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PRUSB録音機能を備えたマニュアルプレーヤー

デジタル派オーディオ評論家、デノン「DP-450USB」を触る。アナログ初心者“だからこそ”見える魅力とは

公開日 2024/05/31 06:45 逆木一
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■単なるノスタルジーではない、デジタルを凌ぐ「レコードの音」を聴かせてくれる



それではいよいよ、再生クオリティについて。本機の試聴では、再生システムとしてNmodeのプリメインアンプ「X-PM9」とParadigmのブックシェルフスピーカー「Persona B」を組み合わせた。本来であればDP-450USBの価格に見合った組み合わせにすべきと思ったのだが、「レコードならではの音」を万全に表出させるべく、今回はあえて上位クラスの機器(特にスピーカー)を用いた。

Nmodeのプリメインアンプ「X-PM9」とParadigmのブックシェルフスピーカー「Persona B」を組み合わせた

試聴に用いたレコードは、すぎやまこういち・東京都交響楽団『交響組曲ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』、Luther Vandross『Never Too Much』、大植英次・ミネソタ管弦楽団『レスピーギ《ローマの松》』、Bill Evans『Waltz for Debby』の4枚。これらはすべて筆者がハイレゾ音源でも所有しているアルバムであり、「レコードとハイレゾ音源(ファイル再生)ではどのような違いがあるのか?」という比較も念頭に置いている。

今回、4枚のレコードで試聴を行った

まずはDP-450USBの内蔵フォノイコライザーをオンにした状態で聴く。カートリッジは全体を通じて付属のMMカートリッジをそのまま使用した。

一般的にレコードの音について語られる時、「デジタル音源にはないやわらかさや音の温かみ」というような、良くも悪くもノスタルジックなイメージがよく使われている印象がある。しかし、実際にしっかりとしたオーディオシステムで再生するレコードの音は、それこそ下手なデジタルプレーヤーが裸足で逃げ出すほどの鮮烈さやエネルギー感に満ちている。むしろ、単なるノスタルジーでは絶対に片付けられない、オーディオにおけるひとつの究極形がレコード再生にはあると筆者は思っている。普段はファイル再生に全力投球しているからこそ、レコードの音に触れるたびに心からそう思う。

そしてDP-450USBは、まさに筆者が思う「レコードの音」をしっかりと届けてくれた。試聴したすべてのアルバムを通じて濃厚な中低域を核にした実体感のある音、豊かなエネルギー感を味わうことができた。特にトランジェントの良さに関しては、Bluesoundのネットワークプレーヤー「NODE」で再生したハイレゾ音源と比べても引けを取らない。

確かに、高域の透明感やダイナミックレンジ、空間表現といった明らかにハイレゾ音源が優れている要素はあり、『ドラクエ』や『ローマの松』など、大規模なオーケストラ編成の曲でより顕著になる。しかし、それを補って余りあるほどにレコードの音は感情にダイレクトに訴えかける力があり、非常に充実した音楽体験となった。

ちなみに『Never Too Much』は、ほぼすべての要素でハイレゾ音源よりもレコードの方が満足度で上回るという結果になった。

ハイレゾ音源との比較では価格帯的に釣り合うBluesound「NODE」を再生に使用

DP-450USBの内蔵フォノイコライザーをオフにして、フェーズメーションのフォノイコライザー「EA-200」との組み合わせも試してみた。

フェーズメーションのフォノイコライザー「EA-200」を組み合わせて聴いた

単体フォノイコライザーの威力は歴然としており、エネルギー感を保ったまま一気に音が引き締まり、空間の見通しが著しく改善。細部の描写や分解能でも明らかな向上を聴き取れる。EA-200との組み合わせは「グレードアップ」を如実に実感するともに、DP-450USBの純粋なレコードプレーヤーとしての素性の良さも再確認できた。



現代的なデザイン、経験の浅い筆者でも難なく扱える抜群の使いやすさ、レコードの魅力を確かに感じさせる再生クオリティ。これらを満遍なく備えたDP-450USBは、単にレコードを再生するから一歩踏み込んで、真にアナログの魅力を味わいたいと望んだ時、実に心強いモデルとなるだろう。

(協力:ディーアンドエムホールディングス)

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