PR4ウェイマルチアンプでスピーカーの限界に挑む!
音楽ファンの桃源郷現る。アキュフェーズのデジタル・チャンデバを自宅でロングランテスト!
マルチアンプシステムで重要なのが、音楽信号を周波数で帯域分割するチャンネルデバイダーの存在だ。アキュフェーズは長年製品開発に取り組んできたが、ここで紹介する「DF-75」は、最新デジタル技術により誕生したデジタル・チャンネルデバイダーである。炭山アキラ氏が本機を自宅システムに組み合わせ、長時間の試聴に取り組んだ。
さらに、炭山氏は本稿執筆後もDF-75を使用し、その顛末を自身のnoteに記載している。noteへのリンクは記事の最終段に記載しているので、本記事と合わせてぜひ読んでほしい。
我が家では、2種類のレファレンス・スピーカーを使っている。一つは我が人生と一体不可分になっているフルレンジ・スピーカーによるバックロードホーン、もう一つはその対極に位置する4ウェイ・マルチアンプ・システムである。
マルチアンプなんてお金のかかることを、とお思いの人もいるだろうが、我が4ウェイ「ホーム・タワー」は当初フォステクスの一般販売ユニットを用いて構築し、チャンネルデバイダーはある出版社のムック付録を2台スタックで使い、トゥイーター/ミッドハイ/ミッドバスの帯域分割を行っていた。
ミッドバスの下はキャビネットを逆ホーンとしてアコースティックに落とし、ウーファーのハイカットには、こちらもムックの付録にバスチャンデバというものが出たので、それを活用している。
当初のセットで全部合わせても20万円くらい、その後ミッドバスを限定ユニットに交換したが、それでも30万円には届いているまい。もっとも、ウーファーの駆動にはアキュフェーズ「P-4100」、ミッドバスには同社「A-35」を使っているから、それで楽に100万円は超えてしまうが。ちなみにミッドハイとトゥイーターはフォステクスの1万円PWMアンプで駆動している。
マルチのキモはウーファーの駆動力とミッドバスの表現力にあり、という信念から高級アンプを用いているが、もちろんこちらも廉価アンプで済ますことは可能、即ち炭山流「限界マルチアンプのススメ」である。
そんな構成でも、分割振動域を可能な限り排除したマルチアンプの旨味は十分に感じられ、もうずいぶん長く愛用しているのだが、ここへ大変な打診が舞い込んだ。アキュフェーズの新型チャンネルデバイダー「DF-75」でその4ウェイを鳴らしてみないか、というものだ。限界マルチからいきなりハイエンドへの飛躍となるが、スピーカーそのものの伸びしろがまだまだあることは、さまざまな実験で認識できている。願ってもないことと二つ返事で打診を受けた。
ここでDF-75について、少し解説しておこう。本機は4ウェイのチャンネルデバイダーで、信号処理は全てデジタルで処理される。スロープ特性はPASS/6/12/18/24/48/96dB/octの7段階から選ぶことができる。
カットオフ周波数は10Hzから50kHzと幅広く、今次の新製品では従来59ポイントだったカットオフ周波数が、何と3101ポイントに激増した。例えば、クロスのポイントでたまたまスピーカー側のディップに当たってしまったという時、ほんの数Hzクロスを近接させることによりそれを潰す、といった実にきめ細かなチューニングが可能になる。
アクティブ/パッシブ含め、これまでどんな装置でも実現することが事実上不可能だったのに、本機は易々とその障壁を飛び超える。いやはや、大変なチャンデバである。
それぞれのユニット間で発音位置をそろえるためのタイムディレイ機能が装備されているのは、デジタルチャンデバならではの強みといえる。本機では±3000cmというとんでもないディレイが装備されている。加えて、本機にはクロスオーバー・ポイントにおける信号の時間差を自動補正してくれる「ディレイ・コンペンセーター」機能が搭載されているのもありがたい。
今回の実験に当たり、編集部がアキュフェーズのパワーアンプを2台、我が家へ送ってくれたので、オール・アキュフェーズによる試聴がかなった。ウーファーを愛用の「P-4100」、ミッドバスを「P-4600」、ミッドハイを「A-48」、トゥイーターをこちらも自宅レファレンスの「A-35」というラインアップである。
同社のデジタルチャンデバは、以前自宅で5ウェイを構築していた頃に「DF-45」を借りていたので、気心は知れている。しかも、限界マルチとはいえ長年使って大体のデータは出し尽くしたシステムだ。
