既存機器は対応不可、PS3はフル対応か − 見えてきた「Blu-ray 3D」の詳細
■Blu-ray 3D再生に必要な「2つのハードル」
Blu-ray 3Dを再生するためには、大きく分けて2つのハードルを乗り越えなければならない。
まずは「MPEG-4 MVC」のデコードが可能であるかどうかということが最初の関門になる。
「MPEG-4 MVC」の概要をかんたんにご説明しよう。MPEG-4 MVCでは、3D対応のBlu-rayDIGAのニュースリリースでも説明があったように、左眼、もしくは右眼用の映像を基準映像とし、これは従来のMPEG-4 AVCと同等の方式で圧縮を行う。もう片側の映像については、基準映像と重複する部分は記録しないで共用し、データ量を削減している。このため、フルHD 3D映像の記録のために、通常の方法ではフルHD映像×2のデータ量となるところを、約1.5倍程度のデータ量に抑えていることになる。
■MPEG-4 MVCのデコードはこれまでのシステムLSIでは難しい
さて、Blu-ray 3Dのデータ量は通常の2D フルHD映像の約1.5倍程度なので、MPEG-4 MVCのデコードはそれほど大きな負荷ではないのではないか、と考える方もいるかもしれない。だが、もちろん話はそれほど単純なものではない。
MPEG-4 MVCのエンコード自体が、基準映像ともう片側の映像の相関関係を利用しているため、デコード時にも、左右両方の映像の相関を常に参照しながら行う必要がある。これがかなり負担のかかる処理であることはお分かり頂けるだろう。
さらにいうと、通常のBDレコーダー/プレーヤーに搭載されているシステムLSIは、あらかじめ想定されている用途に応じてハードウェアの仕様をデザインしていることが多いため、ハードウェアアーキテクチャーの根本的な問題として、右眼用/左眼用の映像の相関関係を見ながらデコードする処理を行うのが難しい。「恐らく、PS3以外の既存の2D対応のレコーダー/プレーヤーで、MPEG-4 MVCをデコードすることは不可能なはずだ」と、あるAVメーカーの技術者は語る。残念だが、既存の(PS3を除く)レコーダー/プレーヤーをお持ちの方がBlu-ray 3Dソフトを再生するためには、対応モデルに買い替えるしかなさそうだ。
なお、ここで付け加えておくと、パナソニックが発表したBlu-ray 3D対応のDIGA「DMR-BWT3000」「DMR-BWT2000」「DMR-BWT1000」(関連ニュース)と、その少し前に発表した2D対応機の「DMR-BW880」「DMR-BW780」「DMR-BW680」(関連ニュース)に搭載されたシステムLSI「Uniphier」はプロセスルールも同じ45nmで、アーキテクチャーも同様だ。
このスペックだけを見ると、BW880/780/680でもBlu-ray 3Dの再生ができるかも、という期待が膨らむが、実際にはBW880/780/680に搭載されているメモリ容量が3D対応機に比べて少なく、また後でくわしく説明するが、HDMIのトランスミッターが3Dに対応していないなどの理由から、BW880/780/680をBlu-ray 3D対応にアップデートすることはできない。