音質の良さ&コスパの高さ
あえて選びたい有線イヤホン、プロが選ぶ“1万円以下”のおすすめ6モデル
いまや音楽を楽しむ手段として、ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンが主流となっている。そんな状況で、これまで主流であった有線モデルはどうなっているかというと、販売数こそ減っているものの、いまだに根強い人気がある。それは、有線ならではのアドバンテージを持ち合わせているからだ。
有線モデルの注目ポイントといえるのが、音質のよさとコストパフォーマンスの高さ。有線だとワイヤレス化に伴うパーツが必要ないためコスト的に有利だし、狭いスペースに機能を詰め込まなければならないワイヤレス製品と比べると、有線モデルは音質の追求において優位性がある。
こういった違いから、有線ならば、1万円以下の製品であっても充分に聴き応えがあり、良質なサウンドのモデルがいくつもあるのだ。そこで、今回は現在(※2021年10月)Amzonで1万円以下で販売されている有線イヤホンに的を絞って、サウンド面で厳選したオススメの6モデルを紹介していこうと思う。
■iBasso Audio「IT00」
ヘッドホンアンプやDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を得意とする新進気鋭のオーディオブランド、iBasso Audioのスタンダードクラスに位置するカナル型イヤホン。イヤーモニター然とした本体デザインを採用することで、高いフィット感を実現している。
その内部には、グラフェンコート振動板を採用する10mm径のダイナミック型ユニットを搭載。また、MMCXコネクタによる着脱式ケーブルが採用されているので、他社のリケーブルに交換することも可能だ。
サウンドはモニター系ともいえる、素直でストレートな表現が魅力。低域はキレ、メリハリともによい躍動感に溢れる表現で、洋楽ハードロックなどはグルーブ感溢れる演奏が楽しめる。高域は凜としたハリのある表現だが、中域重視のバランスによるものか、痛々しい感じはない。
女性ボーカルを聴いても、実体感のある、のびのびとした歌声を楽しませてくれる。帯域バランスのよさ、ニュートラルな音色傾向から、リファレンスとして手元に置きたくなる製品だ。
■DENON「AH-C720」
11.2mm径のダイナミック型ドライバーを搭載したカナル型イヤホン。上位機種の「AH-C820」はドライバーを2基搭載しているが、こちらは1基搭載のオーソドックスなタイプだ。
そのいっぽうで、イヤホン本体のメイン部分に高強度の樹脂を採用しつつ、ケーブル固定アームにアルミダイキャストを組み合わせるハイブリッド構造を採用している。これによって不要な振動を抑え、柔らかな低音とクリアで抜けの良い中高域を実現した。
実際のサウンドを聴いてみると、確かにクリアでヌケのよいサウンドが特徴的。エッジのたった、彫りの深い中高域の表現によって、アクティブなサウンドと表現すればよいのだろうか。おかげで、どんな音楽ジャンルであってもノリが良く、エネルギッシュで勢いのあるサウンドを楽しめる。
特徴的なサウンドキャラクターを持ち合わせているので、多少好き嫌いが分かれるかもしれないが、好みに合えば手放せなくなる、希有な1台だ。
■JVC「HA-FW7」
現代のライフスタイルに寄り添った、新しいオーディオ製品のあり方を提案する “N_W(エヌダブ)” シリーズの一員。小柄なイヤホン本体は、ウッドとアルミのハイブリッド構成を巧みに活かした、シックで上品なデザインとなっている。
最大の特長といえば、やはりウッドドーム振動板だろう。高級モデルのノウハウを投入した8.5mm径ダイナミック型ドライバーによって、アコースティック楽器そのものの音色と見紛うばかりのリアルサウンドを堪能させてくれる。
そのため、最も得意としているのはジャズやクラシックなどのジャンルだったりする。もちろん、ポップス系打ち込み系が不得意というわけではないが、生楽器に向いたチューニングが為されているのは確かだ。
たとえば弦楽器は、凜とした伸びやかな演奏のヴァイオリンや、なめらかで優しいチェロの音色を楽しませてくれる。またボーカルも、熱気のこもった歌声に臨場感を感じる。音楽の楽しさを存分に味わえる表現豊かな製品だ。
