<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME
エソテリックの「Grandioso K1X」、SE化で激変!透明度が向上し一層の高解像度再生に至る
みなさん、こんにちは。今回は、自宅で愛用しているエソテリックのSACDプレーヤー「Grandioso K1X」を、SEバージョンへアップグレードした件についてお話しましょう。
その前に、Grandioso K1Xに搭載されている重要な技術について、今一度説明しておきましょう。まずは長年進化を遂げてきた独自のディスクドライブ「VRDS」。皆さんもご存知と思いますが、エソテリックは、長年SACDのリマスター盤も発売しており、理想の再生と録音を探求してきています。
それは、母体であるティアック株式会社の創業当時から、テープレコーダーを開発・発売し、記録音源のありさまを忠実に再生することをポリシーとしていたからです。歴史的な音源を大切にし、最新のエレクトロニクスを採用するにとどまらず、回転機構などのメカニカルエンジニアリングを追求していました。
そんな技術の流れを踏まえ、CD時代においてもCDの理想的な高精度読み取りを探求し、VRDSドライブユニットを開発しました。今では「VRDS-ATLAS」ドライブユニットに進化を遂げています。
写真のとおり、SS400スチール製のサイドパネルと大型ブリッジを新規に採用し、ターンテーブルにジュラルミンを採用。そのスピンドル軸受には、摩耗や回転ノイズを極限まで抑えるため、スチールボールを使用し点接触させています。低重心化を図るため、ブラシレス駆動モーターも下部に設置しました。
トレーも堅牢なアルミ製で、全体重量はメカ単体で6.6kg、ベース部を含め、13.5kgの重量級メカとしています。これにより、高速回転においてもサーボ電流を最小にし、静寂で高精度な読み取りを実現し、後段のDACやアナログ回路の高音質化にも大きく貢献しています。
同社はさらに理想の音を実現するために、半導体DACを使わず、独自のディスクリート構成のDACも開発しました。「Master Sound Discrete DAC」です。回路自体にも精密感があり、実にハイエンドな佇まいを感じます。
その技術としては、独自のアルゴリズムを投入したFPGAをΔΣモジュレーターとして機能させ、左右の各32式のエレメントでDA変換されます。1エレメントは、クロックドライバー、ロジック回路、抵抗、コンデンサーで構成されますが、音質に直接、影響する抵抗に高精度、高音質のメルフ抵抗を使用しています。また、左右の微妙な干渉を避けるため、前述のFPGAを左右独立で使用しています。
ここでDA変換された信号は、ローパスフィルター(アナログ出力段)に接続します。この回路は、高精度変換された信号を忠実にアナログ出力するためにも、極めて重要です。
ここからはGrandioso K1XのSEバージョンについても触れていきます。今回のSE仕様では、DAC直後の高音質オペアンプ、「MUSES03」を変更し、独自のアンプモジュール「IDM-01」を搭載しました。これは、同社設計という意味合いにおいて、ディスクリート構成と言えます。抵抗やコンデンサーなどのパーツも吟味され、従来より軽いフィルター次数とし、基板レイアウトも変更されています。
その主な特徴は、音の鮮度の高さや、さらなる高S/Nを追求したことです。これは、生々しい音楽の躍動という意味で後述のクロック回路の変更とも深く関係しています。
この後段には、スルーレート2000V/μsの電流強化型バッファー・アンプ、「ESOTERIC-HCLD」が続きます。もちろん、同社仕様の電流伝送方式「ES-LINK Analog」に対応します(既存モデルと共通)。
さらに、高精度なデジタル伝送と高音質を実現するために、内部クロック回路も「SE仕様」となり、「Master Sound Discrete Clock for Digital Player」を搭載しました。これは、フラグシップの10MHzマスタークロックジェネレーター「Grandioso G1X」の技術の流れから開発されたクロックモジュールです。中心周波数精度は、厳格に±0.5ppmという素晴らしい特性です。
目指した音質は、人工的な音を排除し、生々しい演奏の臨場感、スリリングなダイナミクス、一音一音により音楽らしい肌合いを与えるオーガニックなテクスチャです。高精度デジタル伝送やDA変換に貢献するだけではなく、前述のSE仕様のアナログ回路にも貢献します。
