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PR評論家・折原一也が魅力に迫る

ヤマハの最上位完全ワイヤレス「TW-E7B」登場! 担当者が語る開発秘話&音質レビュー

公開日 2022/06/30 06:30 折原一也(インタビュー構成:ファイルウェブ編集部)
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ひとりひとりにヤマハ理想の音を届ける「リスニングオプティマイザー」



折原:次は、音の聴こえ方を自動補正する技術「リスニングオプティマイザー」についてお訊きしたいと思います。この技術をなぜヤマハさんが作られたのか、という部分から教えていただければと思うのですが。

北澤:耳の形というのは人それぞれですが、外耳道の長さや太さ、こういった部位が違うことで、音の聴こえ方も千差万別です。ある人にとっては低音がよく聴こえるが、ある人は高音の方がよく聴こえる、または聴こえにくい……といったことが起こります。さらに、耳の形は左右で非対象ですから、同じ人の耳でも左右で聴こえ方が異なります。そのような聴こえ方の違いを最適化できる技術としてリスニングオプティマイザーは開発されました。

ヤマハには「YPAO(Yamaha Parametric Room Acoustic Optimizer)」という、AVレシーバーなどに搭載している機能があります。マイクを使って部屋の音響特性を計測し、それに合わせて音質を補正することで理想的なリスニング環境を作り出すというものですが、このYPAOと同じアプローチがリスニングオプティマイザーに活用されています。

「リスニングオプティマイザー」は、人それぞれに違う耳の特性に合わせた補正をかけ、あらゆる人に「TRUE SOUND」を届けるための機能となる

折原:私もYPAOについてはよく知っていますが、AVレシーバーで音を再生した時に、スピーカーを経由した音が、空間の中で実際にどうやって鳴っているかっていうのは、本来レシーバーでは分からない。けれど、YPAOで測ってしまえば、実際にどんな音が鳴っているかを知った状態でチューニングができるということですよね。

北澤:具体的ににどのような仕組みなのかといいますと、TW-E7Bを装着した人が実際に聴いている音、耳の中で鳴っている音楽信号をインマイクで測定します。そこから、本来の音楽信号との差分を算出して、ギャップを補正するという機能になっています。

折原:テスト用音声を流すという訳ではなく、ふだん聴いているようなコンテンツの音で測定できるんですね。そうか、イヤホンはデジタルの音楽信号を受信して再生しているから、それが本来の音楽信号ということになりますよね。で、音楽信号が実際にイヤホンから出て、耳の中の反響を経た、その音をインマイクで拾って比較していると。

北澤:おっしゃるとおりです。インマイクで測定した音には、耳の中での反射や、音漏れによる減衰など、様々な要因が含まれています。その中から、装着した人固有の耳の伝達特性を割り出して、リファレンスの伝達特性との差分を算出し、補正・最適化することで、その人個人に合わせた音を提供していることになります。

折原:今「リファレンスの伝達特性」とおっしゃいましたけど、ヤマハさんの理想というか、モデルとしている耳の伝達特性があって、それが今回使われているという意味合いでしょうか?

北澤:エンジニアが筐体設計やチューニングによって実現した「TRUE SOUND」と同じ音が聴こえるカーブでデータを作成し、リファレンスにしています。ユーザーさんの耳の中の様々な情報を読み取って、そこに合わせていくので、技術としては非常に高度なものだと思います。

折原:最近、ワイヤレスイヤホンではユーザーの音の聴こえ方に対して音を補正するという機能が徐々に増えています。ですが、「理想的な高音質の聴こえ方」にそこまでフォーカスされてるという点では、ヤマハさんがかなり進んでるんじゃないかなと感じました。一番根本に近いところで補正ができると言えるかもしれない。

折原氏も良く知るヤマハの技術「YPAO」が生かされている

北澤:補正をかけるというと「純粋な音が聴こえないんじゃないの?」と思う方もいるかもしれないのですが、リスニングオプティマイザー機能は「TRUE SOUND」を届けるためのものなので、ぜひ試していただきたいですね。

音質最優先で独自に作り上げた「アドバンスドANC」



折原:次は、「アドバンスドANC」に関して質問です。たんなるANCではなく、“アドバンスド”とついている点が興味深いですね。

北澤:構造的には、先ほど申し上げましたリスニングオプティマイザーと同じインマイクと、大円の外側についているフィードフォワードマイクの2つのマイクを使う格好です。

折原:一般的には、2つのマイクを使ったものを「ハイブリッドANC」などと言いますけど、技術的にはその仲間ということですね。では、ヤマハさんが独自に取り組んだ“アドバンスド”な部分はどこなのでしょうか?

北澤:一般的にインマイクを用いるANCでは、ノイズだけでなく再生音も拾ってしまうことがあります。もしイヤホン本体が再生音をノイズと判断してしまった場合、再生音に対するキャンセル信号が生成されてしまい、音質に悪影響を及ぼす可能性があります。

そこで、独自に開発したアルゴリズムによって、アウトマイクで集音したノイズ信号、そしてインマイクで集音した音楽信号、それぞれを解析し、音質への影響を最小限に抑えるようにしています。

例えば再生音をマイクが拾ってしまった場合、元々の音楽信号と比較して削る/削らないという判別をしています。独自のアルゴリズムを用いることによって、ヤマハなりのANCを実現したというかたちですね。

折原:少し細かいことをお訊きしますが、このアドバンスドANCで使ってるインマイクと、リスニングオプティマイザーで使っているマイクは同じものですよね。リスニングオプティマイザーとノイズキャンセリングの処理は同じアルゴリズム上で動いているのでしょうか?

北澤:いえ、そこのアルゴリズムはそれぞれ違うものです。たしかに使っているマイクと集音するデータ自体は同じではありますが、アルゴリズムは別々に動いています。

折原:なるほど、そうですよね、ちなみにノイズキャンセルの効き具合に関してはどれぐらいの自信をお持ちでしょうか?

北澤:いろいろとフィールドテストを重ねた限り、どのような場所でもしっかりとアーティストの意図した音を楽しんでいただける完成度になっている。例えば飛行機の中で装着した時の“ボーッ”という低音ですね。他にも電車の中や、日常生活の中の騒音と呼ばれてるものに対しては、十分に効果が担保されていると思います。

ヤマハのアプローチとしては「音質を犠牲にしない」というのがまず最優先です。そこの中で音楽を楽しむために、どのぐらいの量を除去すればいいのか、各マイクで測りながら最適化していく、というかたちで動作させています。

次ページ音楽を長く楽しむためにより進化した「リスニングケア(アドバンスド)」

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