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【特別企画】ロックCD専門ショップに訊く、CDが今も愛されるワケ

CDはまだまだ面白い!最新オーディオシステムでロックCD貴重盤を聴きまくった

公開日 2023/10/10 06:30 構成:ファイルウェブオーディオ編集部・筑井真奈
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矢富さんのプライベートCD棚の一部をご紹介



ーーここからは矢富さんのおすすめのアルバムをいくつか持ってきていただきました。

矢富 ショップ店員としてはおすすめはと言われると、お店にあるものは全部おすすめになってしまいますので、自宅からある程度ガサっと持ってきました。

まず最初はブラジルのAORの名盤、ジム・ポルトの『リオ(40th アニバーサリー・エディション)』。オリジナルは1984年発売です。日本ではCD化されていたのですが、ブラジル本国では長くCDになっていなくて、今年ようやっとCD化されました。ずっとイタリアで活動されてたみたいで、サンバ、ユーロのエレガントさにアメリカ西海岸のスタイルがあわさった極上のAORです。

JIM PORTO『RIO (40TH ANNIVERSARY EDITION)』(海外盤/NANULACD011)

歳をとるとビート感のあるものを家で聴いていると疲れちゃうので、こういう穏やかな気持ちになれる音楽の良さをあらためて感じます。

景井 それめっちゃ分かるなぁ。ハードロックは聴くのにも体力がいるんですよね! 昔のCDをあらためて聴き直そうとしても、あれ、なんかみんなビート早いぞって(笑)。だからこういう音楽っていま改めて知りたいですねぇ。

矢富 次はデヴィッド・クロスビーの『LIVE AT THE CAPITOL THEATRE』です。これは若手のミュージシャンと一緒にやっているライヴ・アルバムで、DVDも付属していますね。このアルバムが発売されてその後すぐに亡くなってしまったので、思い入れのある作品です。このときで70過ぎていると思いますが、声がいいんですよねぇ。歳をとって声が良くなるってなかなかないですよね。

DAVID CROSBY『LIVE AT THE CAPITOL THEATRE』(海外盤/5053864029)

ーーとても瑞々しい声ですね!

矢富 とりわけ晩年に作られた曲に関しては、本来の声質に合わせて、自分の声を存分に使いこなせるようになってたのではないかと思います。とにかく艶やかで伸び伸びして聴き惚れてしまいます。

ーージャケ写もなんだか家族写真みたい(笑)。バックのコーラスが、それぞれの声の個性もありつつもちゃんと溶け合ってる感じも素晴らしい! そして、こうした楽曲の魅力を引き出すティアックのCDプレーヤーの力もすごいですね。

店頭でかけると皆が反応する、レオン・ラッセルの魅力



矢富 次はレオン・ラッセルの『SIGNATURE SONGS』。今年2023年の最初に再発になったものですが、今年一番聴いているかもしれないアルバムです。ソングライティングだけでなくボーカリスト、ピアニストとしても秀逸で、このアルバムはピアノのみで自身の代表曲を軽快に歌ってます。ちなみにレオン・ラッセルは2016年に亡くなっております。

LEON RUSSELL『SIGNATURE SONGS』(海外盤/5053881317)

ーー弾き語りでこの豊穣さもすごい。

矢富 曲がスッと入ってくる感じがしますね。お店でかけていると必ず皆さん反応しますよ、レオン・ラッセル。

ーーお店のキュレーション力って絶対に大切ですよね。今の時代、サブスクでなんでも聴けるからこそ、逆に何を聴いていいかわからなくなってしまう、という側面もあります。自分の感性に近いお店さん、このお店やスタッフが薦めてくれるものならば信頼できる、といった出会いの重要性はもっと語られて良いと思います。

矢富 お店としては本当にそれを大切にしています。もちろん通販も大切ですが、このご時世にあえてお店を出す、ということは、音楽業界やファンの皆様にもアピールをしていく、旗を振っていくことを大切にしないといけないと思います。それを信頼してお客様もきてくださっていると思っています。

