<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME
エソテリックの「Grandioso K1X」を自宅に導入! 高音質SACD復刻盤を愛聴する日々
■高音質なSACD復刻盤をさらに楽しむため、SACDプレーヤーを新たに導入
この約一年間は、皆さんと同様に静かに自宅で過ごす時間が多くなりました。もともと執筆が中心となっているので、慣れているのかもしれません。こんななかで、一昨年から楽しんできたことは、往年の名演奏をリマスターしたLPとSACDでした。
特にSACD盤では、ソニーミュージックがワルター指揮コロンビア交響楽団によるベートーヴェン、モーツァルト、マーラーなどの名盤をオリジナルマスターに遡り、ミックスまでもやり直したことには、感心させられました。数年前には、バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団によるマーラー交響曲全集も登場しましたね。
タワーレコードも驚くほどハイスピードで多くのSACD復刻盤を登場させています。そのなかで、個人的に気に入っているのが、ジョージ・セル指揮クリーブランド交響楽団によるベートーヴェン、ブラームスなどの交響曲、管弦楽曲の全集でした。LPには手塩にかけた装置による操作と音質の楽しみがあり、これはこれでさらに磨きをかけているのですが、これらのSACDには、最新のリマスター技術による格別に広いダイナミックレンジと高解像度特性が再現され、その場で演奏されているかのような臨場感を体験させてくれています。
こうした素晴らしいSACDアルバムが登場するなかで、2階のリスニングルームにも新しいSACDプレーヤーを招きたいと考えるようになり、検討を重ねてきました。そのなかで、発売当初から気になっていたモデルの一つが、エソテリックのフラグシップ機「Grandioso K1X(以下K1X)」でした。そしてこの度、ついに自宅に導入できました。
どんなところに魅力を感じ導入に至ったのかというと、まずデザインと内部技術に裏打ちされた音質でした。長く愛用する上で、私にとってデザインは大切な要素です。シルバーがいいのか、ゴールドがいいのか、相当悩みましたが、イエロー・ゴールドと薄いピンク・ゴールドの中間色のようなゴールド色に独特のエレガントさを感じ、ゴールド色としました。
もちろん、精密感に溢れた驚愕の搭載技術にも魅了されました。そのひとつは、伝統のVRDSディスクドライブです。K1Xでは、フラグシップセパレート機「Grandioso P1X/D1X」と同様、VRDS ATLASを搭載しました。これは、ディスクをジュラルミン製ターンテーブルに密着させ、ディスクの反りを矯正し、回転振動も抑え込み、サーボ電流も極小化します。高精度なデジタルデータを読み取る最新のドライブメカなのです。
SS400スチール製のサイドパネルとブリッジも大型化され、強度を上げ、静寂かつ強力な駆動モーターをブリッジからベース部へ移動、低重心化も行われました。メカ単体は6.6kg、ベース部を含めて13.5kgという重量級です。
■高精度なDA部、強力な電源部など音質への執念を感じる
さらに魅力的な技術は、オリジナル・デジタルマスターの生々しい音質を再現させるために、独自のディスクリート構成のDAC「Master Sound Discrete DAC」を搭載したことです。信号の流れとしては、VRDS ATLASやUSBなどの外部入力は、PCMのアップサンプリングやDSD化、DoPデコード、MQAデコード制御などを行うデジタル制御部を経由し、このDACでDA変換される仕組みです。
私は実際にこのDAC基板を見ましたが、その特徴は、入力されたデジタル信号が、独自のアルゴリズムで動作するFPGAによるΔΣモジュレータ(変調器)と、ホット/コールドに各16式(1chあたり合計32式)配置したエレメントの組み合わせにより、DA変換されることです。各エレメントは「クロックドライバー」「ロジック回路」「コンデンサー」「抵抗」により、一列に構成され、かなり広い面積です。どのようにこれらのエレメントにPCMやDSDのビットが割り当てられ、DA変換されるのかは非公開ですが、精密感があり、いかにもハイエンドというフレイバーを湛えています。
私の推察となりますが、これだけ数多くのエレメントを配置しているので、もし仮にFPGAによるΔΣ変調器が、ビットをランダムにエレメントに割り当てる(飛ばす)としたら、各エレメントには、微妙な誤差もあるはずなので、その誤差が相殺され、超弱音から最強音までの変換リニアリティー(変換の直線性)が高まり、広いダイナミックレンジや優れた高解像度変換が実現できると想像できます。
