HOME > レビュー > Nmodeの新1bitプリメインを聴く! “超ハイコスパ”なプリメイン「X-PM5」、“音に圧倒される”「X-PM9」

PRアンプ製造現場である城下工業にも潜入!

Nmodeの新1bitプリメインを聴く! “超ハイコスパ”なプリメイン「X-PM5」、“音に圧倒される”「X-PM9」

公開日 2022/09/06 06:35 土方久明/ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
1bitアンプにこだわるNmodeより発売されたプリメインアンプ「X-PM9」と「X-PM5」は、ファンダメンタルの鈴木 哲氏がサウンドマネージャーとして音質監修を担当したことでも話題となっている。評論家の土方久明氏に本機のサウンドを解説いただくとともに、製造現場である長野県の「城下工業」を訪問。Nmodeのアンプが生まれるまでをレポートしよう。

Nmode プリメインアンプ「X-PM5」(価格:220,000円/税込)

Nmode プリメインアンプ「X-PM9」(価格:440,000円) photo/田代法生

シャープの1bitアンプの技術を受け継いだNmodeに新たな血が加わった(土方)



カメラや時計など、それぞれの趣味ジャンルには“通に好まれるブランド”が存在し、市場を賑わせる。もちろんオーディオもそうだ。大手ブランドが持たないカッティングエッジな性能や機能がマニアを惹きつける。

今回ご紹介する2台のアンプ、「X-PM9」と「X-PM5」は、長年1bitという先進的なアンプ技術を探求してきたNmodeの最新モデル。これらの音質監修を行ったのは、こちらも熱狂的なファンを持つ国産オーディオブランドFundamental(ファンダメンタル)の鈴木 哲さんだ。

7月中旬、僕はファンダメンタルの試聴室を訪れた。僕の周りでは評論家の和田博巳さんがユーザーだったり、先だって購入したスピーカー、パラダイムの輸入元(株)PDNの試聴室でファンダメンタルのアンプが活躍していたりするけれど、実は僕がこの場所に来るのは初めて。

鈴木さんは挨拶も兼ねて自身の経歴を話してくださった。かつて在籍していたNECホームエレクトロニクスでは伝説のA-10シリーズを、フィリップスでは今でもファンのいるCDプレーヤーLHHシリーズを、マランツではこちらも伝説的な存在となるDAコンバーターProject D-1など、鈴木さんが手がけた製品は枚挙にいとまがない。その後ソウルノートを経て、ファンダメンタルを立ち上げた。

Fundamentalの代表であり、直近のNmode製品の音質チューニングにも関わる鈴木 哲氏

鈴木さんといえば、齊藤純示さんとの2人アコースティックギターユニット「Nicogi」の活動でも知られる、現在も第一線のプロミュージシャン。その実績は相当なもの。これは本当にすごいことだと思う。

アコースティックギター2本による音楽表現にこだわるNicogi。左が鈴木 哲さん、右が齊藤純示さん。これまでに3枚のアルバムをリリースしている photo/君嶋寛慶

Nmodeの歴史も確かなものだ。同ブランドを主宰するのは、長年シャープで技術開発を行い、1bitデジタルアンプ開発の中心人物である布村常夫さんだ。斬新なデザインと先進的な増幅回路、そして全帯域がスピードのある音で話題となった「SM-SX100」や「SM-SX200」を覚えていらっしゃる方も多いだろう。シャープ退職後2008年に株式会社リリックを設立し、1bitデジタルアンプの開発を継続している。

音質劣化のボトルネックを可能な限り排除した設計



X-PM9はNmodeトップモデルとなる1bit方式のプリメインアンプ。鈴木さんの手により「シンプルかつストレートな回路/電源」で構成することで、音質劣化のボトルネックを可能な限り排除している。例えば、プリント基板とレイアウトの根本的なブラッシュアップや、音質を最優先とした基準で選んだ高精度パーツの採用が挙げられる。さらにプリ/ポストに加えて、全てのフィルターを鈴木さんが最適化を行っている。

X-PM9はフロントパネル中央にボリュームノブを配置。5つのセレクターボタンは右側に置かれている

また、シャーシ周りにも手が入れられており、シャーシのグラウンドを中心に、様々な回路のグラウンドポイント全てで徹底的なクリーン化と低インピーダンス化を実現した、大変手のこんだ内容だ。最大出力は32W×2(4Ω)、20W×2(8Ω)となっている。

