【特別企画】新潟・燕三条の高度な加工技術をオーディオに活用
新アナログブランド「セレニティ」始動!マグネシウムの特性に着目、驚きの制振効果を実感
新潟のワンロードという企業が、新たにアナログ系アクセサリーブランド「Serenity(セレニティ)」を始動した。セレニティは静寂を意味する言葉で、最大の特徴は制振素材としてマグネシウムを採用していることにある。第1弾として発売されたターンテーブルシート、スタビライザー、カートリッジスペーサーの3モデルを、福田雅光氏と炭山アキラ氏が試聴した。
■新ブランド「セレニティ」始動!高度なマグネシウム加工技術でオーディオ市場に参入(福田)
新潟県燕三条に、マグネシウムを活用してアナログ関連のアクセサリーを自社開発、販売するメーカーが登場した。ブランド名は「Serenity(セレニティ)」。ワンロードという企業で、本業は金型製造。精密加工技術を得意とする。1953年からの歴史を持ち、航空機、車のピストン、自転車などの部材金型を手がけてきた。
代表の井上正栄氏がアナログアクセサリー製品に興味を持ったのは、還暦を過ぎてからのことである。そもそもオーディオの趣味は、井上社長の個人的なもの。最近のアナログプレーヤー製品の動向を調べ、高度な筐体構造は振動対策のために費やされていることに気づいた。さらに多くの場合、レコード盤の振動対策が不足しているのではないかと考えたのだ。
マグネシウムを用いたターンテーブルシート、スタビライザー、カートリッジスペーサーの開発には、以上のような背景がある。
マグネシウムは研究すると素晴らしい制振効果がある。しかし、加工する工程に危険が伴うことや、メッキが不可能であることなどの特徴があり、いまや加工するところがほとんどない。たとえば円盤の加工にはレーザーを使うが、切削くずが発生すると自然発火の可能性がある。理想を追求するためには、自社で開発するしかない、となったのだ。
■第1弾モデルはターンテーブルシートとスタビライザー、カートリッジスペーサー
完成製品のターンテーブルシート「SRT-1」を叩くと金属の音は発生しない。構造は、2mm厚マグネシウム板2枚の中間に特殊制振樹脂材をサンドイッチする3層ハイブリッド構造、総合厚は6mm。このような例は少ない。
下面のマグネシウムは、プレーヤーのターンテーブルに接触するが、レコード盤側は制振材で下面とは分離されたマグネシウム板で支える構造だ。また、スピンドル部への接触も、制振樹脂で接触する方法をとっており、プレーヤー側と振動は分離する。
同時に開発されたのは、マグネシウムの切削加工で、実につかみやすいくぼみ加工がなされているスタビライザーである。重量は200gであるため扱いやすい。あまり重くしたくないという考えがあった。材質は検討するとやはりマグネシウムがベストであった。
このスタビライザーは、ターンテーブルシートとペアで使うと効果的では、と想像が湧いてくる。考えてみればレコードは自重でシートに接しているだけである。上部からあるウェイトで加重するメリットがあるように思う。
カートリッジスペーサーは、ヘッドシェルとカートリッジの間にはさみ接触物性をコントロールするために使う。ワンロードは無垢のマグネシウム材2mm厚/質量1.33gで開発した。一般にシェルはアルミ材だ。これにマグネシウムを追加する効果は大きいことを発見して製品化した。マグネシウムは硬度が高く曲がらない。曲げようとすると折れてしまう物性がある。カートリッジスペーサーについては塗装すると音の効果はマイナスであったため、無塗装としたという。
■シートとスタビライザーの同時使用に効果あり!全体のサウンドが快活に
テストは常用のレファレンス、エクスクルーシブ「P3a」のプレーヤーを使う。カートリッジはオルトフォンの「MC-ER」。まず、現用のターンテーブルシート(ゴム系)にレコードスタビライザーを採用する効果を計る。
