【第65回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ
「ナメてた相手が実は…」映画に見る人生訓。さえないおじさんが暴力マシンに戻るワケとは
サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2021年公開の『Mr.ノーバディ』をご紹介します!
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『Mr.ノーバディ』(2021年・アメリカ)
(配信:Netflix )
主人公の一人称視点で物語が展開する異色作『ハード・コア』で注目を浴びたイリヤ・ナイシュラー監督と、『ジョン・ウィック』シリーズなどの脚本を手掛けるデレク・コルスタッドがタッグを組んだハードボイルド・アクション。家と職場を往復するだけの退屈な毎日を送るハッチ(ボブ・オデンカーク)。妻には距離を置かれ、息子からは尊敬されることもない。そんな何者でもない男が、バスで居合わせたチンピラに「ジジイ」呼ばわりされたことで、隠されていた本性が露わになっていく…。
物語のフォーマットは、『ジョン・ウィック』『イコライザー』『96時間』など、引退した元軍人なり殺し屋が、平穏な生活や家族の命が脅かされたことで再びその力を振るうといった、ある意味セオリー通りのもの。だが、その描き方に光るものがある。某ヒーロー映画でお馴染み、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という言葉が示すように、力を持つ者はその責任故に無闇矢鱈に力を振るわない。
物語序盤において強盗を見逃すハッチの行いもまた、その道理故のこと。真の意味で力を持つ者こそ寛容であり、一見穏やかそうな人こそ怒らせたら怖いもの。そんな教訓めいたことを、容赦なしの暴力描写と共に痛感させてくれる極上のB級映画です。
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。
『Mr.ノーバディ』(2021年・アメリカ)
(配信:Netflix )
主人公の一人称視点で物語が展開する異色作『ハード・コア』で注目を浴びたイリヤ・ナイシュラー監督と、『ジョン・ウィック』シリーズなどの脚本を手掛けるデレク・コルスタッドがタッグを組んだハードボイルド・アクション。家と職場を往復するだけの退屈な毎日を送るハッチ(ボブ・オデンカーク)。妻には距離を置かれ、息子からは尊敬されることもない。そんな何者でもない男が、バスで居合わせたチンピラに「ジジイ」呼ばわりされたことで、隠されていた本性が露わになっていく…。
物語のフォーマットは、『ジョン・ウィック』『イコライザー』『96時間』など、引退した元軍人なり殺し屋が、平穏な生活や家族の命が脅かされたことで再びその力を振るうといった、ある意味セオリー通りのもの。だが、その描き方に光るものがある。某ヒーロー映画でお馴染み、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という言葉が示すように、力を持つ者はその責任故に無闇矢鱈に力を振るわない。
物語序盤において強盗を見逃すハッチの行いもまた、その道理故のこと。真の意味で力を持つ者こそ寛容であり、一見穏やかそうな人こそ怒らせたら怖いもの。そんな教訓めいたことを、容赦なしの暴力描写と共に痛感させてくれる極上のB級映画です。
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
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ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。 |