はクリアに聞こえる。正直なところ、ANCオン/オフの効果よりKH-M700を装着していないほうの耳から入ってくる環境ノイズに気を取られてしまうが、幹線道路沿いでも相手の声をはっきり聞き取ることができた。
効果がより鮮明だったのは、相手が感じる自分の声だ。iPhone 12 Pro内蔵マイクで音声通話したときとの違いを通話相手に訊ねたところ、(筆者の)声が大きく感じられるのだという。筆者がいる場所は幹線道路沿いであるだけに、声とともにロードノイズを拾ってしまう環境だが、KH-M700に切り替えると声が際立つような印象を受けるのだそうだ。この点、マイクの位置とcVcによる発話側の環境ノイズ低減が奏功しているのだろう。
装着感も上々だ。付属のイヤーピースはサポートありなしの2タイプ、それぞれにSとMの2サイズが用意されているほか、形状を自在に変えて耳に沿わせることができる「フレキシブルイヤーフック」が付属する。本体はシンメトリーなデザインで、イヤーピースは360度回転可能なため、左右両耳どちらでも違和感なく装着できる。
このイヤーピースが、なかなかよくできている。KH-M700はオープン/インイヤー型で、10.4mm径のドライバーはユニットからステムのように突き出ており、それをすっぽり覆う構造。そのノズルを耳穴に軽く差し込むように装着するのだが、感触はふんわりと軽く、“耳にちょんと載る”という表現が的確だ。3時間ほど装着したままでいても、カナル型のような疲労感はない。フレキシブルイヤーフックも、自在に曲げられるだけに自己主張がなく、あくまで“耳にちょんと載る”のを手助けするに過ぎない。
Bluetooth接続が「マルチポイント」に対応していることも、開発チームの研究熱心さを感じさせる部分といえる。2台の機器と同時に接続できるため、スマートフォンとPC、またはPC2台と同時に接続し、必要に応じて瞬時に切り替えることができるのだ。実際、PCでWEB会議中にスマートフォンに着信があり、KH-M700を外すことなく対応できたときには、ほほう、と思わず声が出てしまった。
ところで、KH-M700には「KH-M500」という弟分がある。ANCが省略されている点を除けば、イヤーピース・イヤーフックを含む形状やマイクの位置、ファンクションボタンなどハードウェア的な部分に差はほとんどなく(KH-M700がわずかに0.2g重い。また、イヤーフックもM700はフレキシブルに曲げられるがM500は位置が曲げられない)、cVcによる発話側の環境ノイズ低減やマルチポイント接続は共通だ。価格が安いうえにカラーバリエーションはブラック・ホワイトの2色、ANCがない点に納得できればこちらのほうがコスパはいい。
音楽用のワイヤレスイヤホンでは“聞き疲れ”を感じる、しかしPCの内蔵スピーカーを使うわけにはいかず、しっかりとしたマイク性能も欲しい…そんなデバイスを探していた向きには、KH-M700とKH-M500、ちょうどいい選択肢となるはずだ。