■TFZ「LIVE 1」
新進気鋭の中華イヤホンブランドTFZの最大の特徴である、ダブルマグネティックサーキット(デュアル磁気回路)採用のエントリーモデル。同ブランドの第2世代ユニットからブラッシュアップが行われた、11.2mm径のダイナミック型ドライバーを搭載する。
また、2pinコネクタ採用の着脱式ケーブルが付属。芯線に4芯銀コートOFCを採用して音質を確保しつつ、樹脂製被膜によって取り回しのよさを両立させている。
サウンドはダイレクト感が高く、クリアキャラクターが特徴だ。締まりのよい低域や、鋭く突き抜ける高域表現をもつことで、メリハリ強めな臨場感マシマシのサウンドだが、中域との音量バランスが絶妙なのだろう、耳障りな印象はいっさいない。
解像度感も良好で、歌声のディテールが漏らさずしっかりと伝わってくる。どんなジャンルの音楽もノリのよいダイナミックな表現になるので、好みに合うか否かが選択のポイントとなるが、ことクオリティ面では充分以上の満足感をもたらしてくれる優秀な製品だ。
■水月雨「SSP(Super Spaceship Pulse)」
良質なサウンドとコストパフォーマンスの高さから注目を集めている水月雨(MOONDROP)は、2015年に設立されたばかりという、新進気鋭の中華ブランド。現在、有線イヤホンをメインにエントリーから上級クラスまでいくつかの製品をラインナップしているが、そのなかでもエントリーに位置づけられているのが、このSSPだ。
こちら、価格を大きく上まわる良音質によって水月雨の名を一躍有名にした「SSR」(Super Spaceship Reference)の後継モデル。リキッドメタル素材を採用した個性派デザインのイヤホン本体や、ベリリウムコーティング振動板を採用するダイナミック型ドライバーなどの基本部分は変わらず、さらなる音質追求が為されている。
その恩恵もあってか、実際のサウンドはなかなかのもの。基本的にはダイレクト感が高くストレートな表現だが、丁寧な中高域表現を持ち合わせていることもあって、聴き心地の良いウェルバランスなサウンドを楽しめる。低域もスピーディーでタイトなサウンドキャラクターのため、グルーブ感も良好だ。
まさに今回の企画にピッタリな、有線イヤホンならではのアドバンテージを感じさせてくれる製品といえる。なお、2pinコネクタの着脱式ケーブルを採用しているので、市販ケーブルと交換して、自分好みのサウンドにカスタマイズしていくのも楽しい。
■final「E2000」
音質に強いこだわりを持つ日本ブランドfinalのラインナップのなかでも、エントリークラスに位置づけられるカジュアルなモデル。そして同時に、アンダー5000円クラスの有線イヤホンで “定番” や “リファレンス” とされているのが、このE2000だ。
ボディカラーは、マットブラックとマッドシルバーというシックな2色を用意。また、イヤホン本体はとても小柄な円筒形を採用しているため、装着感はとても軽快で、持ち運びも手軽な製品となっている。いっぽう、その内部には製造まで自社管理するオリジナルドライバーを搭載するなど、音質に関して徹底的にこだわるというfinalらしさが、充分に盛り込まれている。
この価格帯の定番といわれる製品だけあって、そのサウンドはなかなかに魅力的。ひとことで表現するならば、スピード感を重視したキャラクターで、タイトな低域と厚みのある中域によって活き活きとした演奏や歌声が楽しめる。これは、ハードロックやJポップなどにピッタリの音色傾向といえる。解像感や表現のきめ細やかさなども価格からは想像できない良質さで、とても完成度の高い製品だ。
なお、姉妹モデルとして「E3000」がラインナップされているが、こちらは筐体の素材とサウンドチューニングが異なっている。艶やかで伸びやかな歌声の女性ボーカルを楽しみたい、という方にはE3000をオススメしたい。
このように有線イヤホンであれば、アンダー1万円クラスであっても、他にない魅力あるサウンドを持ち合わせている製品はいくつもある。
さらに少し手を伸ばせば、ゼンハイザー「IE 100 PRO」やSHURE「SE215 Special Edition」など、1万円超クラスにはモニター系の定番イヤホンもいくつか存在しているので、予算に余裕があればこちらも含めて検討して欲しいところだ。
