【特別企画】「音楽を愛する方々に聴いて欲しい」
オーディオ・ノート「G-700」「GE-7」レビュー。毅然とした音楽性と高貴な味わいに触れる
オーディオ・ノートの“Gシリーズ”に新たなラインアップが加わった。プリアンプの「G-700」とフォノイコライザーの「GE-7」は、高度な再現性と有機的な音質、この2つの要素を併せ持ったシステムとして完成された。オーディオ・ノートの世界観を見事に具現化した2筐体式の実力機の魅力を石原 俊氏が体験する。
超高級真空管アンプメーカーのオーディオ・ノートがミドルクラスのラインプリアンプ「G-700」と、同じくミドルクラスのフォノイコライザー「GE-7」をリリースした。
ラインプリアンプの分野において、これまで同社は最上級モデルで電源別筐体の「G-1000」と、同社としてはエントリーの位置付けとなる一筐体の「G-70」をラインアップしていた。電源部と本体が同サイズのG-1000はハイエンドモデルとして限られたオーディオファンに向けられたもので、さりとてエントリー機では物足りないというワールドワイドな市場の要請に応じてG-700は企画されたものと推測される。
フォノイコライザーでも事情は同じである。G-1000と同じ構成の筐体を与えられた最上級機の「GE-10」はハイエンドモデルであり、エントリー版で一筐体の「GE-1」よりもさらに本格的なモデルが欲しいという世界のマーケットの声に応えたのがGE-7ということになる。
両モデルとも電源部別の二筐体構成だが、電源部は本体の半分ほどのサイズで、本体が比較的コンパクトであることから、オーディオラックに並べてセッティングしやすい。
ラインプリアンプの「G-700」の使用真空管は整流回路が「6CA4」、信号回路が「6072」×4。新設計の大容量電源トランスは試聴を重ねたうえでの整振処理が施されている。電源部の筐体は小型化されたものの、フラグシップ機のG-1000と同じシャント型ヒーター電源回路が採用されている。
ラインアンプ部は一体型のモジュールだ。プリント基板は一切使われておらず、ため息が出るほど美しい手配線が施されており、アクロバティックな技によって信号経路が最短化されている。パーツは恐ろしく凝ったものだ。自社製の銀箔コンデンサ。オリジナル線材のSSW(シルク・シルバー・ワイヤー)。ジルコニア真空管ソケット。真空管式大出力パワーアンプKagura2の開発で得られた知見に基づく銀パラジウムメッキRCA端子等々……。
凝ったパーツの最たるものがオリジナルのアッテネーターユニットだ。可変式抵抗ではもちろんない。50接点のロータリースイッチに世界で最も信頼性が高いといわれるMELF型抵抗をマウントし、これを銅製のケースに収めたものである。
なお、本機はソリッドステート式パワーアンプとの接続も考慮し、出力インピーダンスを400Ωにするとともに、パワーアンプ側が暴走しないようカットオフ周波数を18.5Hzとしている。
MM対応フォノイコライザーGE-7の使用真空管はG-700と同様で整流回路が「6CA4」、信号回路が「6072」×4。これに心臓部に相当するフィルター回路の「ECC803S」×2が加わる。フィルター回路はトップモデルのGE-10がCR型なのに対して、本機のそれはGE-1と同じNF型だ。
ユニット化されたフィルター回路の配線はG-700のライン回路と同様に極めて美しく、信号経路が最短化されている。ライン回路はG-700と同様のものが起用されているようだ。パーツ類もG-700と同じグレードのものが奢られている。
まずはレファレンスシステムにG-700を組み込んでCDを聴いた。一聴、アキュフェーズのプリアンプとはエネルギーバランスが異なることに気づいた。アキュフェーズがすらりとした摩天楼型であるのに対してG-700は堂々たるピラミッド型。バス声部の支えがしっかりとしているので音楽が立体的に聴こえる。
真空管式機らしいオレンジ色系の温かみのようなものは希薄で、むしろアイスブルーを思わせる寒色系の聴き味が支配的だ。これは銀を多用した線材や特殊なメッキを施した真空管ソケットや端子類が影響しているのもさることながら、設計と製造が巧みであることも大きい。古来、名人の作った真空管アンプの音は寒色系と相場が決まっているのである。
