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PRVGP審査員・林 正儀氏が音質チェック

トーレンス「TD1500」レビュー。VGP「特別大賞」のアナログプレーヤーを評論家が自宅で聴く!

公開日 2024/09/06 06:30 林 正儀
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シンフォニーでは大編成の「幻想」をどう再生できるのか。トレースされる音数の多さも驚くほどで、聴き所はぶ厚い弦セクションと金管だ。低音がしまりコントラバスの動きが見えるようで、鐘の響きもリアルそのもの。こうなると次から次へ手がとまらない。往年の大指揮者ものではミュンシュ、モントウー、カルロス・クライバーなどに聴き入った。録音は古いが感動はいつまでも新鮮だ。

林氏宅での試聴取材時の様子

ボーカルも色々だが、ここでは昔のフォークや歌謡曲をかけよう。ジョーン・バエズの「風に吹かれて」はハイトーンがさえ渡り、シンプルで暖かみのあるギターに包まれた。浅川マキのダークさもよい。モノクロームのような寂しげな歌唱をぜひとも当時のLPで聴いて欲しいものだ。

そして復刻ものながら、「テレサテン/つぐない」は私の愛聴盤である。最新のリマスター、リカッティングで情報量や音域もぐっと拡張されたムーディッシュで柔らかな響き。TD1500で聴くとテレサのあの肉声感やブレスまで一層リアルで、バッキングバンドもキレ味よく好感度バツグンだ。

MM型の2M Bronzeからここまでのパフォーマンスを引き出せるのは、TD1500の完成度が高い証拠だろう。このまま使って何の不満もないはずだが、ユーザーにはいずれアナログの醍醐味であるカートリッジ交換にもトライして欲しいものだ。

カートリッジ交換で音質はどう変わる?「聴けば聴くほど味わい深く新たな発見がある」



ここで手持ちのカートリッジにつけかえよう。5〜30グラムまで様々な重量に対応が可能。MMは軽針圧なシュアー、MC型の方はオルトフォンのSPUや「MC20」。国産の「FR-7F」、サテンなども試してみた。

林氏が所有する様々なカートリッジに交換しての試聴も実施

当然ながら音調は十人十色。シュアーの「M77」は大らかなアメリカンサウンドでタッチが太い。前に出る音だ。クラシックには向かないが、元気のよいジャズやロックのエネルギーを楽しませる。

音楽ジャンルを問わず主役で使うのはオルトフォンだ。SPUシリーズの中でも「#1(ナンバーワン)」は4グラムという重針圧。これは音楽全体の骨格がしっかりした伝統的なピラミッドバランスで深みのある音色。ボーカル音域の厚みは他を寄せつけない。

MC20は現代的なワイドレンジでスマートな音だ。FR-7Fは正統派リスナーむけの端正なサウンド。高音の倍音成分が豊かになったのか、クラシックピアノや弦の潤いが美しい。

ざっとそんな印象だが、TD1500はカートリッジの音色を鮮明に引き出してくれる。聴けば聴くほど味わい深く新たな発見があるのも素晴らしい。演奏の臨場感が満喫できる現代プレーヤーだ。

(提供:PDN)

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