大型水晶発振器には、ゆっくりと成長させた水晶を搭載し、基板自体にも金メッキパターンやコネクターを使用しています。精密医療機器や航空機機器開発と同様の品質管理のもとに製作されているのです。もちろん、Grandioso G1Xや最新の「G-01XD」を接続し、完全同期させることにより、さらなる高音質化も実現できます。
4トランス構成の壮大とも言える電源部を搭載し、役割の違う回路の干渉を受けない内部コンストラクションにも感心します。精密感があり、実にオーディオマインドが掻き立てられるところがあります。
筐体はエレガントなデザインですが、実に重厚で、全体質量は35kgもあります。これをスパイクとスパイク受けを一体化させた構造の独自のピンポイント・フットで支えます。これも最適な音質を探った結果です。
その音質の大きな特徴は、より一層の高解像度再生が実現したことで、格段に音の透明度と空間描写性が向上しています。実際に再生すると、今まで気にかけなかった、ほんの僅かな空気感や演奏上の動作などをクローズアップしてきますから、まさに眼前で演奏しているかのような感覚になります。音色としては、楽器や声の繊細や柔らかさを引き立てつつ、滑らかで中低域に厚みのある上質なアナログサウンドを実現しています。
楽器や声の倍音も、さらに豊潤になりました。試聴では、長年リファレンス音源として使用している、2Lの「クワイエット・ウィンター・ナイト」(ホフアンサンブル)を再生しました。前モデルと比較するなら、高域の雑味のようなトーンが一掃され、音の透明度が向上しています。空間描写性と歌い手の実在感が高まり、声質にウェットで滑らかな質感が加わります。この歌い手を囲む、トランペットやシンバルなどの金属系楽器では、倍音豊かで、良い意味で派手さが抑えられ、金属の響きであることを鮮明にするところがあります。
ベースやドラムスも、楽器の素材の響きを鮮明にします。トータルで、その場で音が鳴っているかのような、演奏のリアリティを実感します。また、聴感上の帯域バランスもピラミッド型バランスの音を維持しながらも、この曲では、高域が伸びた印象も受けます。実にバランスの良い音です。
続いて、同じく2Lのピアノ・ジャズトリオ「Polarity」(ホフアンサンブル)を再生しました。ピアノの一音一音が空間に広がり、ドラムスの打音も鮮明になりました。レスポンスが速いです。しかし、無味乾燥な音ではなく、演奏の躍動を鮮明にし、ベースの木質感もリアルに聴こえました。まさに立体空間で、音の立ち上がりも俊敏です。
これらは、今回のSE仕様の効果で、使用するプリアンプやパワーアンプ、そしてスピーカーにも影響し、システム全体が明らかにアップグレードされたように感じます。弱音に深みを感じさせるところも、実に魅力的です。
同社が最新マスタリングした内田光子の往年の名盤「モーツァルト:ピアノ協奏曲集」も再生しました。その弦楽パートでは、胴の響きが鮮明になり、高密度な美しい響きが聴け、そこに内田光子によるピアノが美しく、リアルに定位します。とてもCD初期の録音とは思えず、まさに眼前で演奏されているかのような音の鮮度の高さを感じ、演奏の臨場感を満喫することができました。
これに外部強化電源ユニット「Grandioso PS1」を接続すると、解像度と空間描写性が高まり、さらに滑らかで高密度なアナログ・サウンドに変化します。これは、DA変換部とローパス・フィルターに専用の電源が個別に供給されたからです(4系統電源から6系統電源になります)。
私の今後の課題は、10MHzマスタークロックジェネレーターGrandioso G1Xを加えることです。これにより、さらなるCD/SACDやハイレゾの高解像度ワイドレンジ再生が実現することでしょう。
世界的に見ても、最大3筐体にアップグレードできる本機は、究極の一体型プレーヤーと言え、他に類を見ません。一旦、再生すると、その音に魅了され、アナログ再生を忘れさせるところがあります。
なお、同社ではSACDプレーヤーの「K-01XD」と「K-03XD」のSEバージョンも発売しました。これにも同等の技術が投入され、まさにハイエンド・プレーヤーへと進化しています。大切に長く愛用できることでしょう。
最後に、私が最近、気に入っているハイレゾ音源を紹介します。それは、オット・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団(ニューフィルハーモニア管弦楽団)による『マーラー:交響曲第2、4、7、9番』です。私はオリジナルレコードも愛聴していますが、今回は、オリジナル・マスターから192kHz/24bitにハイレゾ化されたため、高域が伸び、より低域に重厚さも増し、ダイナミックレンジが拡張されたことに魅了されています。