加えて、ソリッドステート機とは一味違ったスピード感がある。これは真空中を電子が飛ぶ真空管式の超高級機だけがもつ高貴な味わいだ。聴感上のSN比や音場の広さや音像の清潔さは比較したプリアンプに優るとも劣らない。音楽的には真空管式機には珍しい客観型で、楽曲・演奏に媚びず、毅然たる風情の音楽を奏でる。
ここでソースをLPに変更し、GE-7でイコライゼーションを施した。本機はMM対応なので、同社の昇圧トランス「SFz」を介してプレーヤーと接続した。カートリッジはマイソニックのMCカートリッジ「Hyper Eminent」を用いた。
基本的にはレファレンスシステムにG-700を組み込んだ時と同じ傾向の音である。しかしながらオーディオ・ノートならではの聴き味はより深化しており、ピラミッド的なエネルギーバランスはより強調され、音色はより寒色系に振れており、スピード感はさらに上昇している。音楽的には毅然とした表情が深まるとともに、LPらしい心の琴線に触れるような表現も聴くことができた。
ジャンル別の印象を記す余裕がなくなってしまったが、何を聴いてもいいことは責任をもって保障しよう。ソリッドステート機との組み合わせもいける両モデルの登場を喜びたい。
弊社のミドルクラスプリアンプとして熟慮した回路構成により最高クラスのスペックを達成し、エントリー機G-70の濃厚で熟成された深みのある音色を持ちつつ、フラグシップ機G-1000のように緻密かつ広大な音場、描写力を併せ持ったプリアンプを目標としました。
ヴォーカルを中心に様々なジャンルの音楽の試聴を繰り返し行い、インストルメンタルを聴いても楽器が歌っているかのような生命感と情感表現力を備えた音質を追求しました。また他社製品やトランジスタパワーアンプと組み合わせた場合の親和性も考慮し、入念なサウンドデザインを施しました。ぜひ音楽を愛する方々に聴いて頂きたいと思います。
(提供:オーディオ・ノート)
本記事は『季刊・analog vol.82』からの転載です
二筐体構成の中核モデル。世界のマーケットの声に応えて誕生
超高級真空管アンプメーカーのオーディオ・ノートがミドルクラスのラインプリアンプ「G-700」と、同じくミドルクラスのフォノイコライザー「GE-7」をリリースした。
ラインプリアンプの分野において、これまで同社は最上級モデルで電源別筐体の「G-1000」と、同社としてはエントリーの位置付けとなる一筐体の「G-70」をラインアップしていた。電源部と本体が同サイズのG-1000はハイエンドモデルとして限られたオーディオファンに向けられたもので、さりとてエントリー機では物足りないというワールドワイドな市場の要請に応じてG-700は企画されたものと推測される。
フォノイコライザーでも事情は同じである。G-1000と同じ構成の筐体を与えられた最上級機の「GE-10」はハイエンドモデルであり、エントリー版で一筐体の「GE-1」よりもさらに本格的なモデルが欲しいという世界のマーケットの声に応えたのがGE-7ということになる。
両モデルとも電源部別の二筐体構成だが、電源部は本体の半分ほどのサイズで、本体が比較的コンパクトであることから、オーディオラックに並べてセッティングしやすい。
独自のアッテネーターユニットと新設計の大容量トランス
ラインプリアンプの「G-700」の使用真空管は整流回路が「6CA4」、信号回路が「6072」×4。新設計の大容量電源トランスは試聴を重ねたうえでの整振処理が施されている。電源部の筐体は小型化されたものの、フラグシップ機のG-1000と同じシャント型ヒーター電源回路が採用されている。
ラインアンプ部は一体型のモジュールだ。プリント基板は一切使われておらず、ため息が出るほど美しい手配線が施されており、アクロバティックな技によって信号経路が最短化されている。パーツは恐ろしく凝ったものだ。自社製の銀箔コンデンサ。オリジナル線材のSSW(シルク・シルバー・ワイヤー)。ジルコニア真空管ソケット。真空管式大出力パワーアンプKagura2の開発で得られた知見に基づく銀パラジウムメッキRCA端子等々……。
