[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第265回】
DAPやポタアンだけじゃない!FiiOの “イヤホンブランドとしての決定打” 「FD7」を聴いた
■音導管とイヤーピースでのチューニング
さて、筆者自身としてはそこに頼るまでもなく、いきなり大満足になってしまったのだが、音導管とイヤーチップの交換によるチューニングについても、簡単にではあるが紹介しておこう。
音導管は前述のように、以下3タイプが付属する。
●内径大/緑:超高音域のディテールに優れる
●内径中/黒:バランスのとれたサウンド
●内径小/赤:力強い低音
実際に試してみた印象としては、
「内径中と内径大の音の違いは極端ではなく、空間表現や繊細さの微調整に使いやすそう」
「内径小は内径中&大と比べ、中低域がわかりやすくプッシュされ明快な効果を得られる」
といったところだ。
イヤーチップは6タイプも付属。それぞれ形状や素材、音を通す内径の大小などが異なり、こちらもチューニングに利用できる。詳細は以下の通りだ。
●Bass
●Vocal
●SpinFit
●Memory foam(フォーム素材)
●Balanced
●Tri-flange(3段傘)
ただ、イヤーチップ選択においては装着感も重要。音のチューニングだけを考えて、イヤーチップを選ぶわけにはいかない。
そのため、「音の調整は主に音導管の選択で行い、イヤーチップ選びは装着感重視」という、役割分担を基本にするのがおすすめ。そういう分担ができることも、音導管交換機構が用意されているモデルのメリットだ。
ただし、この音導管&イヤーチップの選択には注意点がひとつ。内径小の音導管は、内径だけではなく外径も細いため、付属イヤーチップのうちきっちりはまるのは、トリプルフランジのみだ。
設計の意図としては、トリプルフランジのサポートページの記述にある、「外耳道の奥深くまで挿入でき、より豊かな音を導くことができる小さなサウンドチューブ。このイヤーチップを使う場合には、赤いリングの細い交換可能型音導管を使用してください」という一文から想像するに、内径小の音導管はトリプルフランジイヤーチップありき。おそらく、そのイヤーチップを使いたいユーザーに向けて用意された音導管ということなのだろう。
だが、音導管とイヤーチップの組み合わせの自由度は、より高い方が面白くなる。今後は、内径は小さくしつつ肉厚で、かつ外径は他と揃えた音導管や、外径を調整するためのアダプターといったアイテムにも期待したい。
■FiiOイヤホンの最高傑作!
ということで、そういった細かな要望はあるが、むしろその程度の要望しかないのだ。そもそも筆者は、バランス音導管&バランスイヤーチップの組み合わせで大満足なので、他の音導管の些細な弱点なんて、実はぜんぜん気になってなかったりする。
強いて注意点といえば、お借りした試聴機には「400hエージング済み」の付箋が貼られていた。実力発揮までには、十分な慣らし運転が必要であるっぽい気配を漂わせている。一般的にも、硬質な振動板ほど鳴らしに時間がかかる傾向にあるので、本機を試聴や購入の際には、その点も気に留めておいた方がよさそうだ、ということくらいか。
イヤホンブランドとしても期待される立場となりつつある同社が、その期待に完璧に応えてくれたモデル、それがこのFD7だ。FiiOのイヤホンは、いまやこのレベルに達している!というのを、ぜひ体感してみてほしい。
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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