ここでDA変換された信号は、次にMUSEの高精度、高音質オペアンプを使用したローパスフィルター、2,000V/μsを誇るハイスピード電流強化型出力段「ESOTERIC-HCLD」でアナログ出力される仕組みです。また、同社独自の電流伝送方式に対応するES-LINK Analog出力も装備しています。
これらのDA変換フローに対して、クロック回路も大切な要素となります。K1Xの内部には、専用のGrandioso Custom VCXO II(位相雑音の少ない電圧制御型水晶発振器:±0.5ppm)を使用したクロック回路を装備し、高精度なマスタークロックを生成し、前述のFPGAにクロックを供給します。このFPGAから再生に適合するクロックをVRDS ATLASやDACに供給する仕組みです。また、新たな音質変化や高解像度再生が期待できる10MHz高精度外部クロックジェネレーターの接続も可能にしていることも魅力ですね。
さらに、私が初めてK1Xに出会った時に驚きを感じたのは、電源部でした。VRDSメカ用、デジタル処理用、左右のDAC/アナログ回路用に、4式のトライダル・トランスを使用した独立電源が搭載されていました。筐体は2階建て構造で、前述の信号処理基板に悪影響を及ばさないように、電源部は下段に配置されています。電源レギュレーターはディスクリート構成で、スーパーキャパシター「EDLC」というコンデンサーも合計76式使用しています。これは合計容量2,050,000μF=2.05Fという大容量で、個人的には強力で安定した回路駆動力に加えて、あたかもクリーンなバッテリーで回路を駆動するかのような音の透明度や、まろやかな質感を感じています。
さらにリアパネルの左右には、大型のコネクタが装備されていました。オプションの外部電源「Grandioso PS1」を接続するコネクタです。これを接続すると、K1X内部ではVRDSメカ用とデジタル処理用の2式の電源部のみが動作し、PS1は前述の一枚のDA変換基板をDAC部とローパスフィルター以降のアナログ出力部に分けて、1chあたり2式の電源で駆動する方式を考え出しました。
PS1の電源は左右合計4式で、K1X内部電源は2式ですから、合計6系統の独立電源で、回路全体を駆動するのです。こんな拡張性の高いSACDプレーヤーは、過去に登場したことはありませんね。唯一無二と言えるでしょう。チャレンジすべきことは、全てやったという、音質への執念や開発の情熱までも実感します。
この約一年間は、皆さんと同様に静かに自宅で過ごす時間が多くなりました。もともと執筆が中心となっているので、慣れているのかもしれません。こんななかで、一昨年から楽しんできたことは、往年の名演奏をリマスターしたLPとSACDでした。
特にSACD盤では、ソニーミュージックがワルター指揮コロンビア交響楽団によるベートーヴェン、モーツァルト、マーラーなどの名盤をオリジナルマスターに遡り、ミックスまでもやり直したことには、感心させられました。数年前には、バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団によるマーラー交響曲全集も登場しましたね。
タワーレコードも驚くほどハイスピードで多くのSACD復刻盤を登場させています。そのなかで、個人的に気に入っているのが、ジョージ・セル指揮クリーブランド交響楽団によるベートーヴェン、ブラームスなどの交響曲、管弦楽曲の全集でした。LPには手塩にかけた装置による操作と音質の楽しみがあり、これはこれでさらに磨きをかけているのですが、これらのSACDには、最新のリマスター技術による格別に広いダイナミックレンジと高解像度特性が再現され、その場で演奏されているかのような臨場感を体験させてくれています。
こうした素晴らしいSACDアルバムが登場するなかで、2階のリスニングルームにも新しいSACDプレーヤーを招きたいと考えるようになり、検討を重ねてきました。そのなかで、発売当初から気になっていたモデルの一つが、エソテリックのフラグシップ機「Grandioso K1X(以下K1X)」でした。そしてこの度、ついに自宅に導入できました。
どんなところに魅力を感じ導入に至ったのかというと、まずデザインと内部技術に裏打ちされた音質でした。長く愛用する上で、私にとってデザインは大切な要素です。シルバーがいいのか、ゴールドがいいのか、相当悩みましたが、イエロー・ゴールドと薄いピンク・ゴールドの中間色のようなゴールド色に独特のエレガントさを感じ、ゴールド色としました。