X-PM9の内部。左右対称の内部構成になっている

X-PM9の入力はRCA端子3系統とXLR端子2系統。スピーカー出力端子は1系統。X-PM5同様、クロック入力端子を持つ

X-PM5は、最大出力20W×2(4Ω)、16W×2(8Ω)をプレゼンスする1bit方式のプリメインアンプ。こちらも電源周りのクリーン化と低インピーダンス化を徹底した上で、スピーカーの実駆動力にも注力している。プリアンプ、ポスト部などのフィルターの見直しにより、広帯域における高S/Nを実現した。また、完全に新規設計されたシャーシにも鈴木さんの知見が投入されている。

X-PM5はフロントパネルの右端にボリュームノブを配置。あとはメインスイッチと3つのセレクターボタンというシンプルな構成

設置性の良さも考慮されており、本格的なハイファイ環境からTVラックへの設置と、音楽からビジュアルまで幅広い環境で使用できる。事実、420W×62H×220Dmmのシャーシは特に奥行きがコンパクトに設計されているのが嬉しい。

X-PM5の内部。筐体サイズに比べ大きな電源トランスを搭載している

X-PM5の入力はRCA端子3系統。スピーカー出力端子は1系統。クロック入力端子を備えており、同社の「X-CL3MKII」などのクロックジェネレーターを接続することができる

1bitアンプのスピード感に、ファンダメンタルのダイレクト感とリアリティが加わる



ここから試聴に入りたい。CDの試聴はファンダメンタルの試聴室で、スピーカーにはファンダメンタルの「RM10Z」を使用した。またハイレゾ楽曲ファイルは自宅にX-PM9とX-PM5を持ち込んで、スピーカーにパラダイムの「Persona B」を用いている。

まずはX-PM5を中心に据えたCD再生から開始。音が出た瞬間、予想以上の出音に驚いた。僕がNmodeのアンプに抱いていた全帯域がハイスピードかつ聴感上のダイナミクスが大きい音に加えて、生々しさや音のダイレクト感が付加されているのだ。山下達郎『OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜』では、ヴォーカルのファントム音像的な定位感も秀逸。

自宅環境で聴いたハイレゾファイル、ジョン・ウィリアムズ&ベルリン・フィル『ライヴ・イン・ベルリン』(96kHz/24bit)では、デジタルアンプらしい抑揚表現の追従性に加え、楽器の質感表現も一辺倒にならない。ハッキリ言おう。X-PM5はめちゃくちゃコスパが高い!

そしてX-PM9の音には、さらに圧倒された。CDで聴いたNicogi「イキルチカラ」は、2人のアコースティックギターの掛け合いというシンプルさで、オーディオ的にはチャレンジングな楽曲。録音は最高に良いけれど、アンプの表現力に左右されるのだ。聴いて最初に感じたのは音がリアルだということ。そして空間に反響するアンビエントなどの小レベルの音が消えていない。

僕が個人的にD級アンプの難しさだと感じていた、小レベルの音のニュアンスがX-PM9からはリアルに聴こえてくる。ハイレゾのジョン・ウィリアムズはグレードの差が如実に出る壮大な作品だが、ここでのステージ表現も優れている。

この音は1bitの良さと鈴木さんのチューニングによる相乗効果なのか? と強い興味を持ったが、ファンダメンタルのフルシステム、ラインアンプ「LA10 versionII」とパワーアンプ「MA10V」による音を聴いて納得した。僕が目標としている、音が良いだけではなく、音源に込められたアーティストの熱気や意気込み、聴感上のダイナミクスさが感じ取れるのだ。つまり、アーティストとの距離感が近い。

Fundamentalのプリアンプ「LA10 versionII」(左・1,100,000円/税込)とパワーアンプ「MA10V」(右・1,078,000円/税込)

正直にいえば、2020年に発表されたコラボ第一弾モデル「X-HA3 FT」が発表されたとき、「1bitとアナログアンプを得意とする2社がコラボ?」と懐疑的だった。しかし本試聴で聴いたアンプの音に強いインパクトを感じ、心配は吹き飛んでしまった。LA10 VersionIIとMA10Vから感じたエモーショナルな音の傾向は、X-PM9とX-PM5からも感じられ、1bitアンプのスピード感に加え、ファンダメンタルのアンプが持つダイレクト感とリアリティが付与されている。しかもNmodeのアンプはファンダメンタルのアンプよりも大幅に安いのである。

オーディオの世界は各社/ブランドごとに得意分野が存在する。デジタル回路の設計が得意な会社、反対にアナログ回路の設計が得意な会社、さらに各ブランドが得意な価格レンジもあるだろう。もしその両者がお互いの強みを相互補完できたら、結果は明るいものとなるのは明白なのだ。

次ページNmodeのアンプ製造現場に潜入!

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク