元日本コロムビアの本間孝男氏が解説
なぜヨーロッパではBlu-ray Audioが好調なのか? 元洋楽ディレクターが分析する世界のハイレゾ事情
■ノルウェーのレーベル「2L」がBlu-ray Audioに先鞭を付ける
オーディオに特化したBlu-rayディスクを世界で初めてリリースしたのは、ノルウェーの2L(Lindberg Lyd)だ。2008年発売のトロンハイム・ソロイスツによる弦楽アンサンブルのオムニバス『ディベルティメンティ(Divertimenti)』(2L-050-SABD)が最初の作品となった。SACD+BDのセットで販売され、BDにはステレオと5.1chサラウンドが4つの音声方式(リニアPCM、DTS-HD MA、Dolby TrueHD、Dolby Digital)で収められた。なかでも大きな反響を呼んだのはリニアPCM 192kHz/24bit。本作はグラミー賞ノミネート作品でもある。
2Lに続いて、Blu-ray Audioの市場に参入したのは、クラシックCDの売上が独グラモフォンを上回り世界一となったドイツのNAXOS(ナクソス)だ。同社トップのクラウス・ハイマンCEOは、有望な高音質ディスクはBlu-ray Audioであると公言し、すでに30数タイトルを発売。2ch+5.1chサラウンドを96kHz/24bitまたは88.2kHz/24bitで収録している。Blu-ray Audioで旧譜カタログは出さず、全て新譜という方針を採っている。
ここ日本では2012年にオーディオメーカーのクリプトン、BDのオーサリングなどを行うキュー・テック、クラシックレーベルのカメラータ・トウキョウらがBDにハイレゾ音源を収めた「BDミュージック」を提案。カメラータなどがパッケージを発売済みだが、国内の大手レーベルもこれに続く動きを見せている。
■ロックファンにBlu-ray Audioを印象づけた話題作
2012年末から2013年の年末にかけては、ロックファンにBlu-ray Audioを強く印象づける話題作が登場した。
レッド・ツェッペリン『Celebration Day(祭典の日)』は2CD+DVD+Blu-rayのセット。BDには2007年ロンドンのO2アリーナで開催されたトリビュート・コンサートのライブ映像とともに、ツェッペリン初のデジタル収録のリニアPCM 48kHz/24bitのサウンドトラックが収録された。サントラのみのBlu-ray Audioで発売され、同時にダウンロード販売も行われた。
ローリング・ストーンズ『GRRR!(グレイテスト・ヒッツ 1962-2012)』は2012年暮れに、ストーンズ結成50周年記念のベスト盤として、CD3枚組と共に、Blu-ray Audioで同時発売された。BDの大容量を活かし、ディスク1枚にストーンズの前期・後期からの50曲(3時間6分)が96kHz/24bitでリニアPCM、DTS-HD MA、Dolby TrueHD の3つの音声で収録してある。
イエス『Close to the Edge(危機)』はCD+Blu-ray Audioのセット。多くのロック・ファンを熱狂させた、イエス最高傑作の新リミックスである。マルチトラックからのミックスを担当したのはポーキュパイン・トゥリー(Porcupine Tree)を率いて活躍する英国ミュージシャンのスティーヴン・ウィルソンだ。1972年のオリジナル・ミックスのフラットトランスファーがリニアPCM 192kHz/24bitで収録され、これも話題となった。
■そして2013年、欧州ユニバーサルミュージックがBlu-ray Audioに参入
徐々に話題を集めていたBlu-ray Audioだが、大きな動きがあった。最大手のレコード会社ユニバーサルが、昨年Blu-ray Audioに本格参入したのだ。英国の欧州本部が中心となり“High Fidelity Pure Audio(HFPA)”と銘打って商品開発をすすめた。「HFPA」の特徴は主に以下の3点となる。
1)2chステレオおよび5.1chサラウンドを、96kHz/24bitまたは192kHz/24bitで、3つの音声方式(リニアPCM、DTS-HD MA、Dolby TrueHD)で収録する。
2)原則として、ディスプレイを用いることなく、BDプレーヤーのリモコンだけでCDのように再生できる。
3)ポータブルディバイスのためのMP3/FLACファイルのダウンロード・チケットを同梱する。
テストマーケットに選ばれたのは、親会社ヴィヴァンディの本部があるフランス。パッケージソフトの比率が64%と、欧州ではドイツに次いで2番目に高い国だ。5月〜9月のキャンペーン期間中、フランス国内に108店舗を構える流通大手のFNAC(フナック)が独占的に販売することになった。最初の30タイトルにはクライバーンのベートーベンやオスカー・ピータソン、スティービー・ワンダーの作品とともにジャック・ブレルやセルジュ・ゲーンズブール、ジョニー・アリデーなどフランスを代表するトップ・アーティストの名盤が数多く含まれ、これが好成績につながった。期間中の売上は50万枚に達した。8万枚を売り上げトップセールスに輝いたのは、フランスの歌姫ミレーヌ・ファルメールの『Monkey Me』(2012年)だった。
10月には英国でも30タイトルの先行発売が行われる。カラヤンのベートーベンやショルティのマーラーとともにニルヴァーナ『ネバーマインド』やクイーンの『オペラ座の夜』なども加わる。暮れのドイツでのマーケティングに続き、今年春にはカナダや米国を含む14カ国での販売も始まっていた。1月にはジョン・レノンの『イマジン』やセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ』といった誰もが知っているタイトルも加わり、ジャズ、クラシックの名盤も合わせると約100タイトルをリリース済み。欧州本部によれば早急に200タイトルまでカタログを増やす予定という。なお、国内ではそのうち20点が日本語の帯・解説書を付けて(株)ハピネット・ピーエムから販売されている。