もちろん、精密感に溢れた驚愕の搭載技術にも魅了されました。そのひとつは、伝統のVRDSディスクドライブです。K1Xでは、フラグシップセパレート機「Grandioso P1X/D1X」と同様、VRDS ATLASを搭載しました。これは、ディスクをジュラルミン製ターンテーブルに密着させ、ディスクの反りを矯正し、回転振動も抑え込み、サーボ電流も極小化します。高精度なデジタルデータを読み取る最新のドライブメカなのです。
SS400スチール製のサイドパネルとブリッジも大型化され、強度を上げ、静寂かつ強力な駆動モーターをブリッジからベース部へ移動、低重心化も行われました。メカ単体は6.6kg、ベース部を含めて13.5kgという重量級です。
■高精度なDA部、強力な電源部など音質への執念を感じる
さらに魅力的な技術は、オリジナル・デジタルマスターの生々しい音質を再現させるために、独自のディスクリート構成のDAC「Master Sound Discrete DAC」を搭載したことです。信号の流れとしては、VRDS ATLASやUSBなどの外部入力は、PCMのアップサンプリングやDSD化、DoPデコード、MQAデコード制御などを行うデジタル制御部を経由し、このDACでDA変換される仕組みです。
私は実際にこのDAC基板を見ましたが、その特徴は、入力されたデジタル信号が、独自のアルゴリズムで動作するFPGAによるΔΣモジュレータ(変調器)と、ホット/コールドに各16式(1chあたり合計32式)配置したエレメントの組み合わせにより、DA変換されることです。各エレメントは「クロックドライバー」「ロジック回路」「コンデンサー」「抵抗」により、一列に構成され、かなり広い面積です。どのようにこれらのエレメントにPCMやDSDのビットが割り当てられ、DA変換されるのかは非公開ですが、精密感があり、いかにもハイエンドというフレイバーを湛えています。
私の推察となりますが、これだけ数多くのエレメントを配置しているので、もし仮にFPGAによるΔΣ変調器が、ビットをランダムにエレメントに割り当てる(飛ばす)としたら、各エレメントには、微妙な誤差もあるはずなので、その誤差が相殺され、超弱音から最強音までの変換リニアリティー(変換の直線性)が高まり、広いダイナミックレンジや優れた高解像度変換が実現できると想像できます。
ここでDA変換された信号は、次にMUSEの高精度、高音質オペアンプを使用したローパスフィルター、2,000V/μsを誇るハイスピード電流強化型出力段「ESOTERIC-HCLD」でアナログ出力される仕組みです。また、同社独自の電流伝送方式に対応するES-LINK Analog出力も装備しています。
これらのDA変換フローに対して、クロック回路も大切な要素となります。K1Xの内部には、専用のGrandioso Custom VCXO II(位相雑音の少ない電圧制御型水晶発振器:±0.5ppm)を使用したクロック回路を装備し、高精度なマスタークロックを生成し、前述のFPGAにクロックを供給します。このFPGAから再生に適合するクロックをVRDS ATLASやDACに供給する仕組みです。また、新たな音質変化や高解像度再生が期待できる10MHz高精度外部クロックジェネレーターの接続も可能にしていることも魅力ですね。
さらに、私が初めてK1Xに出会った時に驚きを感じたのは、電源部でした。VRDSメカ用、デジタル処理用、左右のDAC/アナログ回路用に、4式のトライダル・トランスを使用した独立電源が搭載されていました。筐体は2階建て構造で、前述の信号処理基板に悪影響を及ばさないように、電源部は下段に配置されています。電源レギュレーターはディスクリート構成で、スーパーキャパシター「EDLC」というコンデンサーも合計76式使用しています。これは合計容量2,050,000μF=2.05Fという大容量で、個人的には強力で安定した回路駆動力に加えて、あたかもクリーンなバッテリーで回路を駆動するかのような音の透明度や、まろやかな質感を感じています。
さらにリアパネルの左右には、大型のコネクタが装備されていました。オプションの外部電源「Grandioso PS1」を接続するコネクタです。これを接続すると、K1X内部ではVRDSメカ用とデジタル処理用の2式の電源部のみが動作し、PS1は前述の一枚のDA変換基板をDAC部とローパスフィルター以降のアナログ出力部に分けて、1chあたり2式の電源で駆動する方式を考え出しました。
PS1の電源は左右合計4式で、K1X内部電源は2式ですから、合計6系統の独立電源で、回路全体を駆動するのです。こんな拡張性の高いSACDプレーヤーは、過去に登場したことはありませんね。唯一無二と言えるでしょう。チャレンジすべきことは、全てやったという、音質への執念や開発の情熱までも実感します。