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PRついに一般販売開始! クラファンで話題になったハイブリッド方式の“ながら聴き”完全ワイヤレス

開発者に訊いた!「骨伝導」×「気導音」を実現したラディウスの“ながら聴き”完全ワイヤレス「Beethoven」を徹底レビュー

公開日 2024/09/24 07:27 野村ケンジ/編集部
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■装着性にこだわる構造設計、デザインとは



骨や軟骨から離れた筐体本体にドライバーを搭載し、その振動をリングパーツで伝える一方、気導音も筐体から再生される仕組みだ
骨伝導の弱点を気導音で補うユニークなハイブリッド方式は、音質を重視した結果採用されたのだ。「ダイナミック骨伝導ドライバー」の詳細は特許出願中ということもあり明かされなかったが、ネックバンド方式のように加振された筐体を側頭部に押し付けるのではなく、振動を生み出すドライバーは骨や軟骨からは離れた筐体内部に格納されており、デザイン上の個性にもなっている「リングパーツ」を使って振動を伝えているという。そして、さらに中高域を担う気導音が筐体の音道孔から発せられる仕組みである。

リングパーツを採用した理由は主に2つあるという。1つは、耳に骨導音をしっかり伝えるために、筐体を固定して振動伝達部を圧着させる手段として。もう1つは、環境音と筐体から発せられる気導音の通り道を確保するためだ。そうした基本設計はラディウスとテムコジャパンで協議を重ねて仕様が固まっていったという。


リングパーツは振動を正しく伝えるために、ABS素材の筐体とは異なるナイロン素材を採用するなど徹底的に音質と装着性を重視した設計になっている
「優れた装着性と振動伝達効率の向上、この2つを両立する要となるのが、筐体から伸びるリング形状のパーツで振動を伝達する構造でした。また、イヤーフックを用いた耳掛け方式により、装着時の安定性を向上しています。デザイン工程としては、構造の方向性がある程度定まった段階で、シンプルな円筒形の筐体に無骨なリングパーツを接合したプロトタイプを作成しました。そこからユーザビリティを考慮し、リングパーツの角度や大きさ、装着感を検討していきました。同時に、目指す音質を実現するため、渥美さんと密にコミュニケーションを取りながら、ドライバーのサイズや各部の素材など、様々な改良を重ねました。そして、基板やバッテリーなどのコンポーネントの形状や実装位置を最適化し、それらを製品の骨格と捉え、『Beethoven』の外観スケッチを作成しました」(上薗氏)。

リングパーツには着脱式のイヤーピースが装着されている。耳掛け方式のオープンイヤータイプの多くは、フック部のみで装着性を調整するモデルが多いが、「Beethoven」はフック部に加えて耳甲介に固定するリングパーツにより、幅広い人の耳に対応できるよう工夫されているのだ。しかも、このイヤーピースの大きさや硬度の最適化にもかなりの時間を要したという。


写真はテムコジャパンが準備したプロトタイプとBeethoven。リングパーツを使うことを決めた後、最適な角度や大きさになるまで、膨大な時間を有したと想像できる
「イヤーピースは、触感だけを重視して柔らかくしすぎると、振動の伝達効率が低下し、リングパーツから外れやすくなってしまいます。逆に硬過ぎると着脱が困難になり、長時間の装着で痛みを生じやすくなってしまいます。また、リング径が大きすぎると充電ケースに収納できないという物理的な問題もありました。そのため、イヤーピースの硬度は装着性と伝導効率のバランスを慎重に調整し、最大のLサイズはMサイズ形状の側面に装着をサポートするヒレが生えた『フィン形状』を採用しました」(上薗氏)。


締めつけ感が少ないのにフィット感は高い独自のイヤーピース
また、骨伝導イヤホンは振動を伝える方式ゆえに相応のパワーが必要であり、一般的な空気伝導イヤホンよりもバッテリーの消費が大きい。そのため、バッテリー容量の調整やそれを内包する筐体の設計に非常に苦労したという。日常使いに支障がない動作時間を考慮したバッテリーの選定と、筐体内部を極限まで省スペース化することで、コンパクトながらイヤホン単体で最大5時間の動作時間を実現している。

「Beethoven」は骨伝導イヤホンでありながら完全ワイヤレス方式で、一般的なネックバンド方式のように髪型や姿勢によって首周りに違和感が生じる問題を回避できる。デザイン面でも、ユーザビリティを考慮して緻密に計算されているのだ。

IPX4の防滴仕様のため、アウトドアやエクササイズなどアクティブなシーンでも活躍できる。

■実際の音は驚くほど音漏れがなく、爽快かつ明瞭なサウンド


「Beethoven」は音漏れの抑制にもこだわっている。実際に筆者と編集スタッフで確認したが、音楽をノリよく楽しめる音量にも関わらず、音漏れが皆無だったことに驚いた。ここまで音が漏れないのは「リバーサルフェーズアンチリーク」という独自構造が関係している。簡単に言えば、アクティブノイズキャンセリングと同様に音漏れの音を逆位相の音で打ち消しているのだが、その仕組みがかなりユニークなのだ。

そもそも骨伝導は、骨に触れることで音として認識される固体振動音であるため、音漏れの原因となる空気振動音を発生しにくい仕組みだが、わずかながら振動子の前後の振幅方向に空気振動音が発生する。一般的な骨伝導イヤホンの場合、構造上、筐体の押し付けた面の反対側から音漏れの原因となる音が発生する。しかし、「Beethoven」は耳と筐体との間に隙間が設けられているため、回り込んでくる回折音を活用し、漏れ出す音をキャンセリングする仕組みになっている。リングパーツを介して振動を伝達する独自構造によって実現されたもので、その効果は絶大だ。

リングパーツを使った筐体と耳と隙間がある構造を生かして音漏れをキャンセリングする

ぜひ皆さんにも実際のサウンドを聴いてほしい。“ながら聴きイヤホン”に期待する以上の、活き活きとしたメリハリのあるサウンドが存分に楽しめる。低域も十分な量感が確保されているし、何よりもフォーカスの高さが嬉しい。中高域もくぐもることなく、爽快かつ明瞭。艶のある女性ボーカルがしっかり耳に届いてくれる。それでいて、周囲の環境音もしっかり把握できるのだから恐れ入る。なんとも不思議な、これまでに聴いたことのないサウンドが体験できる画期的な製品だ。

(協力:ラディウス)

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