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PR800万円クラスの弩級アクティブ・スピーカー

次世代の究極モニター、ジェネレック旗艦スピーカー「8381A」。オーディオ評論家4人が音質を徹底レビュー!

公開日 2025/01/06 06:30 山之内 正/小原由夫/鈴木 裕/角田郁雄
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オーディオの世界に本格的なアクティブスピーカーの波が押し寄せている。北欧・フィンランドのGENELEC(ジェネレック)は、創業以来45年以上にわたり、アクティブスピーカーにこだわり続けた設計を行い、世界中のスタジオやクリエイターから大きな評価を獲得し続けている。「アクティブ」を極めたジェネレックのサウンドとは、いかなるものか? そのフラグシップ「8381A」を4人のオーディオ評論家が聴いた。

GENELEC アクティブスピーカーシステム「8381A」(オープン、市場実売価格は税込8,000,000円前後/ペア)※測定用マイクロフォンおよびリファレンス・コントローラー「9320A」付属

■位相の乱れから解放されて現れる精度の高い空間再現(山之内 正)



一般家庭のリスニングルームで壁や床の反射による影響を回避することは事実上不可能で、楽器イメージの定位やステージ再現など空間描写と音色に何らかの悪影響が及ぶ。一方、専用アンプで駆動するアクティブ型スピーカーの場合は適切な信号処理技術と組み合わせることで個々の室内音響特性に応じた補正を行い、再生環境の影響を受けずにフラットな周波数応答と忠実な音色の再現を実現することができる。

山之内 正氏

音楽制作の現場でジェネレックのモニタースピーカーが圧倒的なシェアを持っているのはそこに理由があり、環境に左右されず正確なモニタリングができる性能が高く評価されている。

8381Aはジェネレックの技術の集大成というべき大型のモニタースピーカーで、音響特性を厳密に管理したスタジオはもちろんのこと、一般家庭のリスニングルームやシアタールームでも環境に左右されることなく立体的な音場を再現し、色づけがなく透明度の高い音を引き出す。録音された音楽への忠実度の高さという視点で見ても、次世代を担う究極のモニタースピーカーと呼んで良いだろう。


デュヴィエルが歌うモーツァルトのアリアは、伴奏なしに歌う最初のフレーズが始まった途端に部屋の空気が一変し、別の空間に連れて行かれたような錯覚に陥った。生身の歌手が数メートル離れた位置で一切の介在物なしに歌っているような自然さがあり、ソプラノの高音域に至るまでどこにも硬さやきつさがなく、耳にスーッと入ってくるなじみの良さが新鮮だ。フォルテピアノが入り、オーケストラが演奏を始めると、ステレオ音場が3次元全ての方向にいっそう大きく広がり、余韻に柔らかく包まれる心地よさに浸ることができた。

アスクヴィクの「リバティ」は浸透力の強いシンセサイザーがステレオ音場を満たして均等に広がる中、声のイメージはきれいに収束して前後左右の完全な中心にふわりと浮かぶ。サックスのソロは演奏しながら身体が動く様子までリアルに再現し、生のステージ体験を彷彿とさせる。

位相の乱れから解放されると空間再現の精度が上がるのは理にかなっているが、その事実を一瞬で気づかせてくれるスピーカーは希少な存在だ。

さまざまな名作を生み出しているエイベックスのスタジオ「Prime Sound Studio Form」のRoom S6にセッティングされた「8381A」

■静寂から立ち上がる瞬発力は体験したことのない凄まじさ(小原由夫)



民生用オーディオ・コンポーネントの楽しみは、例えばスピーカー“A”にマッチするパワーアンプは“B”なのか、それとも“C”だろうかという組み合わせの妙にある。一方で近年注目の集まるアクティブスピーカーは、パワーアンプがスピーカーシステムに包含されているので、その部分での楽しみは削がれる。

小原由夫氏

しかし今回の体験はそれを超越する説得力と力技があった。アクティブ型が純正組み合わせの最適解であることに他ならず、ましてや「アクティブスピーカーってPC用でしょ!?」なんていう誤認識とはまさしく次元も規模も違う。

ジェネレック8381Aが持つフリースタンディングによる設置/試聴位置の自由度の高さこそ、コンシューマーでも存分に使えるスタジオモニター/アクティブスピーカーとしての最大のセールスポイントだ。

5ウェイ/9スピーカーという大掛りな構成にしてはコンパクトにまとまった本体。化粧っ気のない無骨なマットブラック仕上げは、精悍というか、どこか威嚇的。それでもお世辞にもかっこいいとは思えない。キャビネット上部四隅に配された127mmドーム型スコーカーが、個人的には何だかなぁという印象なのだ。しかし、音を出した途端にそんなことはどうでもよくなる。音の鮮度とその勢いたるや、凄まじいものがあるのだ。

