【特別企画】ネジ径とピッチの異なる6モデルをラインナップ
エネルギーが残らず音になる。アンダンテラルゴの脚まわり強化アイテム「スルーホールスパイク」実力検証
アンダンテラルゴの脚まわり強化アイテム「スルーホールスパイク」が大幅強化。ネジ径とピッチの異なる6モデルがラインナップされ、幅広いモデルで使用が可能になったのだ。今回は編集部試聴室のレファレンススピーカーとオーディオラックのスパイク部を交換、その効果を体験してみた。
スパイクベースの「サイレントマウント」はアンダンテラルゴのベストセラーだが、スパイク本体も「スルーホールスパイク」という製品で発売されていた。しかし発売後も長く研究は続けられて、形状も大きく進化。サイズもこれまではM8仕様のみのラインナップだったが、今回仕様と形状の異なる6種類のラインナップが揃い、多くの機器への対応が可能になり、今回本格発売がスタートしたのだ。
材質は試聴により厳選した特殊ステンレス。これを同社独自の形状のネジ型のスパイクに形成し、ナットを取り付けてある。一見ごく当たり前のスパイクに見えるが、ただのネジとは違う細心の配慮が施されている。ネジ部に開いた穴がそれで、だからスルーホール=中空式と呼ばれるのである。
この穴によって鳴きを抑えることが可能だという。しかしそれをどれくらいの太さでどこまでの深さで開けるのか。何個となく試作を重ねて、やっと最終的な形状に辿り着いたそうだ。微細なことのように見えるが、実はそこから大きな違いが生じてくる。例えば下の方にある調整用の横穴まで貫通させるか否かでも、まったく効果が異なるのだという。
サイズ(ネジの径)は4種類で、これで大体の製品に対応できるようだ。またピッチ(1回転でのネジの進み方)も少しずつ異なる。同じサイズでもクアドラスパイア製ラックとJBLスピーカーには、専用のモデルが別途用意されている。
使い方は難しくないが、ひとまず手でネジを仮止めし、付属の棒で高さ調整を行ってナットを締める。六角レンチも付属している。最終的にガタがないことを確認して完了である。
まずスピーカーに使用してみる。取り付けた後でスピーカーに触れてみると、非常にしっかり固定されてびくともしない。この安定度がポイントである。
音は予想外というような変わり方で、ことに低域の力感と重量感は想像以上というほかはない。バロックのテオルボという低音用リュートが、それまでの小さな音からぐっと腰が落ちて線の太いがっしりとした音に変わっている。エネルギーがまるで逃げていないのだろう。
またバロックギターやオルガンなどこれまで弦楽器の陰で小さく鳴っていただけだったのが、くっきりした手触りで明瞭に出てくる。弦楽器などの音色を変質させることはないが、その存在感は圧倒的にリアルで細かな隅々まで彫りが深い。ディテールのエネルギーが漏れずに全て音になっているのがわかる鳴り方である。
ピアノの静かさ、繊細な表現も、弱音のきめ細かな表情の変化が手に取るように鮮やかに聴こえてくる。またタッチの肉質感が厚くなるのも、実体感を高めている。決して厚ぼったく膨らむのではないが、音数が増えて線が豊かになった結果である。
コーラスは声と楽器の質感が生々しくなるとともに、音場全体がリアリズムを深めているのが決定的だ。声のアンサンブルが立体的に聴こえてくるのと、弦楽器や金管楽器の表情が凹凸を増すことで陰影が深まるのだ。
オーケストラは楽器ひとつひとつが実在感を増している。密度が高いため存在感がぼやけないのである。空間が静かだからいっそうそれがよくわかる。そして楽器どうしの位置感も確かで、音楽全体が生きて動いているようなリアリティが強く引き出されて表現を濃密にしている。
ラックのスパイクも換えてみた。CDプレーヤー、プリアンプという前段機器が乗っている。この進化はさらに著しく、バロックでも低域がいっそう表情を色濃くしている。弦楽器やチェンバロもそれぞれが独立して分離がよく、アンサンブルが雄弁だ。弦楽器の表情もますます繊細で多彩になっている。楽器ひとつひとつにピントが合っている感触である。
ピアノはステージがより明確に焦点を絞られて、空間全体が見えるような印象だ。弱音部の余韻がとりわけ豊かで瑞々しく、ホールの中にいるような実感が湧き上がってくる。
コーラスは声の表情が圧倒的に変わる。息遣いひとつひとつまでそこに感じられるような生々しさである。音楽自体が厚くなったようにさえ思える。オーケストラは明らかに音数が増している。楽器ひとつひとつの表情が違うのだ。そしてアンサンブルが有機的になり、音楽自体の生命力が高まる。
全てはエネルギーが残らず音になったということに尽きるのである。
最後は自宅でエラック「BS312」のスタンドのスパイク部を「スルーホールスパイク」に交換してみたが、その変わり方は中途半端なものではない。予想をはるかに越えるレベルで、低域から高域まであらゆる音がくっきりと芯を持っている。
ことにバロックやピアノの低音は別物と言っていいほどで、輪郭とピントが明確そのものだ。このためオーケストラやコーラスも全帯域でスピードがぴったりと揃い、立体的な空間性が鮮やかに描き出されるのである。これこそ本物の音と言う気がする。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・analog vol.78』からの転載です。
