【特別企画】初代機の特徴はそのままに吸引力を増大
キース・モンクス日本再上陸! 炭山アキラ氏も自宅導入を決意したレコード、CDの衝撃的な洗浄効果
■クリーニングマシンの名門、キース・モンクスが国内再上陸
この21世紀こそ、綺羅星のようなレコードクリーニング・マシンの数々が性能を競い合っている感があるが、アナログ全盛期というべき1980年代頃までは、有望なマシンが本当に少なかったし、当時の物価から鑑みるととてつもなく高価な製品が多かったという印象も残る。
そんな中で、確かに際立って高価ではあるけれどクリーニング効果もピカイチというマシンが存在した。英国キース・モンクスの製品である。専用の薬液でディスクの汚れを浮かせ、先端の細いノズルで丹念に薬液ごと汚れを吸い込んでいく同マシンは、時間こそかかるが「新品でもここまで輝いているのを見たことがない」というレベルで盤をピカピカに仕上げてくれた。大型レコード店の店頭で洗浄サービスが行われていたのをご記憶の人、愛用されていた人もおられよう。
そのキース・モンクスは、もうずいぶん長い間国内へ入ってきていなかったのだが、メーカー自体は健在で、何とこのたび新製品を引っ提げて再参入を果たした。それも20万円を切る非常に良心的な価格のモデルである。個人がリスニングルームへ置くにはあまりに巨大だった初代機とは比べ物にならないくらいコンパクトなこの「プロディジー」は、驚くべきことに初代機を象徴する「細い先端ノズルで汚れた洗浄液を吸引する」という特徴を引き継いでいる。
しかも、同方式は伝統的にノズルの先へ細い糸を添わせ、盤と吸引口のすき間を確保していたのが、本機ではその糸が廃され、完全なトラブルフリーを実現しながら吸引効果を増大させているのがすごい。この独自方式のノズルは、線状に吸引する一般的なマシンに比べ、やや時間はかかるものの吸い残しがほぼゼロであり、また劇的に動作音が静かになることも特筆せねばなるまい。
■美しい竹製の筐体で、動作音も静か。インテリアとも融合する
洗浄の手順は、一般汚れとカビなどのひどい汚れ、そしてSP盤などのシェラック盤にそれぞれ対応する専用クリーニング液を盤面へ滴下して、盤を回しつつマイクロファイバー製の専用ブラシで盤面を磨き、盤の最内周にノズルをセット、そこから吸引を開始すれば2分強でクリーニング完了である。初代機は4分以上かかっていたから、その面でも本機は改善されている。なお、本機のプラッターはレーベル面とほぼ同寸だが、これはB面を清掃する際にA面へプラッターの僅かな汚れでも付着させないように、との配慮である。
もう一つ見逃せないのは、本機がレコードのみならず、CD/SACDやDVD/BDまで洗浄できることである。手順はラバークランパーの上部にデジタル盤を裏返して差し込み、あとは磨いて吸引する同様の手順を踏めばOKと、至って簡単だ。今回は試せなかったが、輸入元タクトシュトックの庵 吾朗代表によると、「BDの画が劇的に向上したのには驚きました」とのこと。用途の大幅な広がりを喜びたい。
また、いかにも業務用然としていた初代機に対し、本機は美しい竹製の筐体を持ち、配されたイルミネーションは調色ができるなど、インテリアとの融合も大きな開発テーマとなったようだ。音の静かさもあり、リビングで使うにはこれらが大きな特徴となるだろう。
■新品レコードでも聴き心地を劇的に向上させる
実際に磨いた盤は、まだ一度も針を落としていない突撃おたま苦楽部の「アダルト・トイ・ボックス〜ポップ・スタイル」で行う。まず洗浄前に初めて針を落として一度聴き、前述の手順で洗浄することほんの数分間、再び同じトラックを聴いた瞬間、目が丸くなった。もともとこの盤はかなりの優秀録音で、音像がくっきりと立つのだが、そこへしっかりと音場の広がりが加わり、聴き心地が劇的に向上した。
さらに、楽器1本ごとに輝きと生気を増し、とてつもなく濃厚な演奏空間を繰り広げる。新品レコードを磨いて音質向上する、そのこと自体は別段珍しい現象ではないが、この伸びしろの大きさ、音楽の磨き上げられっぷりといったらただごとではない。
続いてデジタル盤をクリーニングしてみる。ごく聴き慣れたSACDを磨いたが、盤が小さいので吸引には1分もかからない。音はレコード同様に音楽がピカピカと輝き、音場感が大幅に向上した。結構な優秀録音と感じていた盤だが、適切なクリーニングはここまで解像度と聴き心地を改善するのかと、改めて思いを深くした次第だ。多くの皆さんへ安心して薦められる、現代の銘機だと思う。
■後日談 〜憧れのクリーニングマシンが我が家に舞い降りてきた!