専用アンプ「RAM-81」は外づけ。クラスDアンプで1chあたり2台を使用(ステレオで4台)。上部/下部それぞれにシリアル単位でマッチングさせたアンプが割り当てられる。アンプ総出力は5926W

驚くほどパワフルだが、同時に驚くほど静粛さを感じさせる。それはトランジェントのよさ、高S/Nに裏打ちされた音場の見通しのよさがもたらす。近年私が最も強く意識している音場の階層構造が極めて見通しよく、静寂の中から突如立ち上がる大音響の瞬発力は、過去に一度も体験したことのない次元だ。

しかも9基のドライバーユニットのつながりはシームレス。継ぎ目など一切感じない音の縫い合わせの巧みさにシビれた。久しぶりのアドレナリン&ドーパミン大噴出の体験。今日のことが後々尾を引きそうで怖い……。

接続端子はXLR アナログ入力とアナログ出力が各2系統、AES/EBUデジタル入力と出力が各2系統、GLMソフトウェアでの制御に使用するRJ45コントロール端子が4系統

■スピーカーで音楽を聴く意味を再定義する(鈴木 裕)



ジェネレックのモニター・スピーカーシステム8381Aの高い分解能の世界は、スピーカーで音楽を聴くという意味を再定義しそうなレベルに到達している。

鈴木 裕氏

レコーディングスタジオのラージモニターというと、壁に埋め込み固定設置されている場合が多い。しかし、8381Aではその形を取らない。メーカーは、フリースタンディング型と呼び(ホームオーディオではごく一般的だ)、モニタールームへ理想的に配置するための自由な設置が可能になると説明している。

重要なのは、スピーカーに内蔵しているGLM(ジェネレック・ラウドスピーカー・マネージャー)というソフトウェア(DSPと考えると分かりやすい)を使って、あらゆる規模のモニタリング・ルームに設置して、正確でパワフルなモニタリングを実現することだ。各ドライバーユニットの帯域分割、周波数特性とタイムアライメントの補正をしている。

その音について書こう。エリック・クラプトンの『アンプラグド』では、オーディエンスの拍手の分解能の高さと音色感の精度の高さに驚かされる。女性コーラスのなめらかで情のこもった再現性も高かった。そして、各音像の定位の明確なこと!

一番驚いたのはルイージ指揮、フィルハーモニア・チューリッヒによる『ワーグナー:前奏曲と間奏曲集』だ。マルチ・マイクを使った一般的なセッション録音だが、まるで各奏者を個別のブースに入れて録音したかのようなセパレーションであり、響きの混濁がない分解能の高さで恐るべき特性の良さを見せつけてくれた。

大事なのは、超高級プレーヤーやプリアンプを使って実現しているのではなく、理詰めの設計と1台1台の特性に合ったアンプを付属させ、GLMで調整している点だ。録音エンジニアはさぞかし仕事がやりやすいだろう。この音でミックスされた作品が世に出てくることも楽しみだ。

■スピーカーの存在が消えてしまう本機を高く評価(角田郁雄)



世界の著名なハイエンド・スタジオで活躍する北欧・フィンランドのジェネレックのモニタースピーカー。その代表作のひとつが、The Ones(ザ・ワンズ)で、私はオーディオファイルが愛用できる製品としても高く評価している。近年はThe Onesに組み合わせるアダプティブ・ウーファー・テクノロジーを開発。そしてさらに今回は、このテクノロジーを昇華させ、空間描写性や解像度を極限まで再現する究極のスタジオモニター、8381Aを登場させた。

角田郁雄氏

その構成は実に独創的だ。中高域同軸ユニットは、ウェーブガイドの中心に配置され、さらにそのガイドに4つのドーム・ミッドレンジを配置。低域ユニットとして、38cmウーファーをフロントに1基、サイドに2基搭載。左右各2式(合計4式)の専用アンプで中高域と低域をドライブするシステムだ。

私は普段、スタジオで同社のモニターを使っているが、8381Aの音は、今までに体験したことのない生々しい音であった。再生音源に内包する情報と再生機器の音がストレートに再生され、録音場所に臨んでいるかのような感覚に陥ったのである。

私のレファレンス、ノルウェーの音楽レーベル2Lのヴォーカル曲を再生すると、歌い手が微妙に体の向きを変えて歌う様子が目の前に見えてくる。この再現は、過去に体験がないほどリアルだ。マイクが捉えた音そのものが伝わってくる再現と言えるだろう。弦楽、オルガン、女性合唱団、ソリストが加わる曲では、歌唱が肉声にように美しく、カラーレーションを排した鮮度の高い弦楽の響きを再現。さらにパイプオルガンに空気を送り込む音や重低音も透明度高く再生された。

ピアノ・ジャズトリオでは、演奏の動作が見えるようで、その空間描写性や弱音と倍音再現性は見事というよりほかない。スピーカーの存在が消えてしまう。私は本機を高く評価する。

製品Photo by 田中 慶

(提供:ジェネレックジャパン)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.194』からの転載です

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