あとCDの並びは超大事です。それにポップのファーストインパクト。そこで大体決まるって言えるくらいです。そこがダメだと売れないですね。それくらいシビアな世界です。熱がこもるとつい長くなるんですが、でも字が細かすぎると年配のお客さんだと読めなかったりするんです。文字の大きさも大事です。

まだまだある世界初CD化。マニアックなハワイアンAOR



矢富 最後に、これは超マニアックですよ〜。日系ハワイアン・シンガー、ケヴィン I.の1980年に発表されたファーストアルバムです。COOL SOUNDという日本のAOR専門レーベルから発売されていて、現在も運営されています。これも世界初CD化ですね。ハワイとAOR、もうこれだけで最高ですね!

KEVIN I.『KEVIN I.』(日本盤/COOL157)

ーー全然知らないアーティストさんですが、牧歌的な雰囲気もありつつ、情緒っぽいというか日本的な印象もありますね。ハワイの青い空!っていうよりオレンジのような水色のようなそんな夕方の空をイメージします。

矢富 ハワイのAORってちょこちょこ人気がありまして、90年代にテンダー・リーフやレムリアといったハワイの珍しいAORレコードが紹介されて人気が出て以降、特に2000年代に入ってハワイのマニアックなAOR作品がいろいろとCD化されてしまうというすごく熱い時代があったんです。このCDはそれを思い出させる久しぶりの発売です。ミュージック・マジックというバンドの面々がバックで参加しているんですが、この人たちむちゃくちゃ演奏上手いんですけど、あんまりテクニック出してないんですよね。こういう作品がいまもCDで出ていて一定の支持がある、というのもCDの面白さかなと思います。

ーーなかなかこういう音楽には自力で辿り着けませんから、やっぱりショップって大切ですよね。自分の世界を広げるという意味でも。

矢富 実際、お店に行ってみるのが一番情報量が多いと思います。ネットはもちろんたくさんの情報があるのですが、どうしても恣意的にもなってしまいます。

新譜作品から矢富さんのオススメCDを4作品ピックアップ!割とAORがお好き…?

景井 さっきから聴いているとね、なんだか選曲に「癒されたい」感を感じるんですよね。わりとBPMもゆったり系というか。でもそれって“オヤジたち”の共通事項じゃないかと思うんです。俺もたまにCDショップに行って、昔聴いていたアーティストのアルバムなんかチェックするんですが、その頃聴いてた音楽ってみんなギターが歪んでて、疲れちゃって聴けないの。だからこういうAORみたいな音楽、すごく沁みるんです。

ーー昨今ロックは、若者の趣味ではなくて“オヤジ”の趣味だと言われていますが…、先ほども「ビートの早い音楽がキツイ」というお話があったように、ゆったりとしたロックで癒されたい!っていう時に、CDというのはちょうど良いメディアかもしれませんね。

矢富 そんな時にはぜひCDショップにもを運んで欲しいですね。オススメのCDをたっぷりご用意してお待ちしています!

ーーロックのCDショップというのはオヤジたちの憩いの場である、と(笑)。

矢富 でも、こうやってちゃんとしたオーディオで聴くと、いつも聴いているのと全然違うなって感じがしました。せっかくいいCDを買ったのならば、やはりいい音で聴いて欲しいですね。リマスターもたくさん出ていて改めて聴き直したりすることもありますが、ある程度ちゃんとしたシステムを揃えて聴いた方が、その違いをより感じられるんじゃないかと思います。

ーーこうやって現物を前にしながらあれこれ語りたくなるのもまたCDの楽しさですね。本日はありがとうございました!

■ディスクユニオン 新宿ロックCDストア
〒160-0022 東京都新宿区新宿3-31-4 山田ビル5F
営業時間 平日 12:00〜20:00/土日祝 11:00〜20:00
TEL:03-3352-2723

(提供:ティアック)

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