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PR評論家・岩井喬が本国スタッフを直撃

実売600万円超え。「Warwick Acoustics」の独自静電型ヘッドホン、その音質と開発思想に迫る!

公開日 2024/06/11 07:45 岩井 喬
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■音質を維持するためボリュームにもこだわるアンプ


続いてアンプ部についてもフォーカスを当ててみたい。Model One同様DAC内蔵型であり、DACチップもESS製SABRE 32bit 8ch DACチップをデュアルモノ構成で2基搭載。384kHz/32bit・PCM&11.2MHz・DSDのネイティブ再生に対応しており、Model OneではDSDがPCM変換となっていた点から大きく進化した。

インターフェイスは同軸デジタル、USB、有線LAN、AES/EBUといったデジタル系入力のほか、アナログRCA/XLR入出力を装備。

音量調節についてはアナログとDSD系がレーザートリミングされた高精度パラレル抵抗ラダーによるアナログアッテネーター方式、PCM系は64bit精度固定小数点演算用DSPを用いたデジタルアッテネーター方式を採用。フロントパネルにはカラーディスプレイも設けられ、使い勝手も格段に向上している。電源はオーディオ周波数帯域内で低ノイズとなるよう設計された固定周波数発振タイプのユニバーサル対応スイッチングモードパワーサプライを採用している。

CNC切削によるアルミ製ボディはシールド効果も高く、ディスクリート構成のクラスAアナログ回路用アンプの放熱効果や振動対策にも効果を発揮する。

■静電型らしい緻密な描写に生々しさがプラスした音


わずかな時間ではあったが、APERIOを試聴させていただいた。見通しのよい音場と、高密度で重心の低い安定した音像描写を両立しつつ、立ち上がり・立ち下がりの素早い表現力を持っており、質感表現も滑らかに描き出す。まさに静電型らしい、レスポンスのよい緻密な描写力を実感した。Bravuraと比較すると、よりニュートラルで上品、艶を伴った秀麗なサウンドである。

プリアンプ機能付きのストリーマー、LUMIN「P1」をレファレンスに使い試聴を行った。

試聴する筆者。

オーケストラのダイナミックなハーモニーにも飽和することなく追随し、大太鼓の豊かな響きも、細やかな皮の質感まで繊細にトレース。管弦楽器の旋律も分解能が高く爽やかに拾い上げ、抑揚のしなやかさや余韻の透明感も満喫できる。特に低域のたくましい押し出し、涼やかに響き渡るピアノやホーンセクション、シンバルの丁寧な描写の対比も素晴らしい。

豊潤なホールトーンや楽器の周囲に漂うエアー感も過不足なく再現してくれる点も流石だが、DSD音源ならではのシームレスな空間の広がり感も脚色なく引き出しており、実に見事な表現力であると実感した。ボーカルは肉付きがよくしっとりとした音離れのよい描写で、輪郭の滲みもなく瑞々しいリアルさを伴ったもの。モニターのような硬さはなく、終始耳当たりよい音調で聴かせてくれる点も好ましく感じた次第である。

■ブランドの今後。2025年は大きな変革の年になる予定!


APERIOをはじめ、静電型ヘッドホンで高い実績を持つWarwick Acousticsには車載オーディオ部門も存在する。薄型で高効率かつ軽量な静電型トランスデューサーのメリットを最大限生かすことができる場として、Warwick Acousticsでは長い間カーオーディオ分野での研究・製品開発を続けてきたという。特に近年はこの車載用の開発を重視してきたそうだが、最後にAPERIOやBravuraに続く新製品について、マーティン氏に伺ってみた。

「いい質問ですね!2025年はぜひとも楽しみにしてほしいです。この年はWarwick Acousticsにとってブレイクスルーの年になる予定です。ヘッドホンではワイヤレス静電型ヘッドホンを発売する予定で、現在開発を進めているところです。また車載用でも新しいシステムを発表する予定で、UKブランドのメーカーとコラボした車も登場予定です」。

現在Warwick Acousticsの中で最も古株になったというマーティン氏。

近年では小型静電型ユニットを使ったイヤホンも多くなったが、オーバーヘッド型ワイヤレスヘッドホンに静電型トランスデューサーを使ったモデルは聞いたことがない。バイアス電圧などの点で気になることは多いが、この疑問をマーティン氏へ尋ねてみた。

「車載用の開発でトランスデューサーやアンプを含む静電型システムをモジュール化する技術を確立しました。インストール場所に制約のある車載用だからこそコンパクト化が重要課題であり、そのノウハウを生かしてヘッドホンの中にすべての機能を盛り込むことができました」。

価格は未定とのことだが、Bravuraの半額以下となる見込みで、ノイズキャンセル機能も搭載するという。「音はAPERIOと同じものとなるよう開発を進めています(笑)」とジョーク交じりに語るマーティン氏の様子から、製品化も具体的なものとなっているのだろうという余裕さが感じられた。

取材はWarwick Acousticsを輸入する完実電気のオフィスにて行われた。ブランドの過去から現在までホワイトボードも使いつつ語ってくれたマーティン氏(写真左)。写真中央は通訳をしてくださった完実電気の堀氏。写真右は筆者。

◇◇◇


今回の取材はAPERIOを通し、Warwick Acousticsの過去、現在、そして未来について、マーティン氏から伺うことができる貴重な時間であった。APERIOのサウンドはヘッドホンリスニングの理想郷ともいえる、まさに“マーベラス”なものである。独自の手法を確立しつつ、静電型の可能性に賭け、まずはヘッドホン市場でその実力を磨いてきた20余年の歩み。そして今、技術革新が目覚ましい自動車分野へ踏み出し、EVが主流となっていくであろう市場情勢を踏まえ、今後さらに静電型トランスデューサーの必要性が増していくであろう。むろん、ヘッドホンの世界でもこれまでにない新たな静電型の魅力をWarwick Acousticsは提示してくれるのではないかと期待している。マーティン氏のいう“2025年の展開”も今から楽しみだ。

※記事初出時と一部記事の表現を変更しました(2024年6月12日)


(提供:完実電気株式会社)

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