防音・調音で音環境を良くする!<第1回>音の性質を知って防音・調音のセオリーを押さえよう
拡散反射し指向性の強い高域
指向性の少ない猪突猛進の低域
音には、反射したり、曲がったり(屈折)、回りこんだり(回析)、干渉するといった波動の性質がある。この波動の性質=振る舞い方には音の高低が関係する。音の高さは、低域、中域、高域に大きく分けられる(コラム参照)。
低域は振動数が少ないため、波長は長く、そのため空気中での摩擦では減衰しにくい。モノにぶつかると回りこんでしまうため、いったん放出されてしまうと止めるのはなかなか難しい。吸音や遮音が困難である。逆に高域は振動数が多いため、波長が短い。そのため、空気中での摩擦も多く、減衰しやすい。少しでも障害物があれば、拡散反射する性質を持つ。
以上をもとにして、低域と高域の動きを室内で考えてみよう。低域は室内では猪突猛進で突き進み、ソファや壁などにあたっても、回りこんでしまう。ゆえに、低域には指向性が少ないといわれている。逆に高域は障害物で拡散反射してしまい、指向性が非常に強い。
ホームシアターの場合、映画などのコンテンツ自体に低域が多く、0.1ch分が用意されているほどだ。だが、前述したとおり、低域は独特の振る舞い方をするため、遮音も調音も難しい。そのため、ホームシアタールームの音環境を整備する際は、低域の処理が最も重要と言われている。低域を制する者はホームシアターを制すといわれる(?)所以だ。
【コラム】低域の定義 私たちが「低域」と呼んでいる周波数の範囲は、実は部屋の大きさや吸音率によって変化する。一例を上げると、6畳間で吸音率0.3(30%吸音されている状態)の部屋の場合、低域は430Hz以下が該当する。しかし、同じ吸音率0.3の状態で容積が20畳になると236Hz以下が低域となる。つまり、部屋が大きくなればなるほど(かつ吸音率が高くなればなるほど)低域と呼ばれる周波数が低くなり、回折現象を引き起こしにくくなるのだ。 |