好きな楽曲を思う存分楽しむため、または “自分の好きな音” を振り返るためのリファレンスとして、お気に入りの有線モデルを1台手元に置くことをオススメしたい。
(野村ケンジ)
有線モデルの注目ポイントといえるのが、音質のよさとコストパフォーマンスの高さ。有線だとワイヤレス化に伴うパーツが必要ないためコスト的に有利だし、狭いスペースに機能を詰め込まなければならないワイヤレス製品と比べると、有線モデルは音質の追求において優位性がある。
こういった違いから、有線ならば、1万円以下の製品であっても充分に聴き応えがあり、良質なサウンドのモデルがいくつもあるのだ。そこで、今回は現在(※2021年10月)Amzonで1万円以下で販売されている有線イヤホンに的を絞って、サウンド面で厳選したオススメの6モデルを紹介していこうと思う。
■iBasso Audio「IT00」
ヘッドホンアンプやDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を得意とする新進気鋭のオーディオブランド、iBasso Audioのスタンダードクラスに位置するカナル型イヤホン。イヤーモニター然とした本体デザインを採用することで、高いフィット感を実現している。
その内部には、グラフェンコート振動板を採用する10mm径のダイナミック型ユニットを搭載。また、MMCXコネクタによる着脱式ケーブルが採用されているので、他社のリケーブルに交換することも可能だ。
サウンドはモニター系ともいえる、素直でストレートな表現が魅力。低域はキレ、メリハリともによい躍動感に溢れる表現で、洋楽ハードロックなどはグルーブ感溢れる演奏が楽しめる。高域は凜としたハリのある表現だが、中域重視のバランスによるものか、痛々しい感じはない。
女性ボーカルを聴いても、実体感のある、のびのびとした歌声を楽しませてくれる。帯域バランスのよさ、ニュートラルな音色傾向から、リファレンスとして手元に置きたくなる製品だ。
■DENON「AH-C720」
11.2mm径のダイナミック型ドライバーを搭載したカナル型イヤホン。上位機種の「AH-C820」はドライバーを2基搭載しているが、こちらは1基搭載のオーソドックスなタイプだ。
そのいっぽうで、イヤホン本体のメイン部分に高強度の樹脂を採用しつつ、ケーブル固定アームにアルミダイキャストを組み合わせるハイブリッド構造を採用している。これによって不要な振動を抑え、柔らかな低音とクリアで抜けの良い中高域を実現した。
実際のサウンドを聴いてみると、確かにクリアでヌケのよいサウンドが特徴的。エッジのたった、彫りの深い中高域の表現によって、アクティブなサウンドと表現すればよいのだろうか。おかげで、どんな音楽ジャンルであってもノリが良く、エネルギッシュで勢いのあるサウンドを楽しめる。
特徴的なサウンドキャラクターを持ち合わせているので、多少好き嫌いが分かれるかもしれないが、好みに合えば手放せなくなる、希有な1台だ。
■JVC「HA-FW7」
現代のライフスタイルに寄り添った、新しいオーディオ製品のあり方を提案する “N_W(エヌダブ)” シリーズの一員。小柄なイヤホン本体は、ウッドとアルミのハイブリッド構成を巧みに活かした、シックで上品なデザインとなっている。
最大の特長といえば、やはりウッドドーム振動板だろう。高級モデルのノウハウを投入した8.5mm径ダイナミック型ドライバーによって、アコースティック楽器そのものの音色と見紛うばかりのリアルサウンドを堪能させてくれる。
そのため、最も得意としているのはジャズやクラシックなどのジャンルだったりする。もちろん、ポップス系打ち込み系が不得意というわけではないが、生楽器に向いたチューニングが為されているのは確かだ。
たとえば弦楽器は、凜とした伸びやかな演奏のヴァイオリンや、なめらかで優しいチェロの音色を楽しませてくれる。またボーカルも、熱気のこもった歌声に臨場感を感じる。音楽の楽しさを存分に味わえる表現豊かな製品だ。
■TFZ「LIVE 1」
新進気鋭の中華イヤホンブランドTFZの最大の特徴である、ダブルマグネティックサーキット(デュアル磁気回路)採用のエントリーモデル。同ブランドの第2世代ユニットからブラッシュアップが行われた、11.2mm径のダイナミック型ドライバーを搭載する。
