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ビートルズハイレゾ化への伏線か?

命日を前に考える “ジョン・レノン全作品ハイレゾ化” の意味。元洋楽ディレクターが分析

公開日 2014/12/05 10:53 本間孝男
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デジタル・リマスターは192kHz/24bitで行われた

今回のハイレゾ・リイシューには、2010年の、生誕70周年CDのデジタル・リマスター(192kHz/24bit)が使用された。この2010年のリマスターはオノ・ヨーコが監修し、アビイロード・スタジオでレノン自身が立ち会ってミックスしたアナログ時代の音源が使われた。アビイロードからはアラン・ルース、さらにニューヨークのスターリングサウンドのジョージ・マリアーノ(2012年没)が招かれて作業を担当した。

『パワー・トゥ・ザ・ピープル(Power to the People)』

ユニバーサルの発表によれば、アナログマスターをPCMの192kHz/24bitにデジタル変換してProtoolsに記録。最終的にそれを96kHz/24bitにダウンコンバートしている。マスタリングにはEMIの「TG 12410」コンソール(1972年製)が使われた。同機は16chのマルチレコーダーに対応した真空管を使わないソリッドステートの調整卓。ピンク・フロイドの録音などで活躍した。信頼性が高く、1970年代後半までアビイロードで使われていたものだ。

フィジカル(物理)ディスクのリイシューも発売

なお12月3日には、ユニバーサル・ジャパンから日本独自でジョン・レノン7作品(下記参照)のフィジカル・リリースが行われた。いずれも紙ジャケット仕様だ。こちらも2010年のデジタル・リマスターが使用される。下記7作品ともにSHM-CD/プラチナSHM/SACDの3フォーマットで発売されている。

<SHM-CD/プラチナSHM/SACDされた作品>
・『ジョンの魂』
・『イマジン」
・『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」
・『マインド・ゲームス (ヌートピア宣言)」
・『心の壁、愛の橋」
・『ロックン・ロール」
・『ダブル・ファンタジー」

ジョン・レノンのハイレゾ音源のサウンドを確認する

それでは、ハイレゾ配信されている11作品の中から、特に筆者が重要だと考える4枚を実際に試聴して、レコーディング状況を振り返りながら、そのサウンドを分析していきたい。

【試聴1】
『イマジン(Imagine)』(1971年)
 FLAC 96kHz/24bit


録音は、ギターにジョージ・ハリスン、ベースはクラウス・フォアマン、ドラムスにはアラン・ホワイト、ピアノにはニッキー・ホプキンスなど、錚々たるメンバーが参加した。

1971年6月、ロンドン郊外ティッテンハーストのジョン・レノンの私邸に設けられたアスコット・スタジオで録音が開始された。前作に続き共同プロデューサーにフィル・スペクターを起用した。1インチ・テープを使う8トラックのマシーン、3M社「3M-56」で録音され、7月初旬にニューヨークのレコード・プラントでサックスやオケが追加録音された。

ハイレゾ化でアルバム全体の音の鮮度が極めて高くなっているが、ビット深度が16bitから24bitに上がった恩恵を最も感じたのは「眠れるかい?(How Do You Sleep?)」の冒頭。ニューヨーク・フィルのピックアップメンバーによるオケの私語を交えたノイズで始まるのだが、その臨場感がすごい。さらにこれまでリズムに隠れて聴こえなかったオケが見事に浮かび上がってくる。オリジナルは2chステレオと4chクアドラフォニックが作られたと言うが、4chバージョンの復活は無いのだろうか?

次ページ続いて『ジョンの魂』など重要作をレビュー

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