[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第261回】
Apple Music ロスレス/ハイレゾ配信を徹底解説! 基礎知識からおすすめ再生デバイスまで
◯Apple Musicにおけるロスレスとハイレゾ
「ロスレス」「ハイレゾ」を確認した上で、改めてこちらの表での区分けのポイントについて紹介。
まず「サンプリング周波数とビット化量子数が何であれ、ロッシー圧縮されていれば当然ロスレスではないしハイレゾでもない」というのがオーディオにおける一般的な認識だ。いわゆる「ハイレゾ級ワイヤレスコーデック」はまた別の考え方や事情からの呼び方なので、ここでは脇に置いておいてほしい。
次に「CDに収録されている音声データのスペックを上回るスペック」というのも、ハイレゾの条件として一般的なものと言える。加えて言うと、量子化ビット数の方が重視される傾向にあり、「サンプリング周波数が96kHz等であっても量子化ビット数が16bitのままではハイレゾとするには微妙」という認識も一般的。
しかし表の通り、Apple Musicにおけるロスレスとハイレゾの区分けは、一般的なそれとは少し異なっている。
注目してほしいのは、44.1 - 48kHz/24bitをハイレゾロスレスではなく、ただの「ロスレス」と区分している点だ。これは、後ほど紹介するApple純正「ヘッドフォンジャックアダプタ」が48kHz/24bitまでのデータをダウンコンバートせず、そのままのスペックを維持してネイティブ再生できる仕様のため、そこを境界線として「ヘッドフォンジャックアダプタの仕様を超えるスペックがハイレゾ」という分け方にしてあるものと推測できる。
なのでApple Musicにおいては、
●ハイレゾロスレス=下記アダプタでカバーできる範囲を超えるスペックのロスレス
●ロスレス=ヘッドフォンジャックアダプタのスペックでカバーできる範囲のロスレス
というように理解しておくとわかりやすいだろう。
■ロスレスやハイレゾをちゃんと再生するのに必要なアイテム
「ロスレス」や「ハイレゾロスレス」でストリーミング配信される音源を、そのクオリティを落とさず音質ロスなく再生するには、それぞれのスペックをカバーするアイテムが必要だ。ということで改めてこちらの表をチェック。
どの配信クオリティとアイテムの組み合わせでも再生するだけなら問題ない。Bluetoothイヤホンでハイレゾロスレスを聴くことも普通にできる。
しかしスペック不足のアイテムで再生すると音質ロスが発生してしまうので、「いやいやストリーミングデータ量を増やしてまでロッシーやハイレゾで聴く意味ないじゃん!」となるわけだ。
特にBluetoothイヤホンは、伝送時のロッシー圧縮による音質ロスが不可避かつ大きい。ロスレスもハイレゾも、そのクオリティを大きく落とした状態でしか再生することはできない。
元になるストリーミング音質が向上すればロッシー圧縮後の音質も多少は向上するので、ストリーミング品質をロスレスやハイレゾに設定してリスニングすることに何も意味がないわけではない。が、実用的な意味は皆無だ。
なお今後AppleがiPhoneとAirPodsにBluetoothオーディオの次期標準コーデックとみなされる「LC3」を導入するようなことがあれば、その時にはBluetoothでのロスレスやハイレゾの利用にも十分な意義が出てくるかもしれない。
しかし現状では「iPhoneにおいてBluetoothイヤホンでのロスレスやハイレゾはほぼ無意味」と考えておいてよいだろう。LDACやaptX HD、aptX Adaptiveといった「ハイレゾ級」コーデックがすでに普及しているAndroidがうらやましいところだ。
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