設置が終わってものの2時間もあれば、ほぼ満足すべき特性が出た。スロープはいろいろ試した結果、我が「ホーム・タワー」では−18dB/octが最もそぐわしかった。それより下だと雑味が増え、より急峻なスロープではどことなく寂しい音になるような気がしたためだ。ミッドバスのローカットのみ−6dB/octとしたが、これはキャビネットによるアコースティックな減衰で、−12dB/octくらいには下がっているからだ。
面白いのは、−18dB/octくらいになると、ユニットの正相/逆相がほとんど気にならなくなることだ。それで今のところ全て正相で聴いているが、そのうちクロス周波数の90度分、ディレイをかけてみようかと思う。
音は当たり前だが “限界” 比で情報量が激増、不思議なのは、ウーファーをドライブするアンプが変わっていないのに、低域のスピード感が劇的に向上したことだ。クロスオーバーの違和感も全然なく、ミッドバスとミッドハイの1kHzクロスが声を濁すこともまったくない。全身に力がみなぎり、全域のスピード感が高度にそろって、音楽が吹き出すように部屋中へあふれ返る。もう至福の時間という言葉以外を思いつかない。
クラシック、ジャズ、ポップス、器楽、声楽、変態ソフトと聴きまくったが、ジャンルの得手不得手、苦手な楽器や帯域などがどこにもなく、何を聴いてももうただ音楽の奔流へ身を任せるだけ、という音楽ファンにとっての桃源郷が我がリスニングルームに現出した。劇的に良くなることは「前提」として構えていたが、そんな事前予想を軽々と飛び越え、これまで体験したことのない領域へ、DF-75と同社アンプ群は我がスピーカーを飛翔させてくれた。
さて、困ったのはこの取材終了後である。こんな音を聴いてしまったら、もう元の限界マルチへ戻ることなど出来はしない。何とか長期戦でこの境地へ近づけるよう、少しずつ陣容を整えていこうと考えている。
【編集部注】
この取材を終えたあとも、炭山氏はさらに自宅でDF-75の追試を実施。そちらの模様は炭山氏のnoteにも掲載されているので、合わせてぜひご覧いただきたい。
【追試1】アキュフェーズDF-75を追試する
【追試2】アキュフェーズDF-75をさらに追試する
【追試3】アキュフェーズDF-75をもうちょっと追試する
(提供:アキュフェーズ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です
さらに、炭山氏は本稿執筆後もDF-75を使用し、その顛末を自身のnoteに記載している。noteへのリンクは記事の最終段に記載しているので、本記事と合わせてぜひ読んでほしい。
自宅の4ウェイスピーカーに最新チャンデバを組み合わせ
我が家では、2種類のレファレンス・スピーカーを使っている。一つは我が人生と一体不可分になっているフルレンジ・スピーカーによるバックロードホーン、もう一つはその対極に位置する4ウェイ・マルチアンプ・システムである。
マルチアンプなんてお金のかかることを、とお思いの人もいるだろうが、我が4ウェイ「ホーム・タワー」は当初フォステクスの一般販売ユニットを用いて構築し、チャンネルデバイダーはある出版社のムック付録を2台スタックで使い、トゥイーター/ミッドハイ/ミッドバスの帯域分割を行っていた。
ミッドバスの下はキャビネットを逆ホーンとしてアコースティックに落とし、ウーファーのハイカットには、こちらもムックの付録にバスチャンデバというものが出たので、それを活用している。
当初のセットで全部合わせても20万円くらい、その後ミッドバスを限定ユニットに交換したが、それでも30万円には届いているまい。もっとも、ウーファーの駆動にはアキュフェーズ「P-4100」、ミッドバスには同社「A-35」を使っているから、それで楽に100万円は超えてしまうが。ちなみにミッドハイとトゥイーターはフォステクスの1万円PWMアンプで駆動している。
マルチのキモはウーファーの駆動力とミッドバスの表現力にあり、という信念から高級アンプを用いているが、もちろんこちらも廉価アンプで済ますことは可能、即ち炭山流「限界マルチアンプのススメ」である。
そんな構成でも、分割振動域を可能な限り排除したマルチアンプの旨味は十分に感じられ、もうずいぶん長く愛用しているのだが、ここへ大変な打診が舞い込んだ。アキュフェーズの新型チャンネルデバイダー「DF-75」でその4ウェイを鳴らしてみないか、というものだ。限界マルチからいきなりハイエンドへの飛躍となるが、スピーカーそのものの伸びしろがまだまだあることは、さまざまな実験で認識できている。願ってもないことと二つ返事で打診を受けた。