ディスク再生の鍵となる高精度ドライブ&ディスクリートDAC技術
その前に、Grandioso K1Xに搭載されている重要な技術について、今一度説明しておきましょう。まずは長年進化を遂げてきた独自のディスクドライブ「VRDS」。皆さんもご存知と思いますが、エソテリックは、長年SACDのリマスター盤も発売しており、理想の再生と録音を探求してきています。
それは、母体であるティアック株式会社の創業当時から、テープレコーダーを開発・発売し、記録音源のありさまを忠実に再生することをポリシーとしていたからです。歴史的な音源を大切にし、最新のエレクトロニクスを採用するにとどまらず、回転機構などのメカニカルエンジニアリングを追求していました。
そんな技術の流れを踏まえ、CD時代においてもCDの理想的な高精度読み取りを探求し、VRDSドライブユニットを開発しました。今では「VRDS-ATLAS」ドライブユニットに進化を遂げています。
写真のとおり、SS400スチール製のサイドパネルと大型ブリッジを新規に採用し、ターンテーブルにジュラルミンを採用。そのスピンドル軸受には、摩耗や回転ノイズを極限まで抑えるため、スチールボールを使用し点接触させています。低重心化を図るため、ブラシレス駆動モーターも下部に設置しました。
トレーも堅牢なアルミ製で、全体重量はメカ単体で6.6kg、ベース部を含め、13.5kgの重量級メカとしています。これにより、高速回転においてもサーボ電流を最小にし、静寂で高精度な読み取りを実現し、後段のDACやアナログ回路の高音質化にも大きく貢献しています。
同社はさらに理想の音を実現するために、半導体DACを使わず、独自のディスクリート構成のDACも開発しました。「Master Sound Discrete DAC」です。回路自体にも精密感があり、実にハイエンドな佇まいを感じます。
その技術としては、独自のアルゴリズムを投入したFPGAをΔΣモジュレーターとして機能させ、左右の各32式のエレメントでDA変換されます。1エレメントは、クロックドライバー、ロジック回路、抵抗、コンデンサーで構成されますが、音質に直接、影響する抵抗に高精度、高音質のメルフ抵抗を使用しています。また、左右の微妙な干渉を避けるため、前述のFPGAを左右独立で使用しています。
ここでDA変換された信号は、ローパスフィルター(アナログ出力段)に接続します。この回路は、高精度変換された信号を忠実にアナログ出力するためにも、極めて重要です。
アナログ回路部やクロックをさらに高精度化
ここからはGrandioso K1XのSEバージョンについても触れていきます。今回のSE仕様では、DAC直後の高音質オペアンプ、「MUSES03」を変更し、独自のアンプモジュール「IDM-01」を搭載しました。これは、同社設計という意味合いにおいて、ディスクリート構成と言えます。抵抗やコンデンサーなどのパーツも吟味され、従来より軽いフィルター次数とし、基板レイアウトも変更されています。
その主な特徴は、音の鮮度の高さや、さらなる高S/Nを追求したことです。これは、生々しい音楽の躍動という意味で後述のクロック回路の変更とも深く関係しています。
この後段には、スルーレート2000V/μsの電流強化型バッファー・アンプ、「ESOTERIC-HCLD」が続きます。もちろん、同社仕様の電流伝送方式「ES-LINK Analog」に対応します(既存モデルと共通)。
さらに、高精度なデジタル伝送と高音質を実現するために、内部クロック回路も「SE仕様」となり、「Master Sound Discrete Clock for Digital Player」を搭載しました。これは、フラグシップの10MHzマスタークロックジェネレーター「Grandioso G1X」の技術の流れから開発されたクロックモジュールです。中心周波数精度は、厳格に±0.5ppmという素晴らしい特性です。
目指した音質は、人工的な音を排除し、生々しい演奏の臨場感、スリリングなダイナミクス、一音一音により音楽らしい肌合いを与えるオーガニックなテクスチャです。高精度デジタル伝送やDA変換に貢献するだけではなく、前述のSE仕様のアナログ回路にも貢献します。
大型水晶発振器には、ゆっくりと成長させた水晶を搭載し、基板自体にも金メッキパターンやコネクターを使用しています。精密医療機器や航空機機器開発と同様の品質管理のもとに製作されているのです。もちろん、Grandioso G1Xや最新の「G-01XD」を接続し、完全同期させることにより、さらなる高音質化も実現できます。
