PRUPnPサーバー/ネットワークトランスポートで前旗艦機と聴き比べ!
音質・機能ともに衝撃の進化、第二世代fidata・AS2の魅力を徹底試聴。Roonサーバーの音質もチェック
AS2の音質進化をチェック -UPnPサーバー/トランスポート/Roonサーバーの3つの観点
ここまでのアップデートを重ねた結果、「HFAS2-X40」は132万円(税込)というプライスタグが付けられている。前世代モデルのフラグシップであった「HFAS1-XS20」(70万円強)のおおよそ倍の価格は、メーカー側が「さらに上のグレード」と設定している証であり自信を感じるが、果たしてこの価格に見合う音質のアップデートがなされているのか、多くのリスナーがもっとも気になる点ではないだろうかと思う。僕自身もその点を厳しい視点で確かめるべく、試聴に挑んだ。
試聴は自宅2Fの試聴室にて。アンプはCHORDのモノラルパワーアンプ「Ultima 3」、スピーカーはパラダイムの「Persona B」という僕のリファレンスシステムである。ここでは、以下の3つのパターンで聴き比べを行うことにした(なお、記載の煩雑さを避けるために、ここからは前フラグシップ機「HFAS1-XS20」は「XS20」、第二世代最新モデル「HFAS2-X40」については「AS2」と記載する)。
(1)UPnPサーバーとしての実力をチェック
エソテリック「N-01XD」をネットワークプレーヤーとして組み合わせ
「HFAS1-XS20」(XS20)と「HFAS2-X40」(AS2)を比較
(2)ネットワークトランスポートとしての実力をチェック
エソテリック「N-01XD」をUSB-DACとして組み合わせ
「HFAS1-XS20」(XS20)と「HFAS2-X40」(AS2)を比較
(3)Roonサーバーとしての実力をチェック
エソテリックの「N-01XD」をRoon Readyとして組み合わせ
PCにインストールしたRoonサーバーと「HFAS2-X40」(AS2)のRoonサーバーの比較
なお、今回エソテリックの「N-01XD」を使用したのは、価格バランスが取れていることに加え、ネットワークプレーヤー、USB-DAC、Roon Readyとすべての機能を備えているため、fidataの新旧世代の聴き比べとしてふさわしいモデルと考えたからである。
試聴ソースは、女性ジャズボーカルにアデルのアルバム『30』より「To Be Loved」、クラシックはジョン・ウィリアムズの『ライヴ・イン・ウィーン』、洋楽ポップスにチャーリー・プースのアルバム『チャーリー』を使用する。
試聴に入る前に、ひとつ大きな発見があった。パソコンから3曲のファイルを転送したのだが、AS2は転送スピードがAS1に比べて圧倒的に早い。まさにあっという間。かつては大容量の音源コピーにはそれなりの時間がかかったことを考えると、これだけでも最新世代の恩恵を大いに感じられる。
(1)UPnPサーバーとしての実力をチェック
まず(1)XS20とAS2との比較結果だが、予想以上の音質的差異があった。聴感上のS/N、分解能、高音域から低音域のfレンジまで、言い出したらキリがないほど、あまりにも違う。帯域バランスはより自然になり、高分解能によりハイレゾソースに含まれる微細な音を掬い上げる。アデルはヴォーカルの輪郭が明瞭になり、ピアノ、ベース表現など楽器が本来持っている質感や表現力が根本的に向上している。ジョン・ウィリアムズは、弦楽器の芯のしっかりとしたボディ感を表現し、弦楽器の位置関係や録音会場の音響条件などがより明瞭に再現される。AS2、すごい。
正直に言えばXS20は僕の長年のリファレンスサーバーであり、その音質クオリティにはずっと信頼を置いてきた。サーバーではそこまで音質は変わらないのではないか、と懸念していたところもあった。だからこそ、AS2はまだまだデジタル面での音質対策にはやるべきことがあったのだ、という新鮮な驚きをもたらしてくれた。
(2)ネットワークトランスポートとしての実力をチェック
続いて、(2)デジタル出力用のトランスポートとしてXS20とAS2を比較した。こちらはN-01XDとUSBケーブルで接続している。ここでも予想以上、というより思わず「XS20の所有者としては困ったなー」とメモに残してしまったほどの違いがあった。
XS20単体で聴けば決して悪くない。しかし、この違いは(1)のサーバーとして使用したケースよりも大きく、AS2ではS/N感や分解能が確実に上昇し、例えばアデルのヴォーカルは生々しさと浸透感が増して、ディテールの滲みがなくなるので、アーティストとリスナーの距離感さえ縮めてくる。