中低音の歯切れが良くなり、鈍さが解消され、中高音では活気のでる切れ味の良さが現れてきた。エネルギーバランスは明るく、解像度がはっきりする。また中音の勢いを増している。ヴォーカルの笠井紀美子『ニュー・バステル』を聴くと、そのスタビライザーの特性がとても効果的である。中高音の粒立ちが改善され、アクセントがはっきりして躍動感から全体のサウンドが快活になる。
今度はスタビライザーを外し、ターンテーブルシートを敷いて聴く。これは変化、効果の大きなシートである。帯域バランスが均質になる。低音から高音までのバランスが良くなり、低音リズムは締まる傾向で、ヴォーカルの音が聴きやすくなる。クセが少なく、音楽の表情が克明になる印象がある。ただ、まだ十分に真価を発揮していないような気がする。
最後にターンテーブルシートとスタビライザーを併用してみよう。これはマグネシウムでレコード盤をサンドイッチするような方法になる。音が静かになった。ボリュームをもっと上げたくなる。濁りくもりが一掃され、中音高音の表現の解像度が高く、音質の透明度も高い。低音のリズム系は引き締まる。
この場合、シートはスタビライザーと同時に使うべきではないかと考えた。より効果的な現象を感じたからである。特に高域の濁りはかなり少なくなる。全体に音が静かになっている。これは魅力である。マグネシウムの効果がよく分かってきた。
■カートリッジスペーサーでは、リズムの切れが良くなり情報が豊かに
カートリッジスペーサーのテストに用いたアームはエクスクルーシブ「P3a」のオプションストレートアームで、シェル部分はアルミだ。カートリッジはデノンの広帯域性能を持つ「DL-S1」を使う。マグネシウム・スペーサーをシェルとカートリッジの間に挟み込んだ。
これは大きな変化といえる。音楽の陰影感が改善され、笠井紀美子『ニュー・バステル』の中低音の躍動感がはっきりしている。ヴォーカルの音像も定位が明確になり、くっきりとする。また、中高音のリズム系の切れが良くなり、サウンドの情報が豊かになっている。そして全体にノイズ感が少なくなっている。アンディ・ナレルの『スロー・モーション』はA面2曲目を聴くが、いつもより低音の締まりがしっかりして躍動感が楽しくなった。
新しいチャレンジが、オーディオに素晴らしい可能性を与える。高い加工技術を要するマグネシウム・アクセサリーを提案したワンロードの意欲に注目した。今後はインシュレーター分野の研究をするようだが、アナログプレーヤーの脚の部分にもマグネシウムの効力を研究して欲しい。
■新ブランド「セレニティ」始動!高度なマグネシウム加工技術でオーディオ市場に参入(福田)
新潟県燕三条に、マグネシウムを活用してアナログ関連のアクセサリーを自社開発、販売するメーカーが登場した。ブランド名は「Serenity(セレニティ)」。ワンロードという企業で、本業は金型製造。精密加工技術を得意とする。1953年からの歴史を持ち、航空機、車のピストン、自転車などの部材金型を手がけてきた。
代表の井上正栄氏がアナログアクセサリー製品に興味を持ったのは、還暦を過ぎてからのことである。そもそもオーディオの趣味は、井上社長の個人的なもの。最近のアナログプレーヤー製品の動向を調べ、高度な筐体構造は振動対策のために費やされていることに気づいた。さらに多くの場合、レコード盤の振動対策が不足しているのではないかと考えたのだ。
マグネシウムを用いたターンテーブルシート、スタビライザー、カートリッジスペーサーの開発には、以上のような背景がある。
マグネシウムは研究すると素晴らしい制振効果がある。しかし、加工する工程に危険が伴うことや、メッキが不可能であることなどの特徴があり、いまや加工するところがほとんどない。たとえば円盤の加工にはレーザーを使うが、切削くずが発生すると自然発火の可能性がある。理想を追求するためには、自社で開発するしかない、となったのだ。
■第1弾モデルはターンテーブルシートとスタビライザー、カートリッジスペーサー
完成製品のターンテーブルシート「SRT-1」を叩くと金属の音は発生しない。構造は、2mm厚マグネシウム板2枚の中間に特殊制振樹脂材をサンドイッチする3層ハイブリッド構造、総合厚は6mm。このような例は少ない。
