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PRACTIVO&DITAコラボイヤホン「Q1」との組み合わせもチェック

使いやすくて、歌声なめらか。カジュアルDAP「ACTIVO P1」をボーカル中心に聴き込んだ

公開日 2024/12/05 06:30 高橋 敦
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そのQ1をP1のバランス駆動で聴くとこちらは、背景へのフォーカスはあえて少し甘くして、そのボケ味との対比でボーカルを際立たせる聴かせ方をしてくれた。

とはいえ昨今のスマホカメラのポートレイト撮影ほどあからさまに背景をぼかしはしない。サウンド全体の明瞭感や解像感も十分に高めた上で、音の感触、聴き心地を絶妙に柔らかめに仕上げる。そうすることで、背景もしっかり描き込みつつ、しかしリスナーが背景に気を引かれすぎることはなく主役のボーカルに自然と意識が向くという、見事なバランスを実現してある。なるほど全体の音作りも声、ボーカルを主役として押し出してくれるものになっているようだ。

■シルキーな歌声で、聴き慣れた曲の知らない一面が見えてくる


続いては声にさらに注目して、YouTubeの常闇トワさんChで公開されている「灰色と青/常闇トワ×星街すいせい(cover)」を視聴。歌声が強い!といえばこのお二人なデュエットをSUPERIOR EXでのシングルエンド駆動から聴いた。

すると前述のポートレイト感に加えてセンター音像がぐっと大柄になり、ボーカルの存在感をさらに強める見せ方。もしやとバランス駆動に戻すとその大柄さはすっと収まったので、シングルエンド側の特性のようだ。

昨今はバランスでもシングルエンドでも音の傾向を揃えたDAPが増えているが、本機のような「バランスとシングルそれぞれ個性あるんでそこも楽しんでください」な設計もまたオーディオ的にはアリ。個人的にはバランス駆動が好みだったが、最大限の「歌こそ主役!」再生を楽しみたい方にはあえてのシングルエンド駆動も試してみてほしい。

声の描写においては、手触りの滑らかさが本機の持ち味と言えるだろう。声の質感や子音などの尖った成分を立てすぎず、いわゆるシルキーな手触りに寄せてくれるタイプだ。するとこの歌の「悲しみの鮮度」が変わって聴こえてくる。声の描写がシャープな再生環境だと「まさにいまこの瞬間」胸を刺す悲しみとして聴こえるのが、本機のシルキーな声で伝えられると「少し時が流れてから」懐かしく振り返っている悲しみのように聴こえるのだ。

この「灰色と青」においてはそのような変化だったが、別の曲ではまた別の変化を感じられるだろう。オーディオによって歌の届き方が変わる。P1はそれを体感できるアイテムだ。

聴き慣れた曲、聴き慣れた歌声も、再生機器を変えると違うニュアンスが現れる。そんなオーディオの楽しみを手軽に楽しめるアイテムでもある

なお個人的にACTIVOサウンドは、特にトワ様の声の魅力にフィットすると感じた。高域側が落ち着くことで声の中低域の深みや響きが際立つ。

ほか、そもそもの声質がシルキーな歌い手との相性は当然抜群。例えば早見沙織さんの「琥珀糖」、そして猫又おかゆさんの「琥珀糖」という奇しくも同じ名前の2曲は、どちらの聴き心地も実にしっくりきた。

外観とサイズ感からの「カジュアルで使いやすそう!」という印象はまさに正解。しかし音を聴けばそれだけのモデルではないことも理解させられるだろう。ACTIVO P1は、エントリー機として無難にまとめられただけではない、確かな個性を備えたサウンドを持っている。これはまさに “オーディオアイテム” だ。




(協力:アユート)

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