PR開発チームに話を聞いた
NTT独自の“音を閉じ込める技術”で「ながら聴き」に新提案。nwm「MBE001」が未来の暮らしをつくる
ハードウェアだけで「音の閉じ込め」を実現。PSZに惚れ込んだ面々が開発を手がける
もうひとつ驚かされたのが、「スピーカーの外側に音を出さない」効果は、ほとんどハードウェアだけで実現されているということだ。
nwm開発陣にこの点を訊ねると、「PSZヘッドレストスピーカーには、一部ソフトウェアも使っているが、音を消す効果を高めるための補助に過ぎず、あくまでアコースティックな処理で音が消える」とのことだ。実際、パーソナルイヤースピーカーにも同じPSZの技術が使われているが、「100%ハードウェア」であり、ソフトウェアは利用していないという。
訊けば、nwmを展開するNTTソノリティは大半が転職組だという。プロダクトグループ部長の長谷川潤氏によれば、「NTTグループの研究成果の展示会『NTT R&Dフォーラム』でPSZに衝撃を受けて、これだ、と。それから事業を立ち上げることになり、私がプロジェクトマネージャーとして技術を紹介し、イヤホン開発者やデザイナーなど現在のチームメンバーが集まった」というから、全員がPSZに「惚れて」集まったようなもの。
PSZという技術が世に出てからわずか3年、実際に製品として販売が始まっているのだから、彼らの熱意たるや推して知るべし。PSZはそれだけクリエイティビティを掻き立てられる、革新的な音響技術なのだ。
装着性とデザインを追求した完全ワイヤレスタイプが登場!
現在発売されているパーソナルイヤースピーカーは、完全ワイヤレス「nwm MBE001」と、有線タイプの「nwm MWE001」の2モデルだ。どちらもダイナミック型ドライバーを搭載している。振動板の大きさは直径12mm。ワイヤレスと有線タイプを比較してみると、スピーカーユニットの外見はよく似ているが、実際に「ユニットは完全に同一」だという。ワイヤレスと有線の違いは、通信ユニットにアンプ、バッテリーの有無くらいのものだ。
つまり、彼らが取り組んでいたのはPSZを実現する小型スピーカーユニットということになるが、現在の形に至るまでの道のりは苦難の連続だったらしい。
一般的にスピーカーはフロント側とリア側を別の箱にするものだが、PSZでは音を閉じ込めておくはずの後ろ側の箱を外し、前方へ回り込ませ(正相と逆相をぶつけて)消す、という流れになる。「開発プロジェクトが始動した2021年当時は構造が安定せず、ドライバーユニットは現在よりだいぶ大きかった」そうで、かつては直径16mmの振動板を使っていたのだという。
イヤホン、特にダイナミック型ドライバーを使うモデルにとって、ドライバー径は音質を左右する重要なポイントでもある。ドライバーの大きい・小さいは「音を消す」効果に関係があるのか訊ねると、「大きく影響する。径の大きいほうが人の耳に届く音は大きくなるが、後ろから出て前方へ回り込ませる音の経路長が変わり、時間差が生じるなど、音を消しにくくなる」のだそう。φ12mmというサイズは、音圧を稼げて低音も出るうえに音もよく消え、しかも耳の近くに浮いていてもジャマにならない絶妙な大きさなのだ。
しっかり音を消すためには、デザインも重要だという。たとえば、完全ワイヤレスモデル「nwm MBE001」の受信ユニット部は、上から見ると三角形になっているが、「この形状だから耳の裏側のスペースにうまく収まる」とのこと。耳の上に軽く乗るイヤーハンガーの部分も、素材や角度など、さまざまな試行錯誤の末に現在のかたちに落ち着いたそうで、人種や性別の違いにさほど影響されずに安定して、ドライバーユニットが耳近くに留まるのだという。
ボディカラーもよく見れば完全な黒ではなく、やや茶色がかっている。プロダクトデザインを手がけた竹内慎太郎氏によれば、「本音をいえばもっとたくさんの色を用意したかった」と前置きしつつ、どの髪の色や服装にもあうユニバーサルな色調を意識したと説明。なるほど、世界中に届けたい(the New Wave Maker)というブランド名の由来とも合致する。細部までこだわり抜くところが、彼らの流儀なのだ。
試行錯誤を重ねて装着性にこだわり抜いた
PSZをワイヤレスで実装することは、開発の初期段階から構想にあった。音と音をぶつけて打ち消す仕組みであるため、音量を稼ぐためには、一般的なワイヤレスイヤホンよりも大きな電力やドライバーサイズが必要になる。また、耳の最適な位置にスピーカーを固定する必要があり、様々な形状や素材が検討されたという。最終的には12mmダイナミック型ドライバー、エラストマー素材のイヤーハンガーなどが採用された。
左が「nwm MBE001」のスピーカー部、右が外側のハウジングをパカっと開けたところ。もうひとつ音漏れを低減する特殊な開口部を持ったスピーカー部が現れる。詳細は企業秘密だが、このアコースティック的な工夫だけで、たしかに耳元だけに小さな音のカプセルができあがるのだ。とっても不思議!
次ページ開放感のあるサウンド。音漏れや耳元の違和感も少なく使いやすい