[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域【第265回】
DAPやポタアンだけじゃない!FiiOの “イヤホンブランドとしての決定打” 「FD7」を聴いた
■ピュア・ベリリウム振動板、だけじゃない!FiiOならではの音響設計を採用
しかし、ピュア・ベリリウム振動板(の割に安い)というだけならすごいにはすごいが、そのすごさは別にFiiOならではのものではない。何ならピュア・ベリリウム振動板採用で、もっと安いイヤホンだってあるにはある。
FD7の凄さであり魅力、それは「FiiOが開発してきたFiiOならではのダイナミック型イヤホン技術がまずあり、そこにピュア・ベリリウム振動板というピースが合流してきたことで生まれた、まさに “FiiOならでは” のダイナミック型イヤホンの究極形」ということだ。
FiiOならではのダイナミック型イヤホン技術とは、「アコースティック・プリズム・システム」と「ボルカニック・フィールド機構」、合わせてセミオープン型構造の採用も、特徴的な要素となる。それらは、今年初めに発売された「FD5」にて初搭載され、 “音響設計に関する革新的なブレークスルー” として紹介されたものだ。
つまり大枠としては、「FD5の基本要素を受け継ぎつつ、FD5ではベリリウムコーティングエッジ&Diamond-like Carbon振動板だったところを、ピュア・ベリリウム振動板としたのがFD7」という言い方もできる。
そしてここで改めて述べておきたいのは、従来モデルのFD5は、もうその時点で素晴らしいサウンドを叩き出していたということ。そのことから、FD7の音の素晴らしさも、ピュア・ベリリウム振動板だけに頼ったものではないとわかるわけだ。むしろ、それらFiiOならではの要素があってこそ、ピュア・ベリリウム振動板の魅力を存分に引き出せているとさえ感じる。
■「音響設計に関する革新的なブレークスルー」とは?
さて、前述したように、FD7に用いられる “FiiOならではのダイナミック型イヤホン技術” はアコースティック・プリズム・システム」と「ボルカニック・フィールド機構」、セミオープン型構造の採用だと説明したが、それらの技術についても改めて確認しておこう。
「アコースティック・プリズム・システム」は、振動板の前方と、振動板と音導管の間に置かれ、音導管内での音波の伝わり方を制御する役割を持つ機構だ。高域定在波の排除、音の拡散性の改善というのがその効果である。スピーカーにおいて、トゥイーターユニットの前面に配置される「ディフューザー」の発想や技術を、イヤホンに応用したものと説明される。
逆に背面のフェイスプレート側に配置されているのが、「ボルカニック・フィールド機構」。こちらは「火山型形状ディフューザー」と説明されており、ドライバー背面の空気の流れや圧を、適切に制御する仕組みのようだ。その効果は、低域の定在波と歪みの低減、低域の拡散性の改善がなされるとのこと。
そして、本機はセミオープン構造を採用している。カナル型イヤホンでは、ハウジング内の空気の圧を適度に抜くためのポートの装備は、決して珍しいことではない。だが、FD7はその手のポートとは異なる、もっと積極的なセミオープン構造だ。だからこそ、「セミオープンであることがこのイヤホンの特長です!」という点は、デザイン面でも主張されている。
セミとはいえ開放型なので、完全密閉構造と比べて音漏れは大きめ、遮音性は低めとなることは否めず、それを弱点と考える方もいらっしゃるだろう。ただ現在の状況においては、それはさしたる問題ではないと考えるユーザーも、また少なからずなのではないだろうか。
それぞれの考え方、リスニングスタイル次第だが、「音漏れや遮音性が問題になるのは、外で使う場合でしょ?でも外で音楽聴くのは、もう完全ワイヤレスに乗り換えちゃったんだよね。だからハイエンドイヤホンは、うちでじっくり音楽を聴き込むときに本領発揮してくれればOK!」といった方も多いはず。
その他の注目ポイントとしては、FD5と同じく「音道管の交換によるサウンドコントロール機構」と、FABRILOUS社からのライセンス供与による「2.5/3.5/4.4mmプラグ付け替え機構」も引き続き採用する。
音導管は、FD5では2タイプ付属だったところを、こちらでは3タイプに。この手のチューニング機構では、音導管に仕込まれたフィルターによって、音を調整する仕組みのものが多いかと思う。だがこちらのシリーズでは、主に音導管の内径の太さによって、音響を調整するとのことで、径の大きい音導管は空間の広さ、小さい音導管は低域重視、中間はバランス重視となっている。