PRストリーミングから映像ソフト、CDまで幅広く楽しめる
ヤマハのオーディオ技術最前線。ネットワークレシーバー R-N2000A/R-N1000A/R-N800A/R-N600A 4機種の音質を徹底聴き比べ!
R-N600A:良好なハイファイ音声のハイCPモデル。配信もCDも楽しめる
R-Nシリーズ全4機種が音元出版試聴室で一堂に介した。ベーシックなN600Aから試聴してみよう。税込8.8万円のハイCPレシーバーで4機種の殿(しんがり)として10月から出荷開始し、すでに店頭に並んでいる。N800A/N1000AよりN2000Aに顔付きが近い。出力メーターの部分がN600Aは入力情報のインフォメーションになるが、FL管のドット表示なので日本語表記はできないのが惜しい。
HDMI ARCはないが、N1000A以上との比較の意味でBlu-rayディスクを再生して音声を聴いてみよう。テレビ経由で光接続、ソフトはボブ・ジェームス・トリオの『フィール・ライク・メイキング・ライヴ』。音声はドルビーアトモス→PCMに変換している。
Bowers&Wilkins「803 D4」の利もあるが、トリオの定位の精度が高く、S/Nが高くシンバルの散乱やベースの胴鳴りも豊か。ドラムソロの切れ味も良好で、ふくらみのある音場の良好なハイファイ音声。次に、音楽映画『エルヴィス』(Blu-ray)。S/Nが高く声が歪みなく美しい。
続いて、音楽ソフトをネットワークとCDの両方で聴いてみよう。発売されたばかりのThe Beatles『1967-1970』(いわゆる“青盤”)。CDはアキュフェーズ「DP-750」のアナログ/デジタル出力、やはりアナログに部があった。配信はAmazon Music(FLAC 96kHz/24bit)。「ナウ・アンド・ゼン」はCDと配信でミックスが違うようだが、くっきり浮かび上がるボーカルの生々しい質感で配信に軍配。CDとストリーミングの音質差を楽しむという新しいリスニングスタイルがN600Aの魅力。
R-N800A:ワイドレンジな再生能力を聴かせる。YPAOの効果も良好
N800Aはブラックとシルバーの両方をラインアップするが、今回はシンプルなブラックフェースを聴いた。前面下部の有機ELが再生情報を日本語表示する。本機からYPAO搭載、部屋の初期反射を測定し補正することができる。HDMI ARCを搭載しないが、『ボブ・ジェームス』のBlu-rayソフトをテレビ経由でデジタル光出力を使い本機に入力してみよう。
ピュアダイレクトを選択すると、ピアノの歪みが少なくワイドレンジな再生。低音がずっしり沈む一方、よく解れた落ち着いた音場。YPAOのオンオフの違いもチェックしよう。広がり感豊かなナチュラルサラウンドで、本機のユーザーにとってYPAOは必須かもしれない。
CDとストリーミングの比較だが、まずCDアナログ入力でThe Beatles『1966-1970』を聴いてみよう。「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」はYPAOオンで音場の密度が増し、楽音と効果音の一体感が出る。「ペニー・レイン」はオンでベースを始めとした低音楽器の存在感が増す。
CDの「ナウ・アンド・ゼン」は現代版ウォール・オブ・サウンド(フィル・スペクターの呪い?)といいたいくらい巧緻をこらしたダビングがやや重苦しい。一方Amazon Musicは別ミックスと思しくジョン・レノンの声が生々しく楽器に解像感があって聴き疲れしない。ストリーミングに軍配。ストリーミング vs CDの興味プラスYPAO音場補正の威力、にN800Aの魅力。
R-N1000A:HDMI搭載により、さらにスケール感やレンジ感に勝る
N1000Aは外観こそN800Aと変わらないが、中身はかなり差がある。EIトランスやDACのES9080Q始め主要部品は同じだが、大きな差は振動対策で1mm厚の鉄製防振板を加えたダブルシャーシを採用、高音質ケミカルコンデンサやアムトランス社製高音質抵抗等パーツの投入やチューニングの差で聴感上のS/Nで大分上を行く。5万円の価格差は物量が率直に反映された帰結。
さて、本機からHDMI ARCを搭載する。『エルヴィス』は音場が大きく濃く、嬌声始め効果音が冴え、迫力に富む。ボブ・ジェームス・トリオ『フィール・ライク・メイキング・ライヴ』は、テレビの音声回路のスペックに制限され、リニアPCM96kHzステレオ音声では出音しないので、ドルビーアトモス音声を選択して聴いた。2chステレオにコンバートされてもHDMIはスケール感、レンジ感でここまでのデジタル音声入力に勝る。さらにYPAOオンで低音楽器(ベース、ドラムス)の輪郭の滲みが減ってタイトに引き締まる。
R-N2000A:音場のすみずみまで浸透力を感じさせるフラグシップ機
最上位機N2000A。DACは違うが(ES9026PRO)、デジタル部は下位機とめぼしい差がない。N1000Aとの差はひとえにアンプの構成である。両機の質量を比べるとN2000Aが実に10kgも重い。同社ハイファイプリメインと同等のMOS-FET出力フローティング&バランスパワーアンプを搭載、シャーシやフット(真鍮削り出し高剛性フット)まで妥協のない設計。
スピーカーの支配力が違う。ずっしり沈んだピラミッドバランスの再生音。音場のすみずみまで浸透力があって、Blu-rayの『エルヴィス』はステレオでも自然なサラウンド感が得られる。N1000Aまで鮮鋭感を感じさせたのに対し、本機は音に落ち着きと厚み、きめ細やかさ、静けさがある。
ボブ・ジェームスはピアノに芯と歪みのない透明感。これがヤマハの音である。S/Nがよく小音量再生でもバランスがいい。YPAOオンでさらに低音の滲みが消える。Amazon MusicのThe Beatles『1967-1970』の「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」、「ペニー・レイン」はアナログレコードの肌触りと密度がある。デジタルを研ぎ澄ました結果、私が50年以上親しんできたビートルズの音楽へと回帰したのである。
ヤマハのR-Nシリーズ4機種は、ネットワーク機能は共通、差異といえばHDMI ARC始めとしたリスニングの拡張性とあとはアンプの品位である。
何よりN1000AのHDMI ARCの想像以上の音質に感心した。ヤマハ談では、国内テレビメーカーは、HDMI ARCの位相ずれが起きないように注力していて、どこも接続の音質が良好だそうだ。アンプの基礎部分にコストを傾注したことによる音質の伸びしろを確認できた。N800A/N600Aは、ストリーミングとCDの両刀使いの新しい楽しみがある。
最上位N2000Aは別格と考えていい。アナログのメーター、ゆったりと落ち着いた再生音、感性と情に訴えるオーディオである。
こうして見ていくと、シリーズを牽引するのは、機能と音質、価格のバランスに優れるユーティリティープレーヤーN1000Aである。ホームオーディオのコアとして死角なし。変化の時代を象徴する世界が待望した一台といっていい。
(提供:ヤマハミュージックジャパン)