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4K/HDR、3Dオーディオの観どころ・聴きどころ

4K UHD BD版『シン・ウルトラマン』、Dolby Vision&Atmosが映える厳選3シーンをチェック!

公開日 2023/04/12 06:40 伊尾喜大祐
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『シン・ウルトラマン』



(C)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ
2022年5月13日の劇場公開から約1年の時を経て、遂に!『シン・ウルトラマン』 が4K Ultra HDブルーレイ(以下、4K UHD BD)で待望のリリース。企画・脚本・総監修を庵野秀明、監督を樋口真嗣が務め、言わずと知れた日本を代表するヒーロー「ウルトラマン」の新解釈での映画化に挑んだ超大作だ。新作邦画の劇映画としては初のDolby Vision採用、さらにDolby Atmosで収録されており、ドルビーシネマ上映版に迫るクオリティでのパッケージ化を果たした。

4枚組の4K UHD BDパッケージは、銀色のアウターケースに本編と特典BD2枚をセットした真紅のデジパックを収納。ウルトラマンをモチーフにしたカラーリングがうれしい。そして4K UHD BDは劇中に登場するゾーフィをイメージさせる金色の独立デジパックに収納されている。ケースに英語でタイトルが刻まれるデザインは『シン・ゴジラ』と同じ仕様で、さらにタイトルの印刷位置も同一だから凝っている。


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113分の映画本編のチャプター総数は39箇所。これは初代「ウルトラマン」の全「39」話に由来するものだろうか。チャプタータイトルには随所にサウンドトラックの曲名も併記されている。さらに特典映像には撮影やVFXの舞台裏に迫るメイキングや、「ウルトラファイト」まさかのリメイク(わからない方は検索!)など、3時間45分ものボリュームが収録されているから恐れ入る。

それでは映画本編のDolby Vision & Atmosの効果がたっぷり味わえる、3つの場面をご紹介しよう。皆さんのホームシアター鑑賞時のガイドになれば幸いだ。それでは再生スタート。「これから2時間、あなたの目はあなたの身体を離れて、この不思議な時間の中に入っていくのです。」

【CH6〜CH13 前史、そしてVSネロンガ戦】



(C)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ
CH6のメインタイトルはテレビ版「ウルトラマン」と同じタイトル画面。デジタル制作だがフィルムの質感が付加されており、文字エッジの微かな滲みや揺れまでも再現されている。CH7では「ウルトラQ」をまさかのリメイク。モノラル音源のメインタイトル曲が、Dolby Atmosミックスで音場に響き渡る。ゴメス復活の地鳴り、ペギラの冷凍ガスで氷河期と化した東京に吹きすさぶ吹雪など、シークエンスごとに凝った音響設計が施されているのも注目だ。

CH8で出現するのは透明怪獣ネロンガ。その巨体はCGだが、4Kの高精細で描かれることで、頭部の質感はFRPの、体躯の部分は着ぐるみスーツの質感を克明に再現してみせる。CH11、赤い光の飛来音が鋭くサラウンドし、地上降着時の衝撃音が音場を揺るがす。そして現れるウルトラマン。土煙の向こうに見える眼光は、ギラギラと電球然としておらず、自然な生命体らしい発光感を描出。

CH12、この一連は日中のバトルだが、陽光を凌ぐ明度で光線が放たれる。ネロンガの角から発射される光線、そしてウルトラマンのスペシウム光線の光は、HDRによって力強い輝度表現に。しかし、ネロンガの角の中でエネルギーが溜まっていく表現や、ウルトラマンの腕にエネルギーが満ちていく光などは、光線自体に比べて輝度が和らげられているのがわかる。

ネロンガの爆発音はフロントからサラウンドへと一気に拡散され、爆風を浴びる感覚を味わえる。 CH13、ネロンガ爆散後にプラズマ化した大気の揺らぎやスパークの表現もリアルだ。飛び去るウルトラマンのシーケンスでは、風音がサラウンドする中で、お馴染みの「キーン」という飛行音がフロント音場に消えていく。

【CH27 VSザラブ戦】



(C)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ
CH27、外星人・ザラブが化けたニセウルトラマンと、「真」のウルトラマンとの戦闘シーン。ウルトラマンの体表のヌメッとした光沢の質感が生々しくも、その筋肉質の巨体が実に精悍だ。戦いの舞台は夜の都市。黒を引き締めながらも暗部諧調は豊かで、高層ビル群の窓の細かな照明も滲みなく繊細に表現する。その光は必要最低限に輝度が調整されており、ウルトラマンとザラブの存在感を際立たせる、HDRならではの画作りを実感できた。

闇を切り裂くウルトラマンのスペシウム光線も、眩いばかりのインパクトだ。なお、本作の撮影にはシネマカメラのほかに、iPhoneやGoProが多用されている。IMAXシネマで観た際は撮影機材による画質の差異が気になったが、4K UHD BDでは120インチで鑑賞しても差異がほとんど気にならないレベルに精細感と色彩感が調整されていた。

Dolby Atmosのサウンドは、中空に放り出された浅見が感じる風切り音が音場の高みでふわりと漂い、その感覚を観客に体感させる音作りだ。白熱するバトルでは、高さを伴って響く格闘音、疾走感のある空中チェイス、そして飛び交う光線音まで、アトモス効果をめいっぱい使ったサウンドを楽しめる。BGMはオリジナルの宮内國郎の音楽を、『新世紀エヴァンゲリオン』の鷺巣詩郎が新たにオーケストラアレンジ。大編成になった分、音の厚みも大いに増している。

【CH35 VSゼットン戦】



(C)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ
最後はCH35からはじまる、宇宙空間での天体制圧用最終兵器・ゼットンとのバトル。映像では宇宙空間の暗部をしっかりと沈みこませたDolby Visionならではのグレーディング。ゼットンを回り込みながら写すカメラワークでは、太陽光のフレアが随所に差し込んでくることで、その巨体感を演出してみせる。

ゼットン本体の構造体も、4Kならではの解像感と質感だ。ウルトラマンが放つスペシウム光線の輝度感も地上戦以上に強い。ゼットンの赤色の熱光線はなめらかなグラデーションと深みが特徴で、光線のスパークや飛び散る火花も、細やかな光の粒子感を表現してみせる。

Dolby Atmosによるサウンドは、ウルトラマンの飛行音がダイナミック。ゼットンからの無数の光弾がウルトラマンを猛攻するシーンは、ひとつひとつの発射音の立ち上がりが鋭くパワフルだ。コーラス、ストリングス、パーカッションが渾然一体となるBGMも、空間全体を立体的に包み込み、Dolby Atmosミックスの醍醐味を感じられるだろう。この緻密な音作りで勝ち目のない戦いの悲劇感が高まっていく。この壮大な物語がいかなる結末を迎えるのか、ぜひ皆さんもホームシアターで目撃してほしい。「ホームシアター……私の好きな言葉です」

[SPEC]
●制作:2022年/日 ●監督:樋口真嗣 ●出演:斎藤 工、長澤まさみ、有岡大貴 他 ●本編映像:113分、スコープ、Dolby Vision ●本編音声:日本語Dolby Atmos、日本語DTS HD-Master Audio 5.1ch 他

伊尾喜大祐
1999年よりDVD制作事業をスタート。凝った仕様のパッケージソフトを多数制作、映画人からの厚い信頼を得る。2006年には映像制作プロダクションであるFILM有限責任事業組合(現・株式会社FILM)の発足にも参加。のべ200タイトル以上のディスクを制作・演出。オーディオビジュアルの執筆活動も行っている。

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