また、2pinコネクタ採用の着脱式ケーブルが付属。芯線に4芯銀コートOFCを採用して音質を確保しつつ、樹脂製被膜によって取り回しのよさを両立させている。
サウンドはダイレクト感が高く、クリアキャラクターが特徴だ。締まりのよい低域や、鋭く突き抜ける高域表現をもつことで、メリハリ強めな臨場感マシマシのサウンドだが、中域との音量バランスが絶妙なのだろう、耳障りな印象はいっさいない。
解像度感も良好で、歌声のディテールが漏らさずしっかりと伝わってくる。どんなジャンルの音楽もノリのよいダイナミックな表現になるので、好みに合うか否かが選択のポイントとなるが、ことクオリティ面では充分以上の満足感をもたらしてくれる優秀な製品だ。
■水月雨「SSP(Super Spaceship Pulse)」
良質なサウンドとコストパフォーマンスの高さから注目を集めている水月雨(MOONDROP)は、2015年に設立されたばかりという、新進気鋭の中華ブランド。現在、有線イヤホンをメインにエントリーから上級クラスまでいくつかの製品をラインナップしているが、そのなかでもエントリーに位置づけられているのが、このSSPだ。
こちら、価格を大きく上まわる良音質によって水月雨の名を一躍有名にした「SSR」(Super Spaceship Reference)の後継モデル。リキッドメタル素材を採用した個性派デザインのイヤホン本体や、ベリリウムコーティング振動板を採用するダイナミック型ドライバーなどの基本部分は変わらず、さらなる音質追求が為されている。
その恩恵もあってか、実際のサウンドはなかなかのもの。基本的にはダイレクト感が高くストレートな表現だが、丁寧な中高域表現を持ち合わせていることもあって、聴き心地の良いウェルバランスなサウンドを楽しめる。低域もスピーディーでタイトなサウンドキャラクターのため、グルーブ感も良好だ。
まさに今回の企画にピッタリな、有線イヤホンならではのアドバンテージを感じさせてくれる製品といえる。なお、2pinコネクタの着脱式ケーブルを採用しているので、市販ケーブルと交換して、自分好みのサウンドにカスタマイズしていくのも楽しい。
■final「E2000」
音質に強いこだわりを持つ日本ブランドfinalのラインナップのなかでも、エントリークラスに位置づけられるカジュアルなモデル。そして同時に、アンダー5000円クラスの有線イヤホンで “定番” や “リファレンス” とされているのが、このE2000だ。
ボディカラーは、マットブラックとマッドシルバーというシックな2色を用意。また、イヤホン本体はとても小柄な円筒形を採用しているため、装着感はとても軽快で、持ち運びも手軽な製品となっている。いっぽう、その内部には製造まで自社管理するオリジナルドライバーを搭載するなど、音質に関して徹底的にこだわるというfinalらしさが、充分に盛り込まれている。
この価格帯の定番といわれる製品だけあって、そのサウンドはなかなかに魅力的。ひとことで表現するならば、スピード感を重視したキャラクターで、タイトな低域と厚みのある中域によって活き活きとした演奏や歌声が楽しめる。これは、ハードロックやJポップなどにピッタリの音色傾向といえる。解像感や表現のきめ細やかさなども価格からは想像できない良質さで、とても完成度の高い製品だ。
なお、姉妹モデルとして「E3000」がラインナップされているが、こちらは筐体の素材とサウンドチューニングが異なっている。艶やかで伸びやかな歌声の女性ボーカルを楽しみたい、という方にはE3000をオススメしたい。
このように有線イヤホンであれば、アンダー1万円クラスであっても、他にない魅力あるサウンドを持ち合わせている製品はいくつもある。
さらに少し手を伸ばせば、ゼンハイザー「IE 100 PRO」やSHURE「SE215 Special Edition」など、1万円超クラスにはモニター系の定番イヤホンもいくつか存在しているので、予算に余裕があればこちらも含めて検討して欲しいところだ。
好きな楽曲を思う存分楽しむため、または “自分の好きな音” を振り返るためのリファレンスとして、お気に入りの有線モデルを1台手元に置くことをオススメしたい。
(野村ケンジ)