PR評論家・折原一也が魅力に迫る
ヤマハの最上位完全ワイヤレス「TW-E7B」登場! 担当者が語る開発秘話&音質レビュー
大口径ドライバーユニットは「応答性」がポイントに
折原:それでは次に、TW-E7Bの音質設計について聞かせてください。今回TW-E7Bで高音質を実現するために、筐体のアコースティック設計ですとか、ドライバーユニットでも様々な取り組みを行っているということですが、どのようなことを行われたのでしょう。
北澤:では、まずドライバー設計のところのお話をさせていただこうかと思います。「TRUE SOUND」に基づいた上で、筐体/ドライバーどのような製品仕様が必要なのか、という議論をイヤホンチーム内で重ね、各種設計を進めました。
ドライバーユニットにおいては、楽器と声の一音一音がしっかり描き分けされる音色を届けるための「振動板の応答性」がポイントになりました。これを高めることを目的にとして、振動板素材にはPU(ポリウレタン)材を採用しています。
PU材は軽く、応答性の面で非常によい素材ですが、一方で柔らかいという特徴もあります。そこで中高域の音源再現とレスポンスを高めるため、振動板にコーティングを施すことで硬度を上げています。これによって振動板がたわみにくくなり、正しい音色の再生に繋がっております。
また、振動板は大きいほどコントロールが難しくなるので、音楽信号に合わせて振動板を素早く動かせるような大型のボイスコイルを採用しました。
チューニングとしては、先に発売した「TW-E5B」と近いものがあるのですが、大口径ドライバーユニットの採用により、低音が豊かになったという点で進化しています。例えば、バンド系の音楽でいえばバスドラムなどですね。
折原:開発段階でも、いま言われたようなバンド系の曲を聴きながらチューニングを進められたんでしょうか?
北澤:そうですね。一例として、ニルヴァーナの「Drain You」という楽曲、リマスター版のものを聴いて、ギターの音の質感や、全体の楽器隊のリズム感などを確認しました。それ以外にも様々なジャンルの楽曲を再生し、「TRUE SOUND」の要素が十二分に再現されてるのかチェックしています。
オーディオの基本を思い起こさせる筐体設計
折原:筐体の構造についても質問です。特徴のひとつとして「不要な振動や反響の干渉が起きにくい構造」という説明が印象に残っています。どういったものなのか教えていただけますでしょうか。
北澤:まず、ANCのマイクの配置ですね。内側のインマイクに関しては、ドライバーユニットに対して垂直に配置しております。これによって、ドライバーユニットと音導管の間を遮るものを最小限にして、音への影響を抑える構造にしているんです。
さらには筐体のドライバー前面及び背面に、音響用のリーク穴を空けています。このリーク穴を設けることによって空間容積を最適化し、筐体内部の空気を綿密にコントロールすることで、低域や高域の音の干渉を整え、ドライバーユニットが持つ音色を最大限引き出す構造にしています。
折原:このあたりの音響設計は、ユーザーから見るとスペックにも現れない部分だし、ヤマハさんじゃないと作れないノウハウがある構造なのかな、と思います。
北澤:そうですね。ヤマハはオーディオ機器のみならず、楽器の開発も行ってきましたが、そこで培った筐体設計技術がイヤホンにも活かされています。また、この後お話ししますが、TW-E7BにはAVレシーバーで使っている技術なども応用しております。そこはヤマハならではの強みになってるのではないかなと思います。
折原:そう考えると凄いことですよね。ずっとホームオーディオや楽器で開発してきた技術が、こんなに小さくなってもそのまま使えるんだっていうのは感動します。その他に構造的な部分で、ポイントとなる点はありますか?
北澤:装着性の点でも特徴があります。側面のくぼみ部分ですね。このくぼみがどのような機能を果たすのかと言いますと、イヤホンを装着する時に、耳の下の「対珠」部分、ここにできる限りストレス無くフィットさせることができます。
単純な円形構造の筐体では、装着時に耳の複数の点に押し付けるようにして安定させますが、その部分に少し圧力がかかってしまいます。それによってストレスが生じてしまい、だんだん耳が痛くなるケースがあります。それに対してTW-E7Bでは、くぼみ構造によって耳にかかる圧力を減らし、音を長時間楽しんでいただけるようになっています。
折原:実際に着けてみると、耳の特定の部位を狙った形状なんだなというのが明確に分かります。
北澤:そうですね、ピンポイントに装着感を上げることができていると思います。あとは、筐体の楕円形の部分ですね。これは装着した時、耳の中で回転させることで、自分に最もフィットするポジションに調整できるという意図があるんです。楕円形状とくぼみ構造を合わせた2点で装着性がアップしていますので、実際にご体験いただきたいですね。
折原:このハマり具合、だんだん絞っていく感じはネジのようなものですね。狙いもはっきりしています。なんとなくぴったりハマるんじゃなくて、差し込んで軽くクイッと絞ると、ぴったりと収まって落ちなくなるという。
北澤:そうですね。ボリュームノブを回すようなイメージです。
折原:ああ、なるほど。流石といいますか、そういった部分もオーディオ的ですね。
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