独自の中空構造を採用。多様な機材と組み合わせられる
スパイクベースの「サイレントマウント」はアンダンテラルゴのベストセラーだが、スパイク本体も「スルーホールスパイク」という製品で発売されていた。しかし発売後も長く研究は続けられて、形状も大きく進化。サイズもこれまではM8仕様のみのラインナップだったが、今回仕様と形状の異なる6種類のラインナップが揃い、多くの機器への対応が可能になり、今回本格発売がスタートしたのだ。
材質は試聴により厳選した特殊ステンレス。これを同社独自の形状のネジ型のスパイクに形成し、ナットを取り付けてある。一見ごく当たり前のスパイクに見えるが、ただのネジとは違う細心の配慮が施されている。ネジ部に開いた穴がそれで、だからスルーホール=中空式と呼ばれるのである。
この穴によって鳴きを抑えることが可能だという。しかしそれをどれくらいの太さでどこまでの深さで開けるのか。何個となく試作を重ねて、やっと最終的な形状に辿り着いたそうだ。微細なことのように見えるが、実はそこから大きな違いが生じてくる。例えば下の方にある調整用の横穴まで貫通させるか否かでも、まったく効果が異なるのだという。
サイズ(ネジの径)は4種類で、これで大体の製品に対応できるようだ。またピッチ(1回転でのネジの進み方)も少しずつ異なる。同じサイズでもクアドラスパイア製ラックとJBLスピーカーには、専用のモデルが別途用意されている。
使い方は難しくないが、ひとまず手でネジを仮止めし、付属の棒で高さ調整を行ってナットを締める。六角レンチも付属している。最終的にガタがないことを確認して完了である。
スピーカーに装着。リアリティが強く引き出されて表現が濃密に
まずスピーカーに使用してみる。取り付けた後でスピーカーに触れてみると、非常にしっかり固定されてびくともしない。この安定度がポイントである。
音は予想外というような変わり方で、ことに低域の力感と重量感は想像以上というほかはない。バロックのテオルボという低音用リュートが、それまでの小さな音からぐっと腰が落ちて線の太いがっしりとした音に変わっている。エネルギーがまるで逃げていないのだろう。
またバロックギターやオルガンなどこれまで弦楽器の陰で小さく鳴っていただけだったのが、くっきりした手触りで明瞭に出てくる。弦楽器などの音色を変質させることはないが、その存在感は圧倒的にリアルで細かな隅々まで彫りが深い。ディテールのエネルギーが漏れずに全て音になっているのがわかる鳴り方である。
ピアノの静かさ、繊細な表現も、弱音のきめ細かな表情の変化が手に取るように鮮やかに聴こえてくる。またタッチの肉質感が厚くなるのも、実体感を高めている。決して厚ぼったく膨らむのではないが、音数が増えて線が豊かになった結果である。
コーラスは声と楽器の質感が生々しくなるとともに、音場全体がリアリズムを深めているのが決定的だ。声のアンサンブルが立体的に聴こえてくるのと、弦楽器や金管楽器の表情が凹凸を増すことで陰影が深まるのだ。
オーケストラは楽器ひとつひとつが実在感を増している。密度が高いため存在感がぼやけないのである。空間が静かだからいっそうそれがよくわかる。そして楽器どうしの位置感も確かで、音楽全体が生きて動いているようなリアリティが強く引き出されて表現を濃密にしている。
オーディオラックでは音楽自体の生命力が高まる
ラックのスパイクも換えてみた。CDプレーヤー、プリアンプという前段機器が乗っている。この進化はさらに著しく、バロックでも低域がいっそう表情を色濃くしている。弦楽器やチェンバロもそれぞれが独立して分離がよく、アンサンブルが雄弁だ。弦楽器の表情もますます繊細で多彩になっている。楽器ひとつひとつにピントが合っている感触である。
ピアノはステージがより明確に焦点を絞られて、空間全体が見えるような印象だ。弱音部の余韻がとりわけ豊かで瑞々しく、ホールの中にいるような実感が湧き上がってくる。
コーラスは声の表情が圧倒的に変わる。息遣いひとつひとつまでそこに感じられるような生々しさである。音楽自体が厚くなったようにさえ思える。オーケストラは明らかに音数が増している。楽器ひとつひとつの表情が違うのだ。そしてアンサンブルが有機的になり、音楽自体の生命力が高まる。
全てはエネルギーが残らず音になったということに尽きるのである。
自宅スピーカーでも検証。低域から高域までくっきりと芯を持っている
最後は自宅でエラック「BS312」のスタンドのスパイク部を「スルーホールスパイク」に交換してみたが、その変わり方は中途半端なものではない。予想をはるかに越えるレベルで、低域から高域まであらゆる音がくっきりと芯を持っている。
ことにバロックやピアノの低音は別物と言っていいほどで、輪郭とピントが明確そのものだ。このためオーケストラやコーラスも全帯域でスピードがぴったりと揃い、立体的な空間性が鮮やかに描き出されるのである。これこそ本物の音と言う気がする。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・analog vol.78』からの転載です。