“クラウド + HTML5” がもたらすオーディオビジュアル「次の一歩」
■クラウドが従来のAVコンテンツの鑑賞スタイルを変える
SaaSの場合、ソフトウェアを含むサービスとして提供することになるので、オーディオ/ビデオ系のサービスにしても「ダウンロードして聴く・見る」という、従来型鑑賞方法の枠を超えたクラウドサービスが出現する可能性がある。
たとえば、スマートフォンユーザであればピンとくるはずの「Foursquare」(GPS機能を活用した位置情報SNSアプリ)や「Instagram」(写真共有アプリ)は、いずれもAmazon EC2を利用して構築されたサービスで、ユーザー間の情報交流を促す機能を備えている。オーディオ/ビデオ愛好家向けのSNS機能を備えたサービスは今後登場するだろうし、実際Appleは、iTunes/iOSユーザー向けに「Ping」というSNS機能をすでに提供している。
それでもクラウド/SaaS型のオーディオサービスがピンとこないという場合には、従来型ジュークボックスソフトとの比較で考えれば理解しやすいかもしれない。
ジュークボックスソフトは、CDから取り込んだオーディオデータを符号化(エンコード)したうえで、手元のコンピュータに保存する。そのオーディオデータは基本的にそのジュークボックスソフト専用で、他のソフト/コンピュータから聴くことは想定されていない。オーディオデータは"雲よりこちら側"だ。
一方のクラウドサービスでは、オーディオデータは"雲の向こう側"であるインターネットのサーバ上に保管され、ユーザー認証さえ通ればどのコンピュータからでも利用できる。視聴用ソフトもハードディスクへのインストールが必要な専用型ばかりではなく、Webブラウザ上で動作するプレーヤーが用意されていることもある。日本でも利用できるサービスとしては、「Audio Galaxy」が好例だろう。
聴く場所を選ばないことだけがクラウドの利点ではない。Appleが北米で提供を開始している「iTunes in the Cloud」は、iTunes Storeからダウンロード購入したものかCDから取り込まれたものかを問わず、iTunes Storeで取り扱いのある楽曲データを所有していることが確認(データ照合を実行)できたら、iTunes Storeから同じ曲をダウンロードできる。
音楽や映像など"デジタルデータ化可能なモノを所有する"ことの意味を問い直す、クラウドならではの機能といえるだろう。