PR開発者であるコルグスタッフによる技術解説も
Live Extremeは「ライブ配信の限界を打ち破るかもしれない」。音楽評論家・小野島大が大友良英×小山田圭吾の貴重ライブに感じた“可能性”
逆にいうと、上記さえ守れていれば、カーネル・ミキサーを通っていても、ビット・パーフェクト再生が可能なのだ。
上記設定方法については、Live ExtremeのWebサイトで詳しい手順が公開されているのでご参照いただきたい。なお、スマートホンではOSやウェブ・ブラウザのサンプルレートを任意のものに変更することができないため、Live ExtremeによるDSD再生は非対応となっている。
DSD配信音声の制作
本公演「Special Live 大友良英+小山田圭吾」は、RITTOR BASEに30名の観客を入れた有観客イベントであった。会場のPAは、羊文学やdip in the poolのPAも担当したNancyこと溝口紘美さんが担当。PA卓は会場常設の96kHz対応のデジタル・コンソール Allen&Heath SQ-5 が使用された。通常は同じ卓で配信ミックスも完成させるか、卓である程度音作りした信号をDANTEで配信ミキサーに送るところだが、今回は世界初の映像付きDSD配信ということで、DSDの原点に立ち返ったアプローチがとられた。
DSDの最大の特徴はアナログに近いことであり、この特徴はPCMを通すことで薄まってしまう。自身もDSDファンであるNancyさんの強い後押しもあり、今回の配信ミックスはアナログ領域で行うこととなった。
配信ミックスを担当したのは、2年前のG-ROKSからのLive Extreme配信でもマスタリングを担当してくれた米津裕二郎さん。2年前は、PA卓でのデジタル・ミックスをアナログのアウトボードで仕上げる「DSDマスタリング」という手法が取られたが、今回はPAとは別に配信用に何本ものマイクを立て、SSL SiXという高級アナログミキサーを2台カスケードし、フルアナログでミックスを行った。SiXの出力段には、Rupert Neve Designs Portico II、Overstayer M-A-S、GML 9500といった高級なアナログ・マスタリング機材が並ぶ。
ミックス信号は、RME ADI-2 PRO FS R でDSDにA/D変換され、RITTOR BASEに常設されたLive Extreme EncoderでDoP化された後、FHD映像とともにeContentの配信サーバーに打ち上げられた。
Live Extreme Encoderには、入力された音声信号をダウンコンバートする機能も備えられているが、当日はこの機能により、44.1kHz/16bitと96kHz/24bitの信号も生成し、同時にアップロードされた。DSD配信は、ネットワーク速度的にも機材的にも再生できない人が少なくないので、主音声はあくまでも44.1kHz/16bitとして誰でもトラブルなく再生できる環境を担保し(それでも一般的なAAC配信よりは断然高音質!)、ハイレゾPCMやDSDは音質を追求するマニア向けの副音声として配信した。
今回の配信は、DSDに魅了され、支えてきたメンバーが集い、細部にまで拘って実現した、歴史的にも内容的にも大変意義深いものとなった。Live Extremeは “extreme” という名を冠した以上、今後も究極のオーディオ配信技術を追求していく予定だ。
(提供:コルグ)