チャーリー・プースでは特に低域の分解能の差が聴き取れた。低域の迫力だけいえばXS20にも分があるが、しかしAS2はドラムスとベースのリアリティが別の次元にあると判断できる。あまり派手に書きたくないし、XS20使用者としては心より悔しくなるが、根本的に「分解能」と「ノイズフロア」の2点においてAS2が圧勝した。
もともとfidataが誕生したときには、あくまでオーディオサーバーとしての使用に主眼が置かれており、トランスポート機能(USBによるデジタル出力)はあとから追加されたものだ。だが、第二世代では、初めからトランスポート機能ありきで設計されている。USBまわりの音質対策が十全になされていることが、音質向上の差として表れたのかもしれない。
(3)Roonサーバーとしての実力をチェック
そして最後に(3)Roonサーバーとしての実力をチェックする。比較対象としたのは筆者所有のサーバーで、N-01XDをRoon Readyとして再生を行なった。
まず良いなと思ったのは、AS2は、通常のネットワーク再生(UPnP/OpenHome)におけるサーバーとしての活用と、Roonサーバーとしての活用で一切の切り替えが必要ないこと。使用するアプリは前者ならばfidata Music App、後者ならばRoonという違いはあるが、アプリを立ち上げればそのままサーバーが表示される。もちろん入っている音源のデータもそのままだ。
これはfidataのOS上に、仮想OSとしてRoon Coreを載せることができたから。サーバーの設定を切り替える必要もなく、保存された音源にはすべてそのままアクセスできる。当たり前のことのようにも思えるが、こういったユーザビリティの高さは、fidataブランドが一貫して追求してきたものだ。
そして気になる音質差については、これも素直に書かなくてはいけないだろう。オーディオ的な表現をするならばS/N、Dレンジ、fレンジ、音像表現など全領域で筆者所有のRoonサーバーを凌駕している。しかもわずかな差ではなく、パッと聴いて音の違いがわかるほどの違いだ。
オーディオファイルのリファレンスとして知られる、ノラ・ジョーンズの『Come Away with Me』(リマスター版)を例に比較すると、ピアノ、ベースなどの楽器の弱音と強音の描き方がより明瞭に伝わるようになる。これは音の実体感が増した結果で、ヴォーカルやベースなどの中域から低域にかけてのグラデーションの描き分けがより精密な表現になっている。
Roonはストリーミングサービスとの連携も魅力の一つだが、手元のローカルファイルが充実すればするほど、音楽リスニングがリッチになっていくという大きな特徴を持つ。AS2は4TBの記憶媒体を搭載しており、先述の通り音源のコピーは爆速で、CDリッピングにももちろん対応。これだけスムーズならば、サーバーに音楽を取り込んでいく作業も楽しくてならない。つねに音楽ファンに寄り添ってくれるfidataだからこその細かい配慮は、本当に嬉しい。
いかがだったろうか? 最新のAS2は機能も盛り沢山なモデルで、語りたいことがいくらでも出てきてしまう末恐ろしいモデルである。だが、ひとつ確信を持って言えることは、AS2は単なるアップデートモデルではなく、2023年におけるネットワークオーディオを探求するためのマストアイテムである、ということである。音質的な見どころも多く、音色的にはよりニュートラルかつ高分解能な方向に進んでおり、組み合わせるプレーヤーやDACの美点をしっかり引き出してくれる。
結論として、自宅のシステムでAS2を使用した時に奏でられる再生音は、筆者の期待を大きく上回るものがあった。本機を実際に使用してみれば、音源が持つ情報や空間再現能力に対する再現性を根本的に上げてくれることに誰もが驚くはずだ。
正直にいえば、最初はAS1より大幅に増した価格に疑問もあった。しかしその疑問は、回路設計やパーツ選定へのこだわり、その結果生まれた音質向上を聴いてしまえば、すっかり消え去ってしまった。
Qobuzも日本正式上陸が近いという噂も流れる今、fidataのAS2はネットワークオーディオの最先端を極める切り札と言えるプロダクトかもしれない。充実したローカルファイル再生も魅力で、1台の機材でここまで広範囲に使いこなせる製品は数少ない。SFPポートの実力チェックや電源の強化など、まだまだ試したいことがたくさんある。今回はその完成度の高さにおおいに感心した取材となり、僕も今年中に、本機を導入する決意を固めた次第だ。
(提供:アイ・オー・データ機器)