きめ細かなチューニングが可能
ここでDF-75について、少し解説しておこう。本機は4ウェイのチャンネルデバイダーで、信号処理は全てデジタルで処理される。スロープ特性はPASS/6/12/18/24/48/96dB/octの7段階から選ぶことができる。
カットオフ周波数は10Hzから50kHzと幅広く、今次の新製品では従来59ポイントだったカットオフ周波数が、何と3101ポイントに激増した。例えば、クロスのポイントでたまたまスピーカー側のディップに当たってしまったという時、ほんの数Hzクロスを近接させることによりそれを潰す、といった実にきめ細かなチューニングが可能になる。
アクティブ/パッシブ含め、これまでどんな装置でも実現することが事実上不可能だったのに、本機は易々とその障壁を飛び超える。いやはや、大変なチャンデバである。
それぞれのユニット間で発音位置をそろえるためのタイムディレイ機能が装備されているのは、デジタルチャンデバならではの強みといえる。本機では±3000cmというとんでもないディレイが装備されている。加えて、本機にはクロスオーバー・ポイントにおける信号の時間差を自動補正してくれる「ディレイ・コンペンセーター」機能が搭載されているのもありがたい。
低域のスピード感が劇的に向上
今回の実験に当たり、編集部がアキュフェーズのパワーアンプを2台、我が家へ送ってくれたので、オール・アキュフェーズによる試聴がかなった。ウーファーを愛用の「P-4100」、ミッドバスを「P-4600」、ミッドハイを「A-48」、トゥイーターをこちらも自宅レファレンスの「A-35」というラインアップである。
同社のデジタルチャンデバは、以前自宅で5ウェイを構築していた頃に「DF-45」を借りていたので、気心は知れている。しかも、限界マルチとはいえ長年使って大体のデータは出し尽くしたシステムだ。
設置が終わってものの2時間もあれば、ほぼ満足すべき特性が出た。スロープはいろいろ試した結果、我が「ホーム・タワー」では−18dB/octが最もそぐわしかった。それより下だと雑味が増え、より急峻なスロープではどことなく寂しい音になるような気がしたためだ。ミッドバスのローカットのみ−6dB/octとしたが、これはキャビネットによるアコースティックな減衰で、−12dB/octくらいには下がっているからだ。
面白いのは、−18dB/octくらいになると、ユニットの正相/逆相がほとんど気にならなくなることだ。それで今のところ全て正相で聴いているが、そのうちクロス周波数の90度分、ディレイをかけてみようかと思う。
音は当たり前だが “限界” 比で情報量が激増、不思議なのは、ウーファーをドライブするアンプが変わっていないのに、低域のスピード感が劇的に向上したことだ。クロスオーバーの違和感も全然なく、ミッドバスとミッドハイの1kHzクロスが声を濁すこともまったくない。全身に力がみなぎり、全域のスピード感が高度にそろって、音楽が吹き出すように部屋中へあふれ返る。もう至福の時間という言葉以外を思いつかない。
クラシック、ジャズ、ポップス、器楽、声楽、変態ソフトと聴きまくったが、ジャンルの得手不得手、苦手な楽器や帯域などがどこにもなく、何を聴いてももうただ音楽の奔流へ身を任せるだけ、という音楽ファンにとっての桃源郷が我がリスニングルームに現出した。劇的に良くなることは「前提」として構えていたが、そんな事前予想を軽々と飛び越え、これまで体験したことのない領域へ、DF-75と同社アンプ群は我がスピーカーを飛翔させてくれた。
さて、困ったのはこの取材終了後である。こんな音を聴いてしまったら、もう元の限界マルチへ戻ることなど出来はしない。何とか長期戦でこの境地へ近づけるよう、少しずつ陣容を整えていこうと考えている。
【編集部注】
この取材を終えたあとも、炭山氏はさらに自宅でDF-75の追試を実施。そちらの模様は炭山氏のnoteにも掲載されているので、合わせてぜひご覧いただきたい。
【追試1】アキュフェーズDF-75を追試する
【追試2】アキュフェーズDF-75をさらに追試する
【追試3】アキュフェーズDF-75をもうちょっと追試する
(提供:アキュフェーズ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です