キース・モンクス「プロディジー」との出会いは、本当に衝撃的なものだった。クリーニングマシンの姿を初めて見たのは、大学へ入って上京し、通うようになった秋葉原の石丸電気レコードフロアだった。確かレジ横あたりに巨大な白い箱が置いてあって、高い位置から降りてくる細いノズルが盤面のクリーニング液を吸い取っていくさまを、飽きず眺めていたことを覚えている。あれこそが“元祖”キース・モンクスだった。その後、業界に入ってその劇的な効果を幾度か試した経験もあったが、大きさといい価格といい、とても自宅へ迎え入れられるものではなかった。
その憧れつつも諦めた「ノズル」が、びっくりするほど小型・軽量になり、何とかやり繰りできる価格で目の前に現れたのだ。実際に効果を試させてもらったら、ノズルはさらに使いやすくなり、クリーニング効果も極めて高いではないか。これで自制心を決壊させないなんてこと、できる人がいるだろうか。
というわけで、わが家にかの“神童”が舞い降りてきてしまった。早速愛用のレファレンス盤を何枚か磨いてみたが、やはりこのクリーニング効果は劇的だ。これまでせっせと手磨きに勤しんできたが、かかる時間も大幅に短縮できるし、やはり盤面に薬液が残らないというのは何物にも代え難い。
このところ忙しくてまだ置き台を作ってやる暇がなく、スピーカースタンドへ載せることになってしまっているが、そのうちジャストサイズの棚を製作してやろうと考えている。
(提供:タクトシュトック)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー181号』からの転載です。
この21世紀こそ、綺羅星のようなレコードクリーニング・マシンの数々が性能を競い合っている感があるが、アナログ全盛期というべき1980年代頃までは、有望なマシンが本当に少なかったし、当時の物価から鑑みるととてつもなく高価な製品が多かったという印象も残る。
そんな中で、確かに際立って高価ではあるけれどクリーニング効果もピカイチというマシンが存在した。英国キース・モンクスの製品である。専用の薬液でディスクの汚れを浮かせ、先端の細いノズルで丹念に薬液ごと汚れを吸い込んでいく同マシンは、時間こそかかるが「新品でもここまで輝いているのを見たことがない」というレベルで盤をピカピカに仕上げてくれた。大型レコード店の店頭で洗浄サービスが行われていたのをご記憶の人、愛用されていた人もおられよう。
そのキース・モンクスは、もうずいぶん長い間国内へ入ってきていなかったのだが、メーカー自体は健在で、何とこのたび新製品を引っ提げて再参入を果たした。それも20万円を切る非常に良心的な価格のモデルである。個人がリスニングルームへ置くにはあまりに巨大だった初代機とは比べ物にならないくらいコンパクトなこの「プロディジー」は、驚くべきことに初代機を象徴する「細い先端ノズルで汚れた洗浄液を吸引する」という特徴を引き継いでいる。
しかも、同方式は伝統的にノズルの先へ細い糸を添わせ、盤と吸引口のすき間を確保していたのが、本機ではその糸が廃され、完全なトラブルフリーを実現しながら吸引効果を増大させているのがすごい。この独自方式のノズルは、線状に吸引する一般的なマシンに比べ、やや時間はかかるものの吸い残しがほぼゼロであり、また劇的に動作音が静かになることも特筆せねばなるまい。
■美しい竹製の筐体で、動作音も静か。インテリアとも融合する
洗浄の手順は、一般汚れとカビなどのひどい汚れ、そしてSP盤などのシェラック盤にそれぞれ対応する専用クリーニング液を盤面へ滴下して、盤を回しつつマイクロファイバー製の専用ブラシで盤面を磨き、盤の最内周にノズルをセット、そこから吸引を開始すれば2分強でクリーニング完了である。初代機は4分以上かかっていたから、その面でも本機は改善されている。なお、本機のプラッターはレーベル面とほぼ同寸だが、これはB面を清掃する際にA面へプラッターの僅かな汚れでも付着させないように、との配慮である。