凝ったパーツの最たるものがオリジナルのアッテネーターユニットだ。可変式抵抗ではもちろんない。50接点のロータリースイッチに世界で最も信頼性が高いといわれるMELF型抵抗をマウントし、これを銅製のケースに収めたものである。
なお、本機はソリッドステート式パワーアンプとの接続も考慮し、出力インピーダンスを400Ωにするとともに、パワーアンプ側が暴走しないようカットオフ周波数を18.5Hzとしている。
NF型フィルター回路を採用、美しく最短化された配線
MM対応フォノイコライザーGE-7の使用真空管はG-700と同様で整流回路が「6CA4」、信号回路が「6072」×4。これに心臓部に相当するフィルター回路の「ECC803S」×2が加わる。フィルター回路はトップモデルのGE-10がCR型なのに対して、本機のそれはGE-1と同じNF型だ。
ユニット化されたフィルター回路の配線はG-700のライン回路と同様に極めて美しく、信号経路が最短化されている。ライン回路はG-700と同様のものが起用されているようだ。パーツ類もG-700と同じグレードのものが奢られている。
立体的な音楽再生で、高貴な味わいとスピード感を実現する
まずはレファレンスシステムにG-700を組み込んでCDを聴いた。一聴、アキュフェーズのプリアンプとはエネルギーバランスが異なることに気づいた。アキュフェーズがすらりとした摩天楼型であるのに対してG-700は堂々たるピラミッド型。バス声部の支えがしっかりとしているので音楽が立体的に聴こえる。
真空管式機らしいオレンジ色系の温かみのようなものは希薄で、むしろアイスブルーを思わせる寒色系の聴き味が支配的だ。これは銀を多用した線材や特殊なメッキを施した真空管ソケットや端子類が影響しているのもさることながら、設計と製造が巧みであることも大きい。古来、名人の作った真空管アンプの音は寒色系と相場が決まっているのである。
加えて、ソリッドステート機とは一味違ったスピード感がある。これは真空中を電子が飛ぶ真空管式の超高級機だけがもつ高貴な味わいだ。聴感上のSN比や音場の広さや音像の清潔さは比較したプリアンプに優るとも劣らない。音楽的には真空管式機には珍しい客観型で、楽曲・演奏に媚びず、毅然たる風情の音楽を奏でる。
毅然とした表情が深まり、独自の味わいが深化する
ここでソースをLPに変更し、GE-7でイコライゼーションを施した。本機はMM対応なので、同社の昇圧トランス「SFz」を介してプレーヤーと接続した。カートリッジはマイソニックのMCカートリッジ「Hyper Eminent」を用いた。
基本的にはレファレンスシステムにG-700を組み込んだ時と同じ傾向の音である。しかしながらオーディオ・ノートならではの聴き味はより深化しており、ピラミッド的なエネルギーバランスはより強調され、音色はより寒色系に振れており、スピード感はさらに上昇している。音楽的には毅然とした表情が深まるとともに、LPらしい心の琴線に触れるような表現も聴くことができた。
ジャンル別の印象を記す余裕がなくなってしまったが、何を聴いてもいいことは責任をもって保障しよう。ソリッドステート機との組み合わせもいける両モデルの登場を喜びたい。
開発者の声 -オーディオ・ノート 廣川嘉行氏より
弊社のミドルクラスプリアンプとして熟慮した回路構成により最高クラスのスペックを達成し、エントリー機G-70の濃厚で熟成された深みのある音色を持ちつつ、フラグシップ機G-1000のように緻密かつ広大な音場、描写力を併せ持ったプリアンプを目標としました。
ヴォーカルを中心に様々なジャンルの音楽の試聴を繰り返し行い、インストルメンタルを聴いても楽器が歌っているかのような生命感と情感表現力を備えた音質を追求しました。また他社製品やトランジスタパワーアンプと組み合わせた場合の親和性も考慮し、入念なサウンドデザインを施しました。ぜひ音楽を愛する方々に聴いて頂きたいと思います。
(提供:オーディオ・ノート)
本記事は『季刊・analog vol.82』からの転載です