アップルTIPS
“マスター品質”にこだわるアップル音楽配信。新たに掲げた「Apple Digital Masters」とは何か?
アップルが、2012年2月から高音質化ソリューション「Mastered for iTunes」を展開していたことをご存知だろうか。今年8月、約7年半ぶりに「Apple Digital Masters」と名前を変えて新たなスタートを切った。
アップルは、なぜこのタイミングで同サービスのリブランディングを図ったのか。背景にある戦略と、良質な音楽コンテンツ制作にかける意気込みを読み解く。
■2003年から堅実な進化を遂げてきたiTunesの音楽ビジネス
Apple Digital Mastersの楽曲は、先週からPC・モバイル版のiTunes Storeで販売している。刷新されたロゴが、Apple Digital Masters作品であることの目印となっている。
筆者がiTunes Storeをざっと見渡した限りでは、クラシックにジャズ、洋楽ロックから国内アーティストのポップスまで、音楽ジャンルを問わず幅広い対応作品が並んでいる。
アップルのサイトに公開されている、Apple Digital Mastersのホワイトペーパーを読むと、新しいネーミングには「マスター音源がオーディオ体験向上にもたらす恩恵を、iTunesに限らずアップルのあらゆる音楽配信サービスに結びつける」ことが狙いとしてあるようだ。
振り返ればiTunes Storeは2003年春、当時はiTunes Music Storeとしてアップル初の音楽ダウンロード配信サービスをスタートした。日本では米国から少し遅れて2005年8月にサービスインしている。
当時はCDマスターを元に制作された128kbps/AAC形式のコンテンツ、約100万曲が1曲150円からという価格でダウンロード購入できた。やがて2007年5月にDRMフリーの高音質版「iTunes Plus」が始まり、256kbps VBRのAACでエンコーディングされた高音質タイトルが、通常の128kbps/AAC作品よ少し高い価格で販売された。
その後iTunes Storeでは、音楽だけでなく映画やミュージックビデオ、ポッドキャストなど様々な種類のコンテンツが取り扱われるようになり、先にも触れたように2012年2月から、24bitハイレゾマスター音源を元にエンコードされた「Mastered for iTunes」タイトルがストアに並んだ。
■ハイレゾ品質のマスター音源から配信用のAACファイルが作られる
では、Apple Digital Mastersに対応したコンテンツがどのように作られるのか、大まかな流れを紹介しよう。
基本的には、アーティストや音楽レーベルが制作したマスター音源を、アップルまたはアップルが提供するツールを使って、音源制作者がAACにエンコードする。それがiTunes Storeで販売される。
アップルでは音源制作者に対し、サンプリング周波数96kHzを理想とする24bit非圧縮WAV、またはAIFFのハイレゾマスターを使うことを推奨している。
マスター音源をエンコードするプロセスには、2つの段階がある。第1段階として、アップルが独自に開発したマスタリング品質のサンプルレートコンバーター(SRC)を使って、マスター音源を44.1kHzにリサンプリングする。このSRCは通常のダウンサンプリング処理の際に発生するノイズや音の歪みのリスクを回避するため、いったんCAF(Core Audio File)形式の32bit浮動小数点ファイルを、エンコーダ用のデータとして出力する。
その後、第2のステップとして、アップル独自開発のエンコーダーを使い、24bitマスター音源のダイナミックレンジ、解像度を可能な限り保ったAAC形式のファイルを生成する。このエンコーダーには、通常音源ファイルのダウンサウンプリング処理を行う際に用いることの多いディザリング(スムーズな変換処理を行うため意図的にノイズを加える処理)を含まないため、圧縮処理をかけながらも、スタジオマスターに迫る高品位な音源ファイルが作れる。
アップルでは独自開発のSRC、エンコーダーの処理性能について、Mastered for iTunesの誕生から7年間、定期的にブラッシュアップしてきた。現在もその高いクオリティを評価するエンジニアやアーティストが、自らが制作に関わる音源を続々とApple Digital Masters対応の音源としてリリースしている。特にiTunes Storeでダウンロード販売されているクラシック系タイトルは、今ではほぼ9割以上がApple Digital Masters対応を完了しているそうだ。
なおアップルでは、自社の制作環境で使われているものと同じツールを、オンライン上に公開している。制作者はこれをダウンロードし、最終的にApple Digital Mastersタイトルとして公開される256kbps/AACファイルの出来栄えがどのようになるのか、手元の環境でシミュレーションできる環境が整っているというわけだ。
■アップルの音楽サービスが「ハイレゾ対応」になる可能性はあるのか
