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ジャパニーズ・ハイエンドの俊英・TAD。ヘッドホンとスピーカー再生の両面から“Evolution”シリーズの真髄に迫る

公開日 2022/03/17 06:30 土方久明
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■「TAD-D1000TX」はこだわりのディスクドライブも特徴

続いて、CDプレーヤーを活用したスピーカー再生についても紹介しよう。SACD/CDプレーヤー「TAD-D1000TX」は、TAD-DA1000TXをベースにSACD/CDドライブを搭載した新世代のディスクプレーヤーだ。パイオニア時代から、同社のディスクプレーヤーは音の良さが大変高く評価されていたが、その伝統と技術を継承する、こちらも注目モデルである。

CDプレーヤー「TAD-D1000TX」(2,310,000円/税込)。基本の回路部はDAコンバーターと共通。なお、ヘッドホンアンプは非搭載となっている

僕もそうだが、CD全盛時代を経験したオーディオファイルはドライブのメカニズムに注目する。しかし現在のCDプレーヤーは、パソコン用のドライブを搭載し数倍速なモデルも多い。そんな中でもTAD-D1000TXは、自社開発の独自SACD/CDメカを搭載することが最大の特徴だろう。サーボノイズを排するため、限りなく等速で読み出しを行う。

スムーズなローディングも心地よいディスクトレイ

さらに、ディスクトレイはアルミ素材から削り出し作成されたブラック仕様で、低振動・高剛性とレーザー光の乱反射の防止を両立し、読み取り精度を上げているという。

2chパワーアンプ「TAD-M1000」は、500W+500W(4Ω)の出力をプレゼンスするクラスD級アンプ。入力から出力段、さらにシャーシ構造面まで左右が完全に独立しており、電源部も電源トランスから整流、平滑、安定化回路の全てが、左右独立。2台のアンプがバランス接続されるBTL(バランスアンプ)方式を採用しつつ、正・負も完全対称である。実質的にはモノラルパワーアンプが1筐体に2台搭載されているようなステレオアンプと言えよう。

2chパワーアンプ「TAD-M1000」(1,540,000円/税込)

さらに本機のコンセプトは、大出力と高効率を徹底して追求していることだ。それを実現するために、たいへん容量の大きいトロイダル電源トランスと電解コンデンサーを備えたアナログ型電源回路と、クラスD出力段を組み合わせている。

足回りにも抜かりがなく、クロモリ鋼のスパイクを特殊鋼で強固に支えた異種素材を組み合わせたインシュレーターや、可動式スパイクベースの搭載により、オーディオラックからの振動を徹底的に押さえ込んでいる。

■ベリリウムを活用したユニットと木材を組み合わせたエンクロージャーが特徴

最後に紹介する“Evolution Two”こと「TAD-E2-WN」は、2.5ウェイバスレフフロア型スピーカー。キャビネット外寸は320W×1,085H×405Dmm、重量は32kgと、堂々としたディメンション。構造もよく考えられており、高剛性の樺合板ブレースと高内部損失のMDF材パネルという特性の違う木材を組み合わせて不要共振を低減する「SILENT エンクロージャー」構造を採用している。

「TAD-E2-WN」(1,628,000円/ペア/税込)

デザインについても、木目柄のサテン調塗装仕上げが施されており、落ち着きと高級感を両立。オーディオルームからインテリアにこだわったリビングまで、幅広い環境になじみそうだ。

「TAD-E2-WN」の端子部。バイワイヤリングにも対応する

2.5ウェイのユニットについてだが、トゥイーターは同社上位モデルの「TAD-E1TX」や「TAD-ME1」に採用された2.5cmベリリウム振動板トゥイーターを、指向性コントロールが可能なウェーブガイドにマウント。高域の限界周波数が60kHzと広大なのもアドバンテージである。

2基搭載されるウーファーについては、アラミド織布コーンと針葉樹パルプ抄紙コーンをラミネートした、新開発のMACC(Multi-layered Aramid Composite Cone)振動板を採用している。

また、ポート内部をホーン形状として中低域のレスポンスを高めた「Bi-Directional ADP システム」によるバスレフポートや、良質な音像定位とサウンドステージ表現を求めた良質な2.5ウェイのフィルターも特徴だ。

また、天面エッジ部がラウンドしたいかにも音の回析が少なそうなフロントバッフルと、タイムアライメントを考えて少し後ろに傾斜したデザインで、TADらしさを主張する。

■フルTADは迫力満点。音像表現とステージ表現に高い能力を発揮する

それにしても、フルTADの風景は迫力満点だ。「どんな音がするのだろうか」と僕は心が高鳴った。スピーカー再生では、先ほど聴いた2曲に加え、SACD/CDプレーヤーTAD-D1000TXを利用する形で、筆者とっておきのSACDタイトル、マッコイ・タイナー「LAND OF GIANTS」(TELARK SACD-63576)を再生したが、こちらも印象が良い。

フルTADのシステムでスピーカー再生の実力もチェック

ひと言でいうと、オーディオ的な再生能力やソースに忠実な帯域バランス、そして質感は従来のTADの個性を残しながら、その枠から脱却したような音楽性の高さがある。オーディオ的/音楽的という分け方をする必要がないほど良質な再生音で、アデルは記録されている音楽の情報を細かなディテールまで聴かせてくれるし、その結果、2本のスピーカー中央には口元の動きが分かる彼女のボーカルがピンポイントに定位する。バックミュージックは広大で、本スピーカーの音像表現とステージ表現の高い能力を聴き取ることができた。

マッコイ・タイナーは、アーティストと自分の距離を近づけてくれるリアルな表現だし、ピアノの生々しさやドラムの力強さも良く聴き取れる。

また、良いなと思ったのは、リアルな音像と奏者の音色的な個性が正確に再現されているなど、スピーカー再生とヘッドホンの音調の方向性が揃っていることだ。つまり、両面で徹底的に音が詰められているのである。



今回はフルTADという環境を実現したが、このシステムの奏でる再生音は、ヘッドホン環境ならびにスピーカー環境の両面で、筆者の期待を大きく上回るものだった。

特に予想以上に良質だったのは、ヘッドホン再生時の音の良さだ。グラドやゼンハイザーなどの高級ヘッドホンと本モデルの組み合わせは、ハイエンドヘッドホンだけが実現できるサウンド世界を聴かせてくれた。

スピーカー再生では、分解能やDレンジへの追従力など完成度の高いサウンドを聴かせてくれ、国産オーディオの未来が明るいことを明示してもらったような体験ができた。

若いユーザーを中心にTADファンが増えていると語る土方氏

最後となるが、最近のTADは従来からのベテランオーディオファイルだけではなく、若手オーディオファンからの注目度も上がっており、僕のTwitterのフォロワーのツイートを見ていると、実際に「いつかはTADの製品を」と、憧れを持つ若手が増えている。

彼らはヘッドホンもスピーカーも十分に楽しみたいと思うアクティブな人が多いが、もし本システムの試聴機をお店で見つけた場合は、そのような若い方にもぜひ聴いてほしい。今回の取材は筆者にとって大満足の試聴となり、製品の企画や開発に携わった多くのスタッフに最大限の賛辞を伝えたい。

(提供:テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ)

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