下面のマグネシウムは、プレーヤーのターンテーブルに接触するが、レコード盤側は制振材で下面とは分離されたマグネシウム板で支える構造だ。また、スピンドル部への接触も、制振樹脂で接触する方法をとっており、プレーヤー側と振動は分離する。
同時に開発されたのは、マグネシウムの切削加工で、実につかみやすいくぼみ加工がなされているスタビライザーである。重量は200gであるため扱いやすい。あまり重くしたくないという考えがあった。材質は検討するとやはりマグネシウムがベストであった。
このスタビライザーは、ターンテーブルシートとペアで使うと効果的では、と想像が湧いてくる。考えてみればレコードは自重でシートに接しているだけである。上部からあるウェイトで加重するメリットがあるように思う。
カートリッジスペーサーは、ヘッドシェルとカートリッジの間にはさみ接触物性をコントロールするために使う。ワンロードは無垢のマグネシウム材2mm厚/質量1.33gで開発した。一般にシェルはアルミ材だ。これにマグネシウムを追加する効果は大きいことを発見して製品化した。マグネシウムは硬度が高く曲がらない。曲げようとすると折れてしまう物性がある。カートリッジスペーサーについては塗装すると音の効果はマイナスであったため、無塗装としたという。
■シートとスタビライザーの同時使用に効果あり!全体のサウンドが快活に
テストは常用のレファレンス、エクスクルーシブ「P3a」のプレーヤーを使う。カートリッジはオルトフォンの「MC-ER」。まず、現用のターンテーブルシート(ゴム系)にレコードスタビライザーを採用する効果を計る。
中低音の歯切れが良くなり、鈍さが解消され、中高音では活気のでる切れ味の良さが現れてきた。エネルギーバランスは明るく、解像度がはっきりする。また中音の勢いを増している。ヴォーカルの笠井紀美子『ニュー・バステル』を聴くと、そのスタビライザーの特性がとても効果的である。中高音の粒立ちが改善され、アクセントがはっきりして躍動感から全体のサウンドが快活になる。
今度はスタビライザーを外し、ターンテーブルシートを敷いて聴く。これは変化、効果の大きなシートである。帯域バランスが均質になる。低音から高音までのバランスが良くなり、低音リズムは締まる傾向で、ヴォーカルの音が聴きやすくなる。クセが少なく、音楽の表情が克明になる印象がある。ただ、まだ十分に真価を発揮していないような気がする。
最後にターンテーブルシートとスタビライザーを併用してみよう。これはマグネシウムでレコード盤をサンドイッチするような方法になる。音が静かになった。ボリュームをもっと上げたくなる。濁りくもりが一掃され、中音高音の表現の解像度が高く、音質の透明度も高い。低音のリズム系は引き締まる。
この場合、シートはスタビライザーと同時に使うべきではないかと考えた。より効果的な現象を感じたからである。特に高域の濁りはかなり少なくなる。全体に音が静かになっている。これは魅力である。マグネシウムの効果がよく分かってきた。
■カートリッジスペーサーでは、リズムの切れが良くなり情報が豊かに
カートリッジスペーサーのテストに用いたアームはエクスクルーシブ「P3a」のオプションストレートアームで、シェル部分はアルミだ。カートリッジはデノンの広帯域性能を持つ「DL-S1」を使う。マグネシウム・スペーサーをシェルとカートリッジの間に挟み込んだ。
これは大きな変化といえる。音楽の陰影感が改善され、笠井紀美子『ニュー・バステル』の中低音の躍動感がはっきりしている。ヴォーカルの音像も定位が明確になり、くっきりとする。また、中高音のリズム系の切れが良くなり、サウンドの情報が豊かになっている。そして全体にノイズ感が少なくなっている。アンディ・ナレルの『スロー・モーション』はA面2曲目を聴くが、いつもより低音の締まりがしっかりして躍動感が楽しくなった。
新しいチャレンジが、オーディオに素晴らしい可能性を与える。高い加工技術を要するマグネシウム・アクセサリーを提案したワンロードの意欲に注目した。今後はインシュレーター分野の研究をするようだが、アナログプレーヤーの脚の部分にもマグネシウムの効力を研究して欲しい。