オーディオに特化したBlu-rayディスクを世界で初めてリリースしたのは、ノルウェーの2L(Lindberg Lyd)だ。2008年発売のトロンハイム・ソロイスツによる弦楽アンサンブルのオムニバス『ディベルティメンティ(Divertimenti)』(2L-050-SABD)が最初の作品となった。SACD+BDのセットで販売され、BDにはステレオと5.1chサラウンドが4つの音声方式(リニアPCM、DTS-HD MA、Dolby TrueHD、Dolby Digital)で収められた。なかでも大きな反響を呼んだのはリニアPCM 192kHz/24bit。本作はグラミー賞ノミネート作品でもある。
2Lに続いて、Blu-ray Audioの市場に参入したのは、クラシックCDの売上が独グラモフォンを上回り世界一となったドイツのNAXOS(ナクソス)だ。同社トップのクラウス・ハイマンCEOは、有望な高音質ディスクはBlu-ray Audioであると公言し、すでに30数タイトルを発売。2ch+5.1chサラウンドを96kHz/24bitまたは88.2kHz/24bitで収録している。Blu-ray Audioで旧譜カタログは出さず、全て新譜という方針を採っている。
ここ日本では2012年にオーディオメーカーのクリプトン、BDのオーサリングなどを行うキュー・テック、クラシックレーベルのカメラータ・トウキョウらがBDにハイレゾ音源を収めた「BDミュージック」を提案。カメラータなどがパッケージを発売済みだが、国内の大手レーベルもこれに続く動きを見せている。
■ロックファンにBlu-ray Audioを印象づけた話題作
2012年末から2013年の年末にかけては、ロックファンにBlu-ray Audioを強く印象づける話題作が登場した。
レッド・ツェッペリン『Celebration Day(祭典の日)』は2CD+DVD+Blu-rayのセット。BDには2007年ロンドンのO2アリーナで開催されたトリビュート・コンサートのライブ映像とともに、ツェッペリン初のデジタル収録のリニアPCM 48kHz/24bitのサウンドトラックが収録された。サントラのみのBlu-ray Audioで発売され、同時にダウンロード販売も行われた。
ローリング・ストーンズ『GRRR!(グレイテスト・ヒッツ 1962-2012)』は2012年暮れに、ストーンズ結成50周年記念のベスト盤として、CD3枚組と共に、Blu-ray Audioで同時発売された。BDの大容量を活かし、ディスク1枚にストーンズの前期・後期からの50曲(3時間6分)が96kHz/24bitでリニアPCM、DTS-HD MA、Dolby TrueHD の3つの音声で収録してある。
イエス『Close to the Edge(危機)』はCD+Blu-ray Audioのセット。多くのロック・ファンを熱狂させた、イエス最高傑作の新リミックスである。マルチトラックからのミックスを担当したのはポーキュパイン・トゥリー(Porcupine Tree)を率いて活躍する英国ミュージシャンのスティーヴン・ウィルソンだ。1972年のオリジナル・ミックスのフラットトランスファーがリニアPCM 192kHz/24bitで収録され、これも話題となった。
■そして2013年、欧州ユニバーサルミュージックがBlu-ray Audioに参入
徐々に話題を集めていたBlu-ray Audioだが、大きな動きがあった。最大手のレコード会社ユニバーサルが、昨年Blu-ray Audioに本格参入したのだ。英国の欧州本部が中心となり“High Fidelity Pure Audio(HFPA)”と銘打って商品開発をすすめた。「HFPA」の特徴は主に以下の3点となる。
1)2chステレオおよび5.1chサラウンドを、96kHz/24bitまたは192kHz/24bitで、3つの音声方式(リニアPCM、DTS-HD MA、Dolby TrueHD)で収録する。
2)原則として、ディスプレイを用いることなく、BDプレーヤーのリモコンだけでCDのように再生できる。
3)ポータブルディバイスのためのMP3/FLACファイルのダウンロード・チケットを同梱する。
テストマーケットに選ばれたのは、親会社ヴィヴァンディの本部があるフランス。パッケージソフトの比率が64%と、欧州ではドイツに次いで2番目に高い国だ。5月〜9月のキャンペーン期間中、フランス国内に108店舗を構える流通大手のFNAC(フナック)が独占的に販売することになった。最初の30タイトルにはクライバーンのベートーベンやオスカー・ピータソン、スティービー・ワンダーの作品とともにジャック・ブレルやセルジュ・ゲーンズブール、ジョニー・アリデーなどフランスを代表するトップ・アーティストの名盤が数多く含まれ、これが好成績につながった。期間中の売上は50万枚に達した。8万枚を売り上げトップセールスに輝いたのは、フランスの歌姫ミレーヌ・ファルメールの『Monkey Me』(2012年)だった。
10月には英国でも30タイトルの先行発売が行われる。カラヤンのベートーベンやショルティのマーラーとともにニルヴァーナ『ネバーマインド』やクイーンの『オペラ座の夜』なども加わる。暮れのドイツでのマーケティングに続き、今年春にはカナダや米国を含む14カ国での販売も始まっていた。1月にはジョン・レノンの『イマジン』やセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ』といった誰もが知っているタイトルも加わり、ジャズ、クラシックの名盤も合わせると約100タイトルをリリース済み。欧州本部によれば早急に200タイトルまでカタログを増やす予定という。なお、国内ではそのうち20点が日本語の帯・解説書を付けて(株)ハピネット・ピーエムから販売されている。