4トランス構成の壮大とも言える電源部を搭載し、役割の違う回路の干渉を受けない内部コンストラクションにも感心します。精密感があり、実にオーディオマインドが掻き立てられるところがあります。
筐体はエレガントなデザインですが、実に重厚で、全体質量は35kgもあります。これをスパイクとスパイク受けを一体化させた構造の独自のピンポイント・フットで支えます。これも最適な音質を探った結果です。
空間描写性が向上するとともに弱音部にも深みを感じる
その音質の大きな特徴は、より一層の高解像度再生が実現したことで、格段に音の透明度と空間描写性が向上しています。実際に再生すると、今まで気にかけなかった、ほんの僅かな空気感や演奏上の動作などをクローズアップしてきますから、まさに眼前で演奏しているかのような感覚になります。音色としては、楽器や声の繊細や柔らかさを引き立てつつ、滑らかで中低域に厚みのある上質なアナログサウンドを実現しています。
楽器や声の倍音も、さらに豊潤になりました。試聴では、長年リファレンス音源として使用している、2Lの「クワイエット・ウィンター・ナイト」(ホフアンサンブル)を再生しました。前モデルと比較するなら、高域の雑味のようなトーンが一掃され、音の透明度が向上しています。空間描写性と歌い手の実在感が高まり、声質にウェットで滑らかな質感が加わります。この歌い手を囲む、トランペットやシンバルなどの金属系楽器では、倍音豊かで、良い意味で派手さが抑えられ、金属の響きであることを鮮明にするところがあります。
ベースやドラムスも、楽器の素材の響きを鮮明にします。トータルで、その場で音が鳴っているかのような、演奏のリアリティを実感します。また、聴感上の帯域バランスもピラミッド型バランスの音を維持しながらも、この曲では、高域が伸びた印象も受けます。実にバランスの良い音です。
続いて、同じく2Lのピアノ・ジャズトリオ「Polarity」(ホフアンサンブル)を再生しました。ピアノの一音一音が空間に広がり、ドラムスの打音も鮮明になりました。レスポンスが速いです。しかし、無味乾燥な音ではなく、演奏の躍動を鮮明にし、ベースの木質感もリアルに聴こえました。まさに立体空間で、音の立ち上がりも俊敏です。
これらは、今回のSE仕様の効果で、使用するプリアンプやパワーアンプ、そしてスピーカーにも影響し、システム全体が明らかにアップグレードされたように感じます。弱音に深みを感じさせるところも、実に魅力的です。
高密度で美しい響き、弦楽の胴の鳴りも鮮明に
同社が最新マスタリングした内田光子の往年の名盤「モーツァルト:ピアノ協奏曲集」も再生しました。その弦楽パートでは、胴の響きが鮮明になり、高密度な美しい響きが聴け、そこに内田光子によるピアノが美しく、リアルに定位します。とてもCD初期の録音とは思えず、まさに眼前で演奏されているかのような音の鮮度の高さを感じ、演奏の臨場感を満喫することができました。
これに外部強化電源ユニット「Grandioso PS1」を接続すると、解像度と空間描写性が高まり、さらに滑らかで高密度なアナログ・サウンドに変化します。これは、DA変換部とローパス・フィルターに専用の電源が個別に供給されたからです(4系統電源から6系統電源になります)。
私の今後の課題は、10MHzマスタークロックジェネレーターGrandioso G1Xを加えることです。これにより、さらなるCD/SACDやハイレゾの高解像度ワイドレンジ再生が実現することでしょう。
世界的に見ても、最大3筐体にアップグレードできる本機は、究極の一体型プレーヤーと言え、他に類を見ません。一旦、再生すると、その音に魅了され、アナログ再生を忘れさせるところがあります。
なお、同社ではSACDプレーヤーの「K-01XD」と「K-03XD」のSEバージョンも発売しました。これにも同等の技術が投入され、まさにハイエンド・プレーヤーへと進化しています。大切に長く愛用できることでしょう。
最後に、私が最近、気に入っているハイレゾ音源を紹介します。それは、オット・クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団(ニューフィルハーモニア管弦楽団)による『マーラー:交響曲第2、4、7、9番』です。私はオリジナルレコードも愛聴していますが、今回は、オリジナル・マスターから192kHz/24bitにハイレゾ化されたため、高域が伸び、より低域に重厚さも増し、ダイナミックレンジが拡張されたことに魅了されています。