現在アップルが販売しているハードやソフトには、iOSデバイス(iPhone/iPad/iPod touch)とiTunes(今秋にはApple Music appに切り替わる予定)がある。今後アップルは、Apple Digital Mastersの制作プロセスを経たコンテンツを、どのように広げていこうとしているのだろうか。
アップルは、なぜこのタイミングで同サービスのリブランディングを図ったのか。背景にある戦略と、良質な音楽コンテンツ制作にかける意気込みを読み解く。
■2003年から堅実な進化を遂げてきたiTunesの音楽ビジネス
Apple Digital Mastersの楽曲は、先週からPC・モバイル版のiTunes Storeで販売している。刷新されたロゴが、Apple Digital Masters作品であることの目印となっている。
筆者がiTunes Storeをざっと見渡した限りでは、クラシックにジャズ、洋楽ロックから国内アーティストのポップスまで、音楽ジャンルを問わず幅広い対応作品が並んでいる。
アップルのサイトに公開されている、Apple Digital Mastersのホワイトペーパーを読むと、新しいネーミングには「マスター音源がオーディオ体験向上にもたらす恩恵を、iTunesに限らずアップルのあらゆる音楽配信サービスに結びつける」ことが狙いとしてあるようだ。
振り返ればiTunes Storeは2003年春、当時はiTunes Music Storeとしてアップル初の音楽ダウンロード配信サービスをスタートした。日本では米国から少し遅れて2005年8月にサービスインしている。
当時はCDマスターを元に制作された128kbps/AAC形式のコンテンツ、約100万曲が1曲150円からという価格でダウンロード購入できた。やがて2007年5月にDRMフリーの高音質版「iTunes Plus」が始まり、256kbps VBRのAACでエンコーディングされた高音質タイトルが、通常の128kbps/AAC作品よ少し高い価格で販売された。
その後iTunes Storeでは、音楽だけでなく映画やミュージックビデオ、ポッドキャストなど様々な種類のコンテンツが取り扱われるようになり、先にも触れたように2012年2月から、24bitハイレゾマスター音源を元にエンコードされた「Mastered for iTunes」タイトルがストアに並んだ。
■ハイレゾ品質のマスター音源から配信用のAACファイルが作られる
では、Apple Digital Mastersに対応したコンテンツがどのように作られるのか、大まかな流れを紹介しよう。
基本的には、アーティストや音楽レーベルが制作したマスター音源を、アップルまたはアップルが提供するツールを使って、音源制作者がAACにエンコードする。それがiTunes Storeで販売される。
アップルでは音源制作者に対し、サンプリング周波数96kHzを理想とする24bit非圧縮WAV、またはAIFFのハイレゾマスターを使うことを推奨している。
マスター音源をエンコードするプロセスには、2つの段階がある。第1段階として、アップルが独自に開発したマスタリング品質のサンプルレートコンバーター(SRC)を使って、マスター音源を44.1kHzにリサンプリングする。このSRCは通常のダウンサンプリング処理の際に発生するノイズや音の歪みのリスクを回避するため、いったんCAF(Core Audio File)形式の32bit浮動小数点ファイルを、エンコーダ用のデータとして出力する。
その後、第2のステップとして、アップル独自開発のエンコーダーを使い、24bitマスター音源のダイナミックレンジ、解像度を可能な限り保ったAAC形式のファイルを生成する。このエンコーダーには、通常音源ファイルのダウンサウンプリング処理を行う際に用いることの多いディザリング(スムーズな変換処理を行うため意図的にノイズを加える処理)を含まないため、圧縮処理をかけながらも、スタジオマスターに迫る高品位な音源ファイルが作れる。
アップルでは独自開発のSRC、エンコーダーの処理性能について、Mastered for iTunesの誕生から7年間、定期的にブラッシュアップしてきた。現在もその高いクオリティを評価するエンジニアやアーティストが、自らが制作に関わる音源を続々とApple Digital Masters対応の音源としてリリースしている。特にiTunes Storeでダウンロード販売されているクラシック系タイトルは、今ではほぼ9割以上がApple Digital Masters対応を完了しているそうだ。
なおアップルでは、自社の制作環境で使われているものと同じツールを、オンライン上に公開している。制作者はこれをダウンロードし、最終的にApple Digital Mastersタイトルとして公開される256kbps/AACファイルの出来栄えがどのようになるのか、手元の環境でシミュレーションできる環境が整っているというわけだ。
■アップルの音楽サービスが「ハイレゾ対応」になる可能性はあるのか
現在アップルが販売しているハードやソフトには、iOSデバイス(iPhone/iPad/iPod touch)とiTunes(今秋にはApple Music appに切り替わる予定)がある。今後アップルは、Apple Digital Mastersの制作プロセスを経たコンテンツを、どのように広げていこうとしているのだろうか。