<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME
エソテリックの「Grandioso K1X」を自宅に導入! 高音質SACD復刻盤を愛聴する日々
■さらに空間が広く奥行きが深まる。聴き慣れたCDから新たな発見も
私は、まずK1X本体を導入することにしました。2階のリスニングルームでは、Ayreのプリアンプ「KX-R Twenty」とモノラルパワーアンプ「MX-R Twenty」を使用し、主にVivid Audioの「GIYA G3-S2」をドライブしています。このシステムにK1Xを加えたのです。
実際に再生して感じたことは、極めて解像度が高く、今まで以上に空間が広く奥行きが深まったことです。背景が一段奥に引いた感じで、メイン音像が背景の前に定位する感じですね。このコントラストに魅了されます。ですから、冒頭のクラシックのリマスター盤を再生すると、ホールの奥行きが拡張された印象を受け、弦楽、木管、金管、打楽器などの各パートの配置関係などが浮き彫りとなります。かなり高密度な音質ですから、穏やかな弦楽パートの演奏では、乾いた質感の膨らみのある胴の響きが再現されます。
その木質感のある響きは実に魅力的で、搭載するクロックや電源部の効果も発揮され、ディスクに内包された情報をストレートに再現しているように思います。また、金管楽器では眩いほどの輝きを感じさせ、高域の伸びにも感心しました。さらにチェロやコントラバスには、重心の下がった重厚感があり、グランカッサの強打に高速レスポンスを感じました。
さらにこのK1Xで注目したことは、音の立ち上がりに強調感がなく自然であることです。スルーレート2,000V/μsの性能値を実現するESOTERIC-HCLD出力段は俊敏な立ち上がりを示すので、強音をイメージしがちで自然な音の立ち上がりではないように思えますが、実はそうではないのです。ピアノ、ヴァイオリン、ヴォーカルなどの弱音や消え入るような響きの余韻を聴いてみると、独特の深み、音の沈み込みを感じます。
これはDACのリニアリティ、ダイナミックレンジの広さだけではなく、この出力段(ローパスフィルター)の俊敏な音の立ち上がりに関係しているように思えます。真の俊敏な立ち上がりやドライブ力とは、強音だけではなく弱音の再現性までも高めてくれることだと常々感じています。この点においても、この出力段は入力信号に敏感で、弱音から強音までダイナミックレンジを広く増幅している印象を受けています。この特性を活かすためにも、RCA出力を最大2.5V、XLRバランス出力を最大5Vと高めに設定していると推察しています。
SACDだけではなく、CD再生も実に魅力的です。Master Sound Discrete DACの効果により、あたかもハイレゾを聴いているかのような豊かな倍音も再現されます。聴き慣れたCDからこれだけ高密度な音質が得られるとは、実に魅力的です。ちなみに、私はクラシック音楽以外では、マイルス・デイヴィスが好きです。特に、過去を振り返らず先へ先へと突き進む、ジャズ離れしたロックやファンク風のマイルス・ミュージックに魅了されています。
K1Xを愛用し、数多くの録音をしたマイルスのアルバムをCD、SACD、ハイレゾで堪能したいと考えているところです。そして、いつかは、オプションの外部電源Grandioso PS1や、やがて登場するはずの10MHzクロックジェネレーターGrandioso G1の後継モデルを招いて、システム化をしたいと思っているところです。