もう一つ見逃せないのは、本機がレコードのみならず、CD/SACDやDVD/BDまで洗浄できることである。手順はラバークランパーの上部にデジタル盤を裏返して差し込み、あとは磨いて吸引する同様の手順を踏めばOKと、至って簡単だ。今回は試せなかったが、輸入元タクトシュトックの庵 吾朗代表によると、「BDの画が劇的に向上したのには驚きました」とのこと。用途の大幅な広がりを喜びたい。
また、いかにも業務用然としていた初代機に対し、本機は美しい竹製の筐体を持ち、配されたイルミネーションは調色ができるなど、インテリアとの融合も大きな開発テーマとなったようだ。音の静かさもあり、リビングで使うにはこれらが大きな特徴となるだろう。
■新品レコードでも聴き心地を劇的に向上させる
実際に磨いた盤は、まだ一度も針を落としていない突撃おたま苦楽部の「アダルト・トイ・ボックス〜ポップ・スタイル」で行う。まず洗浄前に初めて針を落として一度聴き、前述の手順で洗浄することほんの数分間、再び同じトラックを聴いた瞬間、目が丸くなった。もともとこの盤はかなりの優秀録音で、音像がくっきりと立つのだが、そこへしっかりと音場の広がりが加わり、聴き心地が劇的に向上した。
さらに、楽器1本ごとに輝きと生気を増し、とてつもなく濃厚な演奏空間を繰り広げる。新品レコードを磨いて音質向上する、そのこと自体は別段珍しい現象ではないが、この伸びしろの大きさ、音楽の磨き上げられっぷりといったらただごとではない。
続いてデジタル盤をクリーニングしてみる。ごく聴き慣れたSACDを磨いたが、盤が小さいので吸引には1分もかからない。音はレコード同様に音楽がピカピカと輝き、音場感が大幅に向上した。結構な優秀録音と感じていた盤だが、適切なクリーニングはここまで解像度と聴き心地を改善するのかと、改めて思いを深くした次第だ。多くの皆さんへ安心して薦められる、現代の銘機だと思う。
■後日談 〜憧れのクリーニングマシンが我が家に舞い降りてきた!
キース・モンクス「プロディジー」との出会いは、本当に衝撃的なものだった。クリーニングマシンの姿を初めて見たのは、大学へ入って上京し、通うようになった秋葉原の石丸電気レコードフロアだった。確かレジ横あたりに巨大な白い箱が置いてあって、高い位置から降りてくる細いノズルが盤面のクリーニング液を吸い取っていくさまを、飽きず眺めていたことを覚えている。あれこそが“元祖”キース・モンクスだった。その後、業界に入ってその劇的な効果を幾度か試した経験もあったが、大きさといい価格といい、とても自宅へ迎え入れられるものではなかった。
その憧れつつも諦めた「ノズル」が、びっくりするほど小型・軽量になり、何とかやり繰りできる価格で目の前に現れたのだ。実際に効果を試させてもらったら、ノズルはさらに使いやすくなり、クリーニング効果も極めて高いではないか。これで自制心を決壊させないなんてこと、できる人がいるだろうか。
というわけで、わが家にかの“神童”が舞い降りてきてしまった。早速愛用のレファレンス盤を何枚か磨いてみたが、やはりこのクリーニング効果は劇的だ。これまでせっせと手磨きに勤しんできたが、かかる時間も大幅に短縮できるし、やはり盤面に薬液が残らないというのは何物にも代え難い。
このところ忙しくてまだ置き台を作ってやる暇がなく、スピーカースタンドへ載せることになってしまっているが、そのうちジャストサイズの棚を製作してやろうと考えている。
(提供:タクトシュトック)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー181号』からの転載です。