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PR110周年機の技術を多数投入の中級機

日本のアンプもここまできた。デノン「PMA-1700NE」が“超ハイコスパ”である理由

公開日 2022/06/21 07:00 石原 俊
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海外の高級機に迫る弱音表現。正調ハイエンドな聴き味

まずはレファレンスのディスクプレーヤー、アキュフェーズ「DP-750」とアナログ接続してCDを聴いた。スピーカーはモニターオーディオの「PL-200II」を用いた。

立派な音である。力強い音でもある。前モデルのPMA-1600NEで微かに感じられたエントリー機特有の脆弱性が影を潜め、超高級機とも対等に渡り合える力量のようなものが音に込められている。エネルギーバランスは堂々たるピラミッド型で、低音の押し出しが強い。当たり前のことかもしれないが、周波数レンジ・ダイナミックレンジはともに広く、とくに弱音の出方は海外製の高級機と比べても遜色がない。

とくにデジタル回路とインジケーター回路をともにオフにする「アナログモード2」の使用時の弱音表現はすばらしく、自分が今いったい幾らのアンプを聴いているのか、分からなくなりさえする。日本のアンプ作りもここまできたのか……。同じ日本人として誇らしい限りである。

デジタル回路をオフにする「アナログモード」では、アナログソースの再生品質が向上。インジケーターも切る「アナログモード2」は特筆ものだ

音楽的には楽曲・演奏に介入しない第三者的な表現が支配的だ。エントリークラスのモデルは測定値の至らなさをカバーするべく、リスナーを楽しませるようなフィクションめいた音作りをするケースが多いのだが、客観表現で勝負をかけてきたのは見上げた根性である。

ジャズは、前モデルとはかなり異なる聴き味が得られた。前モデルではスピーカーの前方に音像・音場が展開するトラディショナルな表現だったのに対して、本機ではスピーカーの後方に音像・音場が展開する。昔ながらのジャズ喫茶風サウンドがお好きな方には物足らないかもしれないが、オーディオ的に快適なのは断然こちらの方だ。音像・音場は遠ざかったものの、エネルギー感はこちらのほうが高いとすらいえる。

ヴォーカルも前モデルとは印象が大きく異なった。前モデルは空間表現やS/N感よりも質感表現に重きを置いているようで、女声の色気というかエロティシズムというか、そういう方向性が印象的だったのに対して、本機では左右のスピーカーの中央に程よい実体感を伴った清潔な音像が浮かび上がる、正調ハイエンド的な聴き味が得られた。

もうひとつ、国産のアンプとしては異例なほど英語の発音が聴き取りやすかったことも付記しておきたい。おそらくはボリューム回路を電子式にしたのと、プリ/パワー部のゲイン比が変更されたことが大きく影響しているのだろう。とはいえアクセサリーには素直に反応しそうなので、ヴォーカルの質感などはケーブルの選択である程度好みに近づけられるはずだ。

スピーカー端